「術後に注意すること」— 日常生活のコツ

退院後の毎日を、少しでも楽に過ごすために。


前回は、リハビリについてお話ししました。今回は、退院後の日常生活ですぐに使えるコツです。こうすれば楽になること、これだけは気をつけてほしいことをまとめました。

腰に負担をかけないよう、膝を曲げて荷物を持ち上げる年配の女性 ちょっとした工夫が、毎日をぐっと楽にします。


やってはいけないこと(術後3ヶ月間)

回復期間中は、次の動作を避けてください。

避ける動作 理由
重い物を持つ(10kg以上) 手術した部分に過剰な負荷がかかる
腰を大きくひねる 回復中の組織にストレスがかかる
長時間同じ姿勢で座る 腰への負担が蓄積する
高い所のものを取る 腰を反る姿勢は脊柱管を狭くする
深くかがむ 腰への負担が大きい
飛び降りる・強い衝撃 骨や組織の回復を妨げる

3ヶ月は目安です。固定術の場合はもう少し長く注意が必要なことがあります。


座り方の工夫

退院後にいちばん長く過ごすのは、椅子に座っている時間です。座り方を変えるだけで、腰への負担はかなり変わります。

良い座り方

  • 椅子の奥まで深く座る
  • 背もたれに背中全体をつける
  • 足の裏が床にしっかりつく高さ
  • 膝は90度くらいに曲げる
  • 必要に応じて腰の後ろにクッションを入れる

避けたい座り方

  • ソファに深く沈み込む(腰が丸まる)
  • 足を組む(骨盤が歪む)
  • 前のめりにスマホを見る(腰が曲がる)
  • 長時間動かない(血流が悪くなる)

30分ルール

30分に1回は立ち上がって体を動かす習慣をつけてください。

  • タイマーを使うのも良い方法です
  • 立って1〜2分歩く、伸びをする、それだけで十分です
  • テレビのCM中に立つ、くらいの「ついで」で構いません

寝方の工夫

おすすめの寝方

腰に一番負担が少ないのは、横向きで膝を軽く曲げた寝方です。

  • 膝の間に薄いクッションや枕を挟むと、さらに楽になる
  • 抱き枕を使うのも良い

仰向けの場合は、膝の下にクッションを入れると腰の反りが減り、楽になります。

うつ伏せは?

術後しばらくは避けたほうが無難です。腰が反りやすく、手術した部分に負担がかかります。

ベッドからの起き上がり方

  1. まず横向きになる
  2. 両膝を曲げてベッドの端からおろす
  3. 腕の力で体を起こす(腹筋を使わない)
  4. 腰をひねらないように注意

布団よりベッドのほうが楽です。できれば、回復期間中はベッドで寝てください。


身支度の工夫

靴下の履き方

腰を深く曲げずに靴下を履く方法です。

方法 やり方
椅子に座って 足首を反対の膝の上にのせて履く
ソックスエイド 靴下を器具にかぶせ、足を入れて引っ張る(100均や福祉用品店で購入可)
長い靴べら 靴を履くときに腰を曲げずに済む

着替え

  • 前開きの服が楽(かぶりの服は腕を上に伸ばす動作が必要)
  • ズボンは椅子に座って履く
  • ベルトよりゴムウエストのパンツが楽

入浴

  • 浴室には手すりがあると安心
  • 浴槽のまたぎが不安なら、シャワーチェアを使う
  • 湯船に入るときは、まず座ってから足を入れる
  • 滑り止めマットを敷く
  • 熱すぎるお湯は避ける(血圧の急変動に注意)

家事の工夫

料理

  • 高めの調理台が理想(低い台は前かがみになる)
  • 長時間の立ち仕事は椅子を置いて座りながら
  • 重い鍋は使わない。小さい鍋で分けて作る

掃除

  • 掃除機は柄の長いものを使い、前かがみにならない
  • ロボット掃除機を使うのも一案
  • 床の拭き掃除は、膝をつくかモップを使う

洗濯

  • 洗濯物はテーブルの高さで畳む(床に座って畳まない)
  • 物干し竿が高い場合は、低い位置に干す工夫をする
  • 乾燥機付き洗濯機があれば活用する

買い物

  • 重い荷物は宅配やネットスーパーを活用
  • キャリーカート(コロコロ付きの買い物カート)が便利
  • 一度にたくさん買わず、少量ずつ

車の運転

いつから運転できるか

  • 一般的に術後2〜4週間で主治医から許可が出ることが多い
  • 判断基準:痛み止めの使用状況、首や体をひねる動作ができるか

運転時の注意

  • 1時間に1回は休憩(パーキングエリアで降りて歩く)
  • シートは少し立てて、腰の後ろにクッションを入れる
  • 急ブレーキが踏めるか確認してから運転を再開する
  • 痛み止め(特にオピオイド系)を服用中は運転禁止

食事と栄養

回復には、バランスの良い食事が役立ちます。

積極的に摂りたいもの

栄養素 食品 効果
タンパク質 肉、魚、卵、大豆 筋肉と組織の回復
カルシウム 牛乳、チーズ、小魚 骨の治癒(特に固定術後)
ビタミンD 鮭、キノコ、日光浴 カルシウムの吸収を助ける
ビタミンC 果物、野菜 傷の治り、コラーゲン合成
鉄分 レバー、ほうれん草 手術後の貧血回復

注意すること

  • 便秘対策:痛み止めと活動量の低下で便秘になりやすい
    • 水分を十分に(1日1.5リットル以上)
    • 食物繊維(野菜、果物、全粒穀物)
    • 必要に応じて緩下剤を主治医に相談
  • 体重管理:体重が増えると腰への負担が増える
    • 入院中に食欲が落ちた反動で食べすぎないように

家族の方へ:見守りのコツ

適度な距離感

「何でもやってあげる」は、回復を遅らせることがあります。

× やりすぎ ○ ちょうど良い
全部代わりにやる 見守りながら、必要なときだけ手を貸す
「安静にして!」と動かさない 「一緒に散歩しよう」と誘う
「もう治ったんじゃないの?」 「少しずつ良くなってるね」

特に助けてほしいこと

  • 退院直後の食事の準備
  • 通院の送迎
  • 重い荷物の持ち運び
  • 精神的なサポート(話を聞く、一緒に散歩する)

回復期の患者さんには、ご家族の一言が思っている以上に響きます。「頑張ってるね」「焦らなくていいよ」と声をかけてあげてください。


まとめ

  • 30分に1回は立ち上がる。長時間同じ姿勢を避ける
  • 寝るときは横向きで膝を曲げる
  • 靴下はソックスエイド、椅子に座って履く
  • 家事は前かがみにならないように工夫する
  • 食事はタンパク質とカルシウムを意識し、便秘にも気をつける
  • ご家族は、やりすぎずに見守る

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