保存療法
保存療法の4つの柱
薬物療法
痛みのタイプと狭窄のタイプ(馬尾型・神経根型)に合わせて薬を選びます。消炎鎮痛薬、ガバペンチノイド、SNRI、血流改善薬など、複数の薬を組み合わせて治療します。
ガイドライン2021では、馬尾型にはリマプロスト(オパルモン)がエビデンスAで推奨されています。
詳しくは 薬物療法のページ をご覧ください。
運動療法
専門家の指導のもとで行う運動は、自主トレーニングより効果が高いことがわかっています。ストレッチ・筋トレ・エアロバイクの組み合わせが最も効果的で、軽症〜中等症では2年後に手術と同等の改善を示す研究もあります。
ガイドラインでも重症例以外に推奨されており、リスクが低く経済的負担も少ない治療法です。
具体的な運動メニュー(イラスト付き)、頻度、介護保険の活用法については、運動療法のページ をご覧ください。
ブロック注射
痛みの原因となっている神経の近くに痛み止めの薬を注射する治療です。短期的な痛みの軽減にはエビデンスAがありますが、長期的な効果は限定的です。
「痛みを取って、その間に運動療法を進める」という位置づけで使われます。また、手術する場所を特定する診断目的にも使われます。
注射の種類、効果の実際と限界、安全性については ブロック注射のページ をご覧ください。
装具療法・物理療法
コルセットや電気刺激(TENS)など、体の外から症状を和らげる治療です。エビデンス(科学的根拠)は限られていますが、他の治療と組み合わせて使われることがあります。
ガイドラインの位置づけ
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)では、以下のように評価されています。
| 推奨内容 | 推奨度 | エビデンス |
|---|---|---|
| 装具療法・物理療法の有用性に関してエビデンスは乏しい | 明確な推奨を提示しない | D(非常に弱い) |
4つの推奨の強さに影響する要因(エビデンスの強さ、益と害のバランス、患者の好み、コスト)の**すべてで「いいえ」**の評価でした(合意率85%)。
ただし、これは**「やっても意味がない」という意味ではなく、「効果を十分に証明する研究がまだ少ない」**という意味です。個々の治療法について、以下のような違いがあります。
| 治療法 | ガイドラインの評価 |
|---|---|
| コルセット | 歩行距離の延長に 有用な可能性がある |
| TENS(電気刺激) | 術後の遺残症状に 有用な可能性がある |
| 杖 | 有用性は示されていない |
| 超音波 | 有用性は示されていない |
| 温熱療法 | 単独での有用性は示されていない |
| 牽引 | 研究報告自体がない |
コルセット
コルセットの目的:
- 腰の動きを制限して負担を減らす
- 腹圧を高めて腰を支える
- 姿勢を保つ助けになる
| 種類 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| 軟性コルセット | 布製、柔らかい | 日常生活のサポート |
| 硬性コルセット | プラスチック製、固い | 手術後など、より強い固定が必要な場合 |
ガイドラインの解説: 104名のLSS患者を対象としたランダム化比較試験では、コルセット・ベルトの装着により歩行距離が延長しました。装具療法は歩行能力の改善に効果がある可能性があります。ただし、無治療群との比較が行われていないため、効果の明確な証明にはさらなる研究が必要です。
使い方の注意:
| 注意点 | 理由 |
|---|---|
| ずっと付けっぱなしにしない | 筋肉が弱くなる可能性 |
| 正しい位置に装着 | 効果が出ない、かえって悪化することも |
| 活動時に使用 | 立ち仕事、歩行時など |
| 就寝時は外す | 医師の指示がなければ |
物理療法
物理療法は、体の外から物理的な刺激を与えて症状を改善する治療です。
| 治療法 | 方法 | ガイドラインの評価 |
|---|---|---|
| 温熱療法 | ホットパック、赤外線など | 単独での有用性は確認されていない |
| TENS(経皮的電気刺激) | 皮膚の上から電気刺激 | 術後の残存症状に有用な可能性あり |
| 超音波療法 | 超音波による深部加温 | 疼痛やQOLへの有用性は確認されていない |
| 牽引療法 | 腰を引っ張る | 脊柱管狭窄症に関する研究報告がない |
TENSについて: 脊柱管狭窄症の手術後に残る下肢痛やしびれに対して、TENSが有効であったとする研究(44名)が報告されています。歩行満足度もTENS群で有意に良好でした。ただし、これは手術後の遺残症状に対する効果であり、手術前の狭窄症に直接当てはまるかどうかは慎重に考える必要があります。
物理療法の位置づけ: 物理療法は単独では効果が十分に証明されていませんが、運動療法の補助として用いられることがあります。医師や理学療法士と相談して、あなたに合った組み合わせを見つけましょう。