「再発と予防」— 手術後も気をつけること
手術後も「メンテナンス」を続けることで、良い状態を長く保てます。
前回は、術後の日常生活の工夫をお伝えしました。今回は、多くの患者さんが気にされる**「再発」**について正直にお話しし、予防のためにできることをお伝えします。
続けられる習慣が、良い状態を長く守ってくれます。
手術後の再発率
結論からお伝えします。
手術後に何らかの再症状が出る確率は、3年以内で約10〜15%です。
| 術式 | 3年以内の再手術率 |
|---|---|
| 除圧術 | 約11% |
| 固定術 | 約14% |
これは「再手術が必要になった割合」です。症状が出ても再手術までは必要ないケースも含めると、もう少し多くなります。
ただし、裏を返せば、85〜90%の方は再手術なく経過しているということです。
再発はなぜ起きるのか
再発の原因は大きく3つに分かれます。
① 同じ場所の再狭窄
手術で広げた場所が、時間の経過とともに再び狭くなることがあります。
- 骨や靭帯が再び肥厚する
- 手術後の瘢痕組織(傷跡の組織)が形成される
- 頻度:比較的少ないが、ゼロではない
② 隣接椎間障害(固定術後に多い)
固定した背骨の上下の部分に、通常以上の負担がかかることで問題が起きます。
- 固定した部分が動かない → 代わりに上下が動きすぎる
- 上下の椎間板が早く傷む → 新たな狭窄が起きることがある
- 年間約2〜3%の割合で発生 → 10年で20〜30%に何らかの変化
- ただし、全員に症状が出るわけではない(画像上の変化 ≠ 症状)
③ 別の場所の新たな狭窄
脊柱管狭窄症は加齢による変化が根本原因です。手術した場所は解決しても、別の場所で同様の変化が進むことがあります。
- これは手術のせいではなく、自然な経過
- 全体的な予防策(後述)で進行を遅らせることが可能
再発のサイン
以下の症状が出たら、主治医に相談してください。
- 歩行距離が再び短くなってきた
- 新たなしびれや痛みが出てきた
- 以前と違う場所に症状が出てきた
- 筋力低下が再び感じられる
- 排尿障害(これは緊急)
再発を早く見つけるために、連続歩行距離を定期的に記録しておくことをおすすめします(第3回で紹介した方法と同じです)。
予防のためにできること
再発のリスクを下げるために、あなた自身にできることがたくさんあります。
1. 体幹筋力の維持
最も重要な予防策です。
- 手術後のリハビリで覚えた運動を一生続けるつもりで
- 特にドローイン(腹横筋)とブリッジ(臀筋)は毎日
- 「調子が良いから」とやめない → 調子が良いのは続けているからかもしれない
2. 適正体重の維持
体重が1kg増えると、腰にかかる負担は約3〜4倍増えます。
- BMI 25以下を目標に
- 体重が増えたと感じたら、食事の見直しとウォーキングの増量を
- 急な減量は不要。現状維持ができれば十分
3. 正しい姿勢の習慣化
日常生活の姿勢が、腰への負担を大きく左右します。
| 良い習慣 | 悪い習慣 |
|---|---|
| 物を持つときは膝を曲げてしゃがむ | 腰だけ曲げて拾う |
| 長時間座るときは30分ごとに立つ | 何時間も座りっぱなし |
| 適度に体を動かす | 安静にしすぎる |
| 左右均等に荷物を持つ | 片側ばかりで持つ |
4. 禁煙の維持
喫煙は:
- 椎間板の変性を加速する
- 骨の治癒を遅らせる
- 脊椎周囲の血流を悪くする
手術を機に禁煙された方は、ぜひ続けてください。
5. 適度な運動の継続
| おすすめの運動 | 頻度 |
|---|---|
| ウォーキング | 毎日30分 |
| 水中ウォーキング/水泳 | 週2〜3回 |
| 自転車(エアロバイク) | 週2〜3回 |
| ストレッチ | 毎日5〜10分 |
| 体幹トレーニング | 毎日10分 |
6. 定期的な通院
症状がなくても、年1〜2回のフォローアップを続けてください。
- レントゲンで手術部位の確認
- 新たな問題がないかチェック
- 症状が出る前に変化を見つけられることも
- 「何もなくて良かった」の確認が目的
「また手術が必要になったら?」
再手術が必要になった場合:
- 再手術は可能です。ただし、初回より難しくなることが多い
- 前回の手術で瘢痕組織ができているため、手術操作に注意が必要
- 固定術後の再手術では、固定範囲を延長することが多い
- 再手術の成績は初回よりやや劣るが、症状の改善は十分に期待できる
再手術を恐れて症状を我慢し続けるのは良くありません。前回と同じように、主治医と相談して適切な時期に判断することが大切です。
手術を受けなかった方へ
この連載を読んで「今は手術の段階ではない」と判断された方にも、予防策は有効です。
- 保存療法を続けながら、体幹筋力の維持、適正体重、正しい姿勢を心がける
- 定期的な通院で症状の変化をモニタリングする
- 悪化のサイン(第6回参照)が出たら、速やかに主治医に相談する
手術を受けていなくても、「自分の体を自分で管理する」姿勢が、長期的な健康を守ります。
定期検診のすすめ
最後に、改めて強調します。
定期検診を忘れないでください。
- 手術後1年間:3〜6ヶ月ごと
- 手術後2年目以降:年1回
- 新たな症状が出たとき:すぐに受診
「調子が良いから行かなくていい」ではなく、**「調子が良いことを確認しに行く」**という気持ちで。
まとめ
- 再手術率は3年以内で約10〜15%。大多数は問題なく経過
- 再発の原因:同じ場所の再狭窄、隣接椎間障害、別の場所の新規狭窄
- 予防の6本柱: 体幹筋力、適正体重、正しい姿勢、禁煙、運動、定期通院
- 再手術が必要になっても対応は可能 → 恐れずに相談を
- 連続歩行距離の記録を続けよう