「なぜ狭くなるの?」— 脊柱管狭窄症のしくみ
あなたの背骨の中には、神経が通る「トンネル」があります。
前回、腰部脊柱管狭窄症は日本に約580万人の患者さんがいる、珍しくない病気だとお話ししました。今回は、「なぜ脊柱管が狭くなるのか」——そのしくみを、できるだけわかりやすくお伝えします。
背骨のつくりを知ろう
まず、背骨(脊椎)のつくりを簡単に説明させてください。
背骨は、椎骨(ついこつ)という骨が積み木のように重なってできています。腰の部分には5つの椎骨があり、これを腰椎(ようつい)と呼びます。
それぞれの椎骨の間には、椎間板(ついかんばん)というクッションが挟まっています。椎間板は水分を多く含んだ弾力のある組織で、体を動かしたときの衝撃を吸収する役割を果たしています。

そして、椎骨を積み重ねたとき、その中央にできる空間が脊柱管(せきちゅうかん)です。
この脊柱管の中を、脳からつながる大切な神経の束が通っています。腰の部分では「馬尾神経(ばびしんけい)」と呼ばれ、足の感覚や動き、さらには排尿・排便のコントロールにも関わっています。

イメージとしては——
積み木(椎骨)を積み上げてできたトンネル(脊柱管)の中を、大切な電気コード(神経)が通っている
こう考えていただくと、わかりやすいかもしれません。
トンネルが狭くなる3つの原因
年齢を重ねると、このトンネルを構成する部品がすり減ったり、変形したりします。これが、脊柱管狭窄症の主な原因です。
1. 椎間板のふくらみ
椎間板は年齢とともに水分が減り、弾力を失います。弾力を失った椎間板は押しつぶされるように広がり、脊柱管の中にはみ出してきます。

例えるなら: 新しいクッションはふっくらしていますが、長年使い続けると平たくなって横に広がりますよね。それと同じです。
2. 靭帯の肥厚
背骨を支えている靭帯(じんたい)(骨と骨をつなぐ丈夫なバンドのようなもの)が、年齢とともに分厚くなることがあります。特に脊柱管の後ろ側にある黄色靭帯(おうしょくじんたい)が厚くなると、トンネルが後ろから狭められます。

3. 骨の変形(骨棘)
椎骨の縁に骨棘(こつきょく)という小さな骨の突起ができることがあります。これも加齢に伴う変化で、トンネルの壁が内側に出っ張るような形になります。

これら3つの変化が組み合わさって、神経が通るトンネルがじわじわと狭くなっていきます。
ここで大切なこと: この変化は、急に起きるわけではありません。何年もかけて、ゆっくりと進行します。そして、すべての人に症状が出るわけではありません。 MRI(磁気共鳴画像)で脊柱管が狭くなっていても、まったく症状がない方もたくさんいます。
「すべり症」との関係
脊柱管狭窄症と一緒によく聞かれるのが、脊椎すべり症(せきついすべりしょう)です。
これは、椎骨が前方にずれてしまう状態です。椎骨がずれると、それだけで脊柱管が狭くなります。すべり症と狭窄症は、別々の病気というよりも、合併していることが多いのが特徴です。

すべり症がある場合、手術の方法が変わることがあります(この点は第9回で詳しくお話しします)。
MRIで「狭窄あり」と言われても
ここで一つ、とても大切なことをお伝えしておきます。
MRIの画像だけで、手術が必要かどうかは決まりません。
MRIで脊柱管が狭く映っていても、症状が軽い方はたくさんいます。逆に、画像上はそれほどひどくなくても、強い症状が出る方もいます。
大切なのは、画像の所見と実際の症状を合わせて総合的に判断することです。「MRIで狭窄があるから手術」ということには、通常なりません。
検査について詳しくは、第4回でお話しします。
「自分のせい」ではありません
最後にもう一度、お伝えしたいことがあります。
脊柱管狭窄症は、加齢に伴うごく自然な変化の結果です。姿勢が悪かったから、運動不足だったから、重いものを持ったから——そういった原因で起きるわけではありません。
もちろん、生まれつき脊柱管が少し狭い方(先天性狭窄)もいらっしゃいます。それは体質のようなもので、これも誰のせいでもありません。
長年にわたって、あなたの体を支え続けてきた背骨に起きた変化です。責めるのではなく、理解して、適切に対処すること。それが一番大切です。
まとめ
- 脊柱管は、背骨の中にある神経の通り道(トンネル)
- 加齢とともに椎間板・靭帯・骨が変化し、トンネルが狭くなる
- この変化はゆっくり進行し、全員に症状が出るわけではない
- MRIの画像だけで治療方針は決まらない
- 加齢による自然な変化であり、あなたのせいではない