「手術にはどんな種類がある?」— 除圧術と固定術
手術方法は一つではありません。あなたの状態に最適な方法を、主治医と一緒に選びましょう。
前回は、手術を受けるかどうかの判断基準についてお話ししました。今回は、「じゃあ手術って具体的にどんなことをするの?」という疑問にお答えします。
手術の種類を知ると、「自分に合う方法」が見えてきます。
手術の基本的な考え方
脊柱管狭窄症の手術の目的はシンプルです。
狭くなったトンネル(脊柱管)を広げて、圧迫されている神経を楽にする。
これを実現する方法が、大きく分けて3つあります。
① 除圧術(じょあつじゅつ)
最もスタンダードな手術です。
どんな手術か
神経を圧迫している骨や肥厚した靭帯を削り取って、脊柱管を広げます。
イメージとしては、「狭くなったトンネルの壁を削って広くする」工事です。
手術の概要
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 手術時間 | 1〜2時間 |
| 入院期間 | 約1週間 |
| 傷の大きさ | 3〜5cm |
| 麻酔 | 全身麻酔 |
| 翌日から歩行 | 多くの場合、可能 |
メリット
- 侵襲(体への負担)が比較的少ない
- 回復が早い
- 脊椎の動きが保たれる(背骨は固定しない)
注意点
- すべり症や不安定性がある場合には、これだけでは不十分なことがある
- 削った部分に将来再狭窄が起きる可能性がある(低いが、ゼロではない)
② 除圧固定術(じょあつこていじゅつ)
除圧に加えて、脊椎を金属のネジとロッド(棒)で固定する手術です。
どんな手術か
まず除圧を行い、その後に椎骨にチタン製のネジを入れ、ロッドで連結して固定します。必要に応じて、椎間板の代わりにケージ(人工のスペーサー)を入れることもあります。
イメージとしては、「トンネルを広げた上で、グラグラしないように柱で補強する」工事です。
どんな場合に必要か
- すべり症がある(椎骨がずれている)
- 不安定性がある(背骨がグラグラしている)
- 除圧だけでは安定性が保てない場合
手術の概要
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 手術時間 | 2〜4時間 |
| 入院期間 | 2〜3週間 |
| 傷の大きさ | 5〜10cm |
| 麻酔 | 全身麻酔 |
| コルセット | 約3ヶ月 |
メリット
- 安定性が確保される
- すべり症でもしっかり矯正できる
注意点
- 除圧術より体への負担が大きい
- 手術時間が長い
- 隣接椎間障害のリスク: 固定した上下の椎間板に通常以上の負担がかかり、将来そこが悪くなることがある
- 金属が体内に残る(多くの場合、問題はありません)
③ 内視鏡手術(低侵襲手術)
近年注目されている、より小さな傷で行う手術です。
主な種類
| 術式 | 切開 | 特徴 |
|---|---|---|
| MEL(内視鏡下除圧術) | 約2cm | 筒状の内視鏡を使用 |
| FEL / PEL(全内視鏡脊椎手術) | 約8mm | カメラ付きの細い管1本で手術 |
| UBE(二孔式内視鏡手術) | 約1cm × 2ヶ所 | カメラと器具を別々の穴から挿入 |
メリット
- 傷が非常に小さい → 術後の痛みが少ない
- 回復が早い → 日帰り〜2日入院のケースも
- 筋肉へのダメージが少ない
- 局所麻酔で可能な場合もある(全身麻酔のリスクを避けられる)
注意点
- すべての患者さんに適応されるわけではない
- 狭窄の程度や場所によっては、従来の手術の方が確実
- 高度な技術が必要 → 施行できる施設・医師が限られる
- 固定が必要な場合は内視鏡だけでは対応できないことが多い
どの手術が自分に合っているのか?
手術方法の選択は、以下の要素を総合的に判断します。
| 判断要素 | 具体例 |
|---|---|
| 狭窄の場所と程度 | 1ヶ所だけか、複数ヶ所か |
| すべり症の有無 | ずれがあるかどうか |
| 不安定性の有無 | 動いた時にグラグラするか |
| 全身の健康状態 | 年齢、持病、体力 |
| 患者さんの希望 | 早期退院したい、傷を小さくしたい、など |
よくある質問
Q: 「金属を入れたくない」のですが…
A: お気持ちはよくわかります。実際、除圧だけで済む場合も多いです。すべり症や不安定性がなければ、金属を使わない手術で十分対応できることがほとんどです。逆に、金属を入れた方が安全な場合に無理に避けると、再手術のリスクが上がることもあります。主治医とよく相談してください。
Q: 「内視鏡手術がいい」と思うのですが…
A: 内視鏡手術は素晴らしい技術ですが、すべての狭窄症に適応されるわけではありません。「傷が小さい = 良い手術」とは限りません。大切なのは、あなたの狭窄をしっかり解除できる方法を選ぶことです。
除圧術と固定術の比較
| 除圧術 | 除圧固定術 | |
|---|---|---|
| 手術時間 | 短い(1-2時間) | 長い(2-4時間) |
| 入院 | 約1週間 | 2-3週間 |
| 傷 | 小さい | やや大きい |
| 脊椎の動き | 保たれる | 固定部分は動かない |
| 回復 | 早い | やや遅い |
| 隣接椎間障害 | リスク低い | リスクあり |
| すべり症対応 | 難しい | 可能 |
どちらが「良い手術」ということではありません。 あなたの状態に合った方法が、あなたにとっての最善の手術です。
まとめ
- 除圧術: 神経の圧迫を解除する基本的な手術。回復が早い
- 除圧固定術: すべり症や不安定性がある場合に必要。より確実な安定性
- 内視鏡手術: 傷が小さく回復が早いが、適応には限りがある
- どの術式を選ぶかは、狭窄の状態と患者さんの全身状態で決まる
- 「傷が小さい = 良い手術」ではなく、確実に神経を解放できる方法が最善