なぜ腰が痛いのか

腰痛の「犯人候補」は一人ではない

腰には、痛みを出す可能性がある場所(「痛みの発信源」)がいくつもあります。

1. 椎間板(ついかんばん)— 背骨のクッション

慢性腰痛の26〜42%に関与

椎間板は、背骨の骨と骨の間にあるクッションです。加齢とともに外側の壁(線維輪)に小さなひび割れができ、そこに神経や血管が入り込むことがあります。すると、椎間板そのものが痛みの原因になります。

典型的な痛み: 腰の中心部の深い鈍痛。長時間座っていると悪化し、立ち上がると楽になることが多い。

重要な事実: 20歳の37%、80歳の96%は、MRIで椎間板の変性が見つかります — 痛みがなくても。(Brinjikji 2015年)


2. 椎間関節(ついかんかんせつ)— 背骨の小さな関節

慢性腰痛の15〜45%に関与

椎間関節は、背骨の後ろ側にある小さな関節で、背骨の動きを制御しています。膝関節と同じように、軟骨がすり減って関節炎になることがあります。

典型的な痛み: 腰の片側または両側の痛み。お尻や太ももの上部に広がることもある。体を反らしたり、ひねったりすると悪化。

注意点: 画像検査で関節の変形が見つかっても、それが痛みの原因とは限りません。30歳の約10%でも画像上の変化があり、痛みのある人とない人で変化の頻度はほぼ同じです(Borenstein 2004年)。


3. 仙腸関節(せんちょうかんせつ)— 骨盤と背骨のつなぎ目

慢性腰痛の10〜30%に関与

仙腸関節は、背骨の一番下(仙骨)と骨盤(腸骨)をつなぐ大きな関節です。上半身の体重を両足に伝える重要な役割をしています。出産、脚の長さの違い、過去の腰の手術、炎症性疾患などが原因で痛むことがあります。

典型的な痛み: お尻の片側を指で指せるような痛み。鼠径部(足の付け根)に広がることもある。


4. 筋肉と筋膜 — 腰を支える筋肉

痛みクリニック受診者の30〜85%に関与

筋肉の損傷、使いすぎ、長時間の不良姿勢により、「トリガーポイント」(筋肉の硬い結び目のような部分)ができることがあります。これが局所的な痛みだけでなく、離れた場所にも痛みを引き起こします。

典型的な痛み: 押すと痛い「コリ」のような部分があり、そこから痛みが広がる感覚。ストレスや疲労で悪化。


5. 中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)— 「音量が上がった」状態

中枢性感作は、比較的新しい概念です。

痛みが長く続くと、脊髄や脳の神経系が「敏感モード」になることがあります。ラジオの音量つまみが知らないうちに上がってしまったような状態です。

すると:

  • 通常は痛くない刺激(軽く触れるだけ)でも痛みを感じる
  • 少しの痛みが、強い痛みとして伝わる
  • 組織が治った後も、痛みが続く

これは「気のせい」ではありません。 神経系に起きている実際の変化です。国際疼痛学会(IASP)は、この痛みに「ノシプラスティック痛」(nociplastic pain)という新しい分類名をつけました。「ノシ」=痛み、「プラスティック」=変化する、つまり「神経が変化して生じる痛み」という意味です。

睡眠不足、ストレス、不安、抑うつは、この感作を悪化させることが研究で示されています(Nijs 2018年)。


6. 脊柱管狭窄症 — 腰の痛みも出すことがある

脊柱管狭窄症(このサイトのもう一つの専門テーマ)は、足のしびれや歩行時の痛みで知られていますが、腰そのものの痛みを引き起こすこともあります。

椎間関節の肥大、靭帯の肥厚、椎間板の変性など、狭窄を引き起こす変化そのものが、腰痛の原因になるのです。

脊柱管狭窄症について詳しくは → 脊柱管狭窄症とは