固定術の長期リスク
3分でわかるまとめ
固定術は、不安定になった背骨をしっかり固定してくれる有効な手術ですが、「いちど固定すると元には戻せない決断」でもあります。適切な状態で受ければ役に立つ手術ですが、手術のあとに一定の割合の方で痛みが残ることもあるため、この「後戻りできない」という点を知っておくと、より納得して決められます。
固定術のあと、数年たってから「固定した場所の隣の骨」が新しく痛くなったり、神経が押されたりすることがあります。これを「隣接椎間障害(りんせつついかんしょうがい)」と呼びます。理由はシンプルで、固定した部分が動かなくなるぶん、その上や下の骨が代わりに余計に動き、長い年月のあいだに負担がたまっていくからです。3段の引き出しの真ん中だけを釘で固定すると、上と下の引き出しが早く傷んでしまう、というイメージです。
ただし、隣の骨に変化が見えても、症状が出ない方も多くいらっしゃいます。症状が出た場合は、腰や背中の痛み、足のしびれ、歩ける距離が短くなるなど、手術前と似たものになります。とくに固定する骨の数が増えるほど、残りの骨にかかる負担は大きくなります。変化が見つかっても、症状がなければすぐに治療が必要になるわけではなく、痛みが強いときにお薬やリハビリなどの保存療法や、あらためての手術を考えます。
こうした負担を減らすために、次のような工夫があります。
- 固定する範囲を必要最小限にする
- 隣の骨を余計に削らない
- 腰の自然な反り(前弯)を保って固定する
- キズの小さい低侵襲(ていしんしゅう)手術を活かす
- 手術後の体幹トレーニングと定期的な経過観察
隣接椎間障害は手術の直後ではなく、数年かけて起きることが多いため、レントゲンやMRIでの定期的な確認と、症状が出たら早めに相談することが大切です。また、再手術は最初の手術に比べて効果が出にくくなる傾向があるため、いちばん最初の手術をどうするかの判断が、とても大切になります。
一方で、筋力の低下や排尿の問題、高度の不安定さや変形があるときは、手術が優先されます。しかし、そうしたものがなく痛みが主な悩みであれば、後戻りできない固定術を検討する前に、試してからやめられる「脊髄刺激療法(SCS)」という可逆的な選択肢を相談してみる価値があるかもしれません。
ここから下では、隣接椎間障害がなぜ起きるのか、どう予防するのか、そしてSCSという選択肢について、順を追ってくわしくご説明します。