なぜ腰が痛いのか

なぜ「犯人」を特定できないのか

ここが慢性腰痛の最も大切なポイントです。

MRIの「異常」= 痛みの原因?

いいえ、必ずしもそうではありません。

2015年にBrinjikjiらが行った画期的な研究では、痛みのない健康な人のMRIを年代ごとに調べました。

年齢 椎間板変性 椎間板膨隆 椎間板突出
20代 37% 30% 29%
30代 52% 40% 31%
40代 68% 50% 33%
50代 80% 60% 36%
60代 88% 69% 38%
70代 93% 77% 40%
80代 96% 84% 43%

これらは痛みがない人の数字です。

つまり、80歳でMRIを撮れば、ほぼ全員に「椎間板変性」が見つかりますが、それは白髪と同じように、正常な老化現象です。

Brinjikji博士自身がこう結論づけています:

「多くの画像上の退行性所見は、正常な老化の一部であり、痛みとは関連がない可能性が高い」

検査の限界

検査法 問題点
椎間板造影検査 痛みのない人でも「痛い」と反応する場合がある(偽陽性率が高い)
椎間関節ブロック 1回のブロックでは偽陽性率27〜63%。「純粋な」椎間関節痛はわずか15%
仙腸関節の検査 1つの検査では信頼性が低い。3つ以上の検査を組み合わせる必要がある
MRI 「異常所見」のほとんどは正常な老化。痛みのある人とない人で所見の頻度に大きな差がない

多くの「犯人」が同時にいる

実際には、一人の患者さんの中で複数の痛みの発信源が同時に存在していることが多いのです。

  • 椎間板の問題 + 椎間関節の関節炎 + 筋肉の緊張
  • 仙腸関節の痛み + 中枢性感作
  • 構造的な変化 + 心理的な要因(不安、抑うつ)

これは医師の能力不足ではなく、現在の医学の限界です。そして、原因が特定できないことは、あなたの痛みが「気のせい」であることを意味しません。痛みは本物です。

「慢性腰痛患者の中で、脊椎固定術が確実に有効な患者群を特定することはできなかった」 — Willems 2013年(固定術の予後予測テストに関する包括的レビュー)