「再発と予防」— 手術後も気をつけること

手術後も「メンテナンス」を続けることで、良い状態を長く保てます。


前回は、術後の日常生活の工夫をお伝えしました。今回は、多くの患者さんが気にされる「再発」について正直にお話しし、予防のためにできることをまとめます。

公園で朝のやさしい体操をする元気な年配の女性 続けられる習慣が、良い状態を長く守ってくれます。


手術後の再発率

手術後3年以内に再手術が必要になる確率は、約11%です。[1]

術式 3年以内の再手術率
除圧術・固定術 どちらも約11%(術式による差はなし)

これは「再手術が必要になった割合」です。症状が出ても再手術までは必要ないケースも含めると、もう少し多くなります。

逆に言えば、約9割の方は再手術なく経過しています。


再発はなぜ起きるのか

再発の原因は大きく3つに分かれます。

① 同じ場所の再狭窄

手術で広げた場所が、時間の経過とともに再び狭くなることがあります。骨や靭帯が再び厚くなったり、手術後に瘢痕組織(傷跡の組織)ができたりするためです。頻度は比較的少ないものの、ゼロではありません。

② 隣接椎間障害(固定術後に多い)

固定した背骨の上下の部分に、通常以上の負担がかかることで起きる問題です。

  • 固定した部分が動かないぶん、上下が動きすぎる
  • 上下の椎間板が早く傷み、新たな狭窄が起きることがある
  • 年間約2〜3%の割合で発生し、10年で20〜30%に何らかの変化が出る
  • ただし、画像上の変化があっても、全員に症状が出るわけではない

③ 別の場所の新たな狭窄

脊柱管狭窄症のもとにあるのは、加齢による変化です。手術した場所は解決しても、別の場所で同じような変化が進むことがあります。これは手術のせいではなく自然な経過で、後で述べる予防策で進行を遅らせることができます。


再発のサイン

以下の症状が出たら、主治医に相談してください。

  • 歩ける距離が再び短くなってきた
  • 新たなしびれや痛みが出てきた
  • 以前と違う場所に症状が出てきた
  • 筋力が再び落ちてきたと感じる
  • 排尿障害(これは緊急)

再発を早く見つけるために、連続歩行距離を定期的に記録しておくことをおすすめします(第3回で紹介した方法と同じです)。


予防のためにできること

再発のリスクを下げるために、ご自身でできることはたくさんあります。

1. 体幹筋力の維持

予防策の中心になるのが体幹の筋力です。手術後のリハビリで覚えた運動は、一生続けるつもりで取り組んでください。特にドローイン(腹横筋)とブリッジ(臀筋)は毎日行いましょう。調子が良いからとやめてしまう方がいますが、調子が良いのは続けているからかもしれません。

2. 適正体重の維持

体重が増えると、立つ・歩く・かがむたびに腰にかかる負担も増えます。

  • BMI 25以下を目標に
  • 体重が増えたと感じたら、食事の見直しとウォーキングの増量を
  • 急な減量は不要で、現状維持ができれば十分

3. 正しい姿勢の習慣化

日常生活の姿勢で、腰への負担は大きく変わります。

良い習慣 悪い習慣
物を持つときは膝を曲げてしゃがむ 腰だけ曲げて拾う
長時間座るときは30分ごとに立つ 何時間も座りっぱなし
適度に体を動かす 安静にしすぎる
左右均等に荷物を持つ 片側ばかりで持つ

4. 禁煙の維持

喫煙は椎間板の変性を早め、骨の治癒を遅らせ、脊椎のまわりの血流を悪くします。手術を機に禁煙された方は、ぜひ続けてください。

5. 適度な運動の継続

おすすめの運動 頻度
ウォーキング 毎日30分
水中ウォーキング/水泳 週2〜3回
自転車(エアロバイク) 週2〜3回
ストレッチ 毎日5〜10分
体幹トレーニング 毎日10分

6. 定期的な通院

症状がなくても、年1〜2回のフォローアップを続けてください。レントゲンで手術した部位を確かめ、新たな問題がないかを見ます。症状が出る前に変化が見つかることもありますが、多くは「何もなくて良かった」を確認するための通院です。


「また手術が必要になったら?」

再手術は可能です。ただし、初回より難しくなることが多いです。

  • 前回の手術で瘢痕組織ができているため、手術操作に注意が必要
  • 固定術後の再手術では、固定範囲を延長することが多い
  • 再手術の成績は初回よりやや劣るが、症状の改善は十分に期待できる

再手術を恐れて症状を我慢し続けるのは良くありません。前回と同じように、主治医と相談して適切な時期に判断してください。


手術を受けなかった方へ

この連載を読んで「今は手術の段階ではない」と判断された方にも、予防策は役に立ちます。

  • 保存療法を続けながら、体幹筋力の維持、適正体重、正しい姿勢を心がける
  • 定期的な通院で症状の変化を見てもらう
  • 悪化のサイン(第6回参照)が出たら、速やかに主治医に相談する

手術を受けていなくても、自分の体を自分で管理することが、長い目で見た健康を守ります。


定期検診のすすめ

定期検診を忘れないでください。

  • 手術後1年間:3〜6ヶ月ごと
  • 手術後2年目以降:年1回
  • 新たな症状が出たとき:すぐに受診

調子が良いから行かなくていい、ではなく、調子が良いことを確認しに行く、という気持ちで通ってください。


まとめ

  • 再手術率は3年以内で約11%。大多数は問題なく経過している
  • 再発の原因は、同じ場所の再狭窄、隣接椎間障害、別の場所の新たな狭窄
  • 予防は、体幹筋力、適正体重、正しい姿勢、禁煙、運動、定期通院の6つ
  • 再手術が必要になっても対応はできるので、恐れずに相談を
  • 連続歩行距離の記録を続ける

もっと詳しく知りたい方へ

出典
  1. Kim CH, Chung CK, Park CS, et al. Reoperation rate after surgery for lumbar spinal stenosis without spondylolisthesis: a nationwide cohort study. *Spine J*. 2013;13(10):1230-1237. PMID: 24017959 — 韓国で腰部脊柱管狭窄症(すべり症なし)の初回手術を受けた11,027人を追跡。3年以内の再手術は11.2%で、除圧術と固定術で差はなかった(国の保険データを用いた後ろ向きコホート研究)。