なぜ痛いのか

慢性疼痛とは

痛みが長く続くと…

通常、痛みは「警告信号」です。 問題が解決すれば、痛みは消えるはずです。

しかし、痛みが 3ヶ月以上 続くと、慢性疼痛 と呼ばれる状態になることがあります。日本の調査では、国民の約15% が慢性の痛みを抱えており、75歳以上では約37% にのぼります。年齢とともに慢性疼痛は増えていきます。

急性の痛みから慢性の痛みへ — 神経の変化

慢性疼痛では、神経システム自体が段階的に変化してしまいます。

大切なポイント: 慢性疼痛は「気のせい」でも「我慢が足りない」のでもありません。神経の仕組みそのものが変化してしまった状態です。だからこそ、早い段階で適切に治療する ことが大切です。本当に痛い時に効かなくなるといった誤った認識、あるいは鎮痛薬の副作用などもあり、「我慢できないほどの痛みでないから」鎮痛薬の服用を拒む方がいます。自然に痛みが改善すればいいのですが、腰部脊柱管狭窄症のように痛みが継続する場合、我慢しているうちに神経の感作が進行し、「我慢できない痛み」になってしまいます。更に、慢性疼痛に陥ってしまうと治療も困難になるのです。

体には痛みを抑える力がある

実は、私たちの体には 痛みを自分で抑えるしくみ が備わっています。

脳幹から脊髄に向かって、セロトニンノルアドレナリン という物質が送られ、痛みの信号にブレーキをかけています。

しかし、慢性疼痛が続くと、この ブレーキ(痛みを抑える力)が弱くなったり、逆に痛みを強めてしまう ことがあります。

薬との関係: サインバルタ(デュロキセチン)、トラムセット、ノイロトロピンなどの薬は、この「体のブレーキ」を強くする作用があります。痛み止めとは違うしくみで痛みを和らげるため、普通の痛み止めが効かない痛みにも効果が期待できます。

痛みの悪循環

痛みの悪循環

慢性の痛みは、悪循環 に陥りやすいことがわかっています。

特に高齢の方は、この悪循環に 老化による変化 が加わります。

加わる要因 影響
筋力低下(サルコペニア) 体を支える力が弱まり痛みが増す
バランス低下 転倒のリスクが高まる
骨粗鬆症 骨折しやすくなる
食欲低下 栄養不足で回復力が落ちる

治療の目標: 治療の目標は、この悪循環を断ち切ることです。

  • 痛みを和らげる(薬物療法、ブロック注射、SCSなど)
  • ADL(日常生活動作)を改善する(リハビリ、運動療法)
  • QOL(生活の質)を取り戻す(できることを増やす)

痛みについてのよくある誤解

痛みについて、間違った思い込みをしていませんか?

よくある誤解 正しい理解
「どこかが傷んでいるから痛い」 組織の損傷がなくても痛みは起こり得ます
「レントゲンやMRIの異常が痛みの原因」 画像検査の異常と痛みが一致しないことはよくあります
「動くのは危険、安静が大切」 適度に動くことは回復に役立ちます
「我慢できる痛みは放っておいていい」 軽い痛みでも放置すると慢性化する可能性があります
「痛み止めは体に悪い」 適切に使えば、痛みの悪循環を防ぐ大切な治療です

痛み止めは「消火器」: 痛み止めは、火事に例えると 消火器 のようなものです。ぼや(小さな火)の段階なら消火器で消せますが、大火事になると消火器では対処できません。痛みも同じで、早い段階で対処する ことが大切です。痛みを感じたら、我慢せず 30分以内 に痛み止めを飲むことが効果的とされています。