脊髄刺激療法(SCS)

どんな人に向いているか

SCSの適応(3つのパターン)

上で紹介した3つの場面について、より詳しく見ていきます。

① 手術対象が不明確な場合

以下のような場合に、手術に代わる選択肢 として検討されます:

状況 詳細
保存療法が無効 6ヶ月以上、薬・注射・リハビリを試したが改善しない
手術対象が不明確 画像では狭窄があるが、それが症状の主原因か不明確
多椎間変性 複数の場所に変性があり、どこを手術すべきか判断困難
神経性の痛みが主体 痛み・しびれが主で、構造的な不安定性は少ない
慢性疼痛(6ヶ月以上) NRS 5/10以上の痛みが続いている

② 手術は可能だが、負担やリスクが過大な場合

手術で治せる病態があっても、手術の規模や患者さんの状態 によってはSCSが有力な選択肢になります:

状況 詳細
多椎間固定が必要 2椎間以上の固定が必要で、手術の負担が大きい
手術リスクが高い 高齢・合併症が多い・全身麻酔のリスクが高い
隣接椎間障害の懸念 長い固定は将来の隣接椎間障害リスクが高まる
可逆性を重視 大きな固定術は元に戻せないが、SCSは可逆的

手術前にSCSを検討するという考え方について:

従来、SCSは主に「手術後の痛み」に対する治療として用いられてきました。しかし近年、多椎間の固定が必要な場合や手術リスクが高い場合に、手術前にSCSを検討する という考え方が広まりつつあります。これは監修医師の臨床経験と最新のエビデンスに基づいた治療アプローチです。

ただし、この治療方針は医療機関や医師によって見解が異なる場合があります。ご自身の状態について、担当医と十分に相談してください。

③ 手術後も痛みが残る場合

状況 詳細
手術後疼痛 手術で構造は改善したが、神経性の痛みが続く
複数回手術歴 再手術の効果が期待しにくい
隣接椎間障害 手術した上下の椎間に新たな問題

手術とSCSの関係 — 「白か黒か」ではありません

「手術で治せるなら手術、治せないならSCS」——そう単純ではありません。

実際には、どんな手術が必要か患者さんの状態 の両方を見て、最適な治療を判断します。

病態に応じた治療の考え方

病態 推奨される治療 補足
除圧だけで改善が見込める 除圧術(じょあつじゅつ) 多少の不安定性があっても除圧を優先
1椎間の固定が必要 固定術 隣接椎間障害のリスクを説明した上で実施
2椎間の固定が必要 SCSを並行して提案 高齢や合併症がある場合は、SCS > 固定術
3椎間以上の固定が必要 SCSを優先 高度脊柱変形以外は、合併症リスクと可逆性を考慮

大切なポイント:

  • SCSは「最後の手段」ではありません
  • 固定する椎間数が増えるほど、SCSを早期に検討すべき選択肢 です
  • 除圧で治る患者さんには除圧を、1椎間なら固定を —— SCSは多椎間固定の前の「第三の選択肢」です

手術リスクが高い方

手術対象が明確でも、以下のような場合はSCSが有力な選択肢になります:

  • 高齢で全身麻酔・大きな手術のリスクが高い
  • 合併症が多い(糖尿病、心疾患、肺疾患など)
  • 抗凝固薬を中止できない
  • 複数回の手術歴があり、再手術のリスクが高い

このような場合、手術よりも リスクが低く、可逆的な SCSを先に試すことで、安全に痛みの改善を図ることができます。

SCSが適さない場合

以下の場合は、SCSではなく手術が優先されます:

  • 除圧だけで改善が見込める(単一レベルの明確な圧迫 → まず除圧術)
  • 構造的な不安定性が進行している(すべりが悪化、固定が不可避)
  • 高度な脊柱変形がある(矯正手術が必要)

また、以下の場合はSCS自体が適さないことがあります:

  • 活動性の感染症がある
  • 出血傾向がある(血液サラサラの薬など)
  • 精神的な問題が主な原因の痛み
  • ペースメーカーなど、他の埋め込み機器がある場合(要相談)

判断のポイント

医師は以下のような視点で、治療を判断します:

① この痛みの原因は、手術で治せるか? ② 治せるとして、どの程度の手術が必要か? ③ 患者さんはその手術に耐えられるか?

この3つの答えによって、最適な治療が変わります:

手術で治せる? 必要な手術の規模 患者さんの状態 → 推奨
除圧のみ 除圧術
1椎間固定 手術に耐えられる 固定術
2椎間固定 良好 固定術(SCSも並行提案)
2椎間固定 高齢・合併症あり SCSを優先
3椎間以上 SCSを優先
SCSを検討

タイミングが大切:「早すぎず、遅すぎず」

SCSはタイミングも重要です:

タイミング 状況 推奨
早すぎる 保存療法を3〜6ヶ月未満 まだ保存療法を続ける
ちょうど良い 6ヶ月〜2年程度の慢性痛 SCS検討の最適期
遅い 数年以上の難治性疼痛 効果が出にくい可能性

早期の検討が、より良い結果につながることがあります。複数年が経過していても良好な結果が得られた症例もありますので、諦めずにご相談ください。