「手術の日、何が起きるか」— 手術当日の流れ
手術中は眠っているので痛みは感じません。翌日には歩けることが多いです。
前回は、手術前の準備についてお話ししました。今回は、多くの方が一番気になる「手術当日、実際に何が起きるのか」を、時間の流れに沿ってお伝えします。
知らないから怖い——逆に言えば、知ってしまえば怖さは半減します。
手術当日は、たくさんのスタッフがあなたを支えます。
手術前日:入院
午前中〜午後:入院手続き
- 病棟に案内され、ベッドが決まります
- 看護師が持ち物やお薬の確認をします
- お薬手帳は必ず持参してください(血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合、事前に中止が必要なことがあります)
午後:最終検査と説明
- 血液検査、心電図、胸部レントゲンなどの最終チェック
- 麻酔科医の診察: 全身麻酔について説明を受けます。アレルギーや過去の麻酔経験について聞かれます
- 主治医からの最終説明: 手術の内容、リスク、同意書のサイン
- 質問があれば、この段階で聞いてください
夜:絶食の開始
- 夜9時以降、食事は禁止です(病院によって時間は異なります)
- 水分は、多くの場合、手術の2〜3時間前まで少量のお水はOK(確認してください)
- 絶食の理由:麻酔中に胃の内容物が逆流して肺に入るのを防ぐため
緊張であまり眠れないかもしれません。それは普通のことです。どうしても眠れない場合は、看護師に相談すると睡眠薬を出してもらえることがあります。
手術当日:朝
起床〜準備
- 手術着に着替えます(前開きの術衣)
- アクセサリー、入れ歯、コンタクトレンズ、ヘアピンはすべて外します
- 弾性ストッキング(血栓予防)を履くことが多いです
- 点滴が始まります
手術室への移動
- 手術の時間が来ると、看護師と一緒に手術室へ向かいます
- 歩いて行く場合と、ベッドで運ばれる場合があります
- 家族は手術室の前までお見送りできることが多いです
手術室の中で
手術室に入ると
手術室は広くて明るい部屋です。たくさんの機械がありますが、驚かなくて大丈夫です。
- 手術台に横になります
- 心電図モニター、血圧計、酸素モニターが装着されます
- 複数のスタッフが名前や手術部位を確認します(安全のための確認作業です)
麻酔の開始
- 麻酔科医がまず声をかけてくれます
- 酸素マスクを顔にあてます
- 点滴から麻酔薬が入ります
- 「ゆっくり深呼吸してください」と言われたら…
- 数秒で眠りに入ります
「いつの間にか眠ってしまった」——ほとんどの患者さんがそうおっしゃいます。
眠っている間に(あなたは何も感じません)
手術チームが以下の手順で進めます:
- うつ伏せの姿勢にします
- 手術部位を消毒し、清潔な布で覆います
- 手術用顕微鏡を使って、拡大しながら操作します
- 神経モニタリング装置で、手術中ずっと神経の状態を監視します
- 皮膚を切開し、筋肉をよけて骨まで到達します
- 骨や肥厚した靭帯を少しずつ削り、神経の圧迫を解除します
- 除圧が十分か確認し、止血します
- 固定術の場合は、ここでネジとロッドを設置します
- 傷を縫合し、ガーゼを当てます
手術時間の目安:
- 除圧術: 1〜2時間
- 固定術: 2〜4時間
- 出血量: 通常は少量(輸血が必要になることは稀)
手術直後:リカバリー
目が覚めるとき
- 手術室またはリカバリールーム(回復室)で目が覚めます
- 最初はぼんやりしています。これは正常です
- 看護師が「○○さん、手術終わりましたよ」と声をかけてくれます
- 痛み止めが効いているので、強い痛みは通常ありません
よくある感覚
- 喉がイガイガする(気管チューブの影響 → 1-2日で治まる)
- 少し寒い(手術室は温度が低いため → 温かい毛布をかけてもらえます)
- 吐き気(麻酔の影響 → 制吐剤で対応可能)
- 創部の痛み(痛み止めで管理。我慢せずに伝えてください)
家族への連絡
- 手術が終わると、主治医からご家族に手術結果の説明があります
- 「無事に終わりました。神経の圧迫は解除できました」
- 面会できるタイミングは病院の方針によります
手術当日の夜
- 基本的にベッド上安静です
- 点滴が続きます
- 痛み止め(点滴または座薬)が定期的に投与されます
- 看護師が2〜3時間ごとにバイタルサイン(血圧・脈拍・体温)をチェックします
- 足の感覚と動きの確認もします
- 尿は尿道カテーテル(管)で出るので、トイレの心配はありません
手術日の夜は、痛みと緊張であまり眠れないことが多いです。それは普通のことです。 無理に眠ろうとせず、翌日以降少しずつ休めれば大丈夫です。
翌日:もう歩けるの?
はい、多くの場合、翌日から歩行を開始します。
これに驚かれる患者さんが多いですが、早期離床(早めに体を動かすこと)が現代の脊椎手術では標準です。
- 看護師の見守りのもと、ベッドの端に座る → 立つ → 数歩歩く
- 最初はふらつくかもしれません → 支えてもらいながらで大丈夫
- 尿道カテーテルが抜かれ、自分でトイレに行けるようになります
- 食事は、吐き気がなければ翌日から開始
なぜ早く動かすのか?
- 血栓予防: 長時間寝ていると足に血栓ができるリスクがある
- 肺炎予防: 体を動かすことで呼吸が深くなる
- 筋力維持: 寝ているだけで筋肉は1日1-3%落ちる
- 回復促進: 早く動いた方が、結果的に回復が早い
術後2日目〜退院まで
| 時期 | できること |
|---|---|
| 術後2日目 | 病棟内を歩く。シャワー(傷を防水テープで保護) |
| 術後3-4日目 | 階段練習。リハビリ開始。食事は通常通り |
| 術後5-7日目(除圧術) | 退院の目安。自宅での生活指導 |
| 術後2-3週間(固定術) | 退院の目安。コルセット装着の指導 |
退院前に:
- 自宅での注意事項の説明
- 次回外来の予約
- 痛み止めの処方
- リハビリの計画
ご家族の方へ
手術日は、ご家族にとっても不安な一日です。
- 手術中は待合室でお待ちいただきます
- 手術時間が予定より長くなることもあります(他の手術の影響や、状況による慎重な対応)→ 必ずしも問題が起きたわけではありません
- 手術後の面会時: 顔色が悪く見えたり、ぼんやりしていても心配しないでください。麻酔から覚めたばかりの正常な状態です
- 「頑張ったね」の一言が、何よりの力になります
まとめ
- 前日: 入院、最終検査、絶食開始
- 当日朝: 手術着に着替え、点滴、手術室へ
- 手術中: 全身麻酔で眠っている間に進む。神経モニタリングで安全を確保
- 手術直後: リカバリールームで目覚め。痛み止めが効いている
- 翌日: 多くの場合、歩行開始!(早期離床が回復の鍵)
- 退院: 除圧術は約1週間、固定術は2-3週間が目安