「手術しても痛みが残る場合」— 諦めないでください

手術後に痛みが残っても、それは「失敗」ではありません。次の手があります。


ここまでの連載で、脊柱管狭窄症の理解から手術、回復、予防まで一通りお話ししてきました。

今回からは、一部の方が直面する、手術後も痛みが残るという状況についてお話しします。

痛みが残る患者さんに、希望を持って寄り添う医師 痛みが残っても、まだできることがあります。


手術後に痛みやしびれが残ることはある

手術後に何らかの症状が残る方は、珍しくありません。

第14回でお話ししたとおり、手術に満足している方は多いのですが、満足していることと、症状がすっかり消えることは別です。ただし、症状が残ったからといって、手術が失敗したわけではありません。


残存症状の種類

術後に残る症状は、程度によって大きく3つに分かれます。

軽度:日常生活に大きな支障なし

  • 時々のしびれ(特に疲れたときや天候の変化時)
  • 長く歩くと少し足が重くなる(でも術前よりずっとまし)
  • 完全にゼロではないが、あっても気にならない程度

→ 経過観察、必要に応じて薬で抑える

症状が残っても、この程度にとどまる方は少なくありません。完璧ではなくても、手術前よりずっと良い状態です。

中等度:改善はしたが持続的な不快感がある

  • 歩行には支障ないが、持続的な足のしびれ
  • 座っていると腰や足が痛くなる
  • 薬を飲み続けている

→ 治療の見直し(薬の調整、リハビリの再開・強化、追加の治療の検討)

重度:日常生活に支障がある

  • 歩行距離が十分に伸びない
  • 強い痛みが持続している
  • 生活の質が大きく低下している

→ 精密検査と、積極的な治療が必要


「手術が失敗した」わけではない理由

術後に痛みが残る場合、いくつかの原因が考えられます。

1. 長年の神経圧迫による不可逆的変化

神経が長期間圧迫されていた場合、圧迫を取り除いても神経が完全には回復しないことがあります。

  • 神経線維自体が傷ついている
  • 圧迫されていた期間が長いほど、回復は難しい
  • 我慢しすぎる前に手術を検討したほうが良いのは、このためです

2. 狭窄症以外の痛みの原因が重なっている

脊柱管狭窄症だけが痛みの原因ではないことがあります。

  • 椎間関節の痛み(背骨の関節の問題)
  • 筋筋膜性疼痛(筋肉のこりやトリガーポイント)
  • 仙腸関節の問題(骨盤の関節)
  • 末梢神経障害(糖尿病性など)

これらは脊柱管の除圧では改善しないので、それぞれに合った治療が必要です。

3. 中枢性感作

痛みが長く続くと、神経系そのものが痛みに過敏になることがあります。

  • 本来の原因が解消されても、脳と脊髄が「痛み信号」を出し続ける
  • 火が消えた後も鳴り続ける、壊れた火災報知器のような状態です
  • 精神的な問題ではなく、神経の働きの変化です

4. 除圧が不十分だった場合

まれに、神経の圧迫が十分に解除されていないことがあります。

  • 画像検査で確認できる
  • 必要に応じて追加の手術を検討します

まず主治医に相談すること

術後に痛みが残っている場合は、次の順で対応します。

ステップ1:主治医への相談

「手術したのにまだ痛い」と伝えてください。遠慮は不要です。

ステップ2:画像検査

MRIやCTで次のことを確認します。

  • 除圧は十分か?
  • 新たな圧迫はないか?
  • 固定術の場合、インプラントに問題はないか?

ステップ3:治療の見直し

対応 具体的な内容
薬の調整 神経障害性疼痛の薬(プレガバリン(リリカ)、ミロガバリン(タリージェ)、デュロキセチン(サインバルタ)など)
リハビリの強化 筋力トレーニング、ストレッチの見直し
追加のブロック注射 残存する圧迫部位の特定と治療
心理的サポート 慢性痛は精神面にも影響する

ステップ4:専門家への紹介

整形外科での対応で十分に良くならない場合は、痛みの専門家(ペインクリニック)への紹介をお願いできます。


「もう何もできない」ということはない

手術後の痛みにも、まだ選択肢はあります。

  • 薬の種類はたくさんあります。合うものが見つかるまで、何度か試すこともあります
  • リハビリのやり方を変えると、改善することがあります
  • ブロック注射や神経調節療法など、追加の治療法があります
  • 痛みの専門外来もあります

一人で悩まず、主治医に伝えてください。 必要に応じて、別の専門家の力も借りましょう。


痛みと上手に付き合うという選択

「完全にゼロにならないなら意味がない」と感じるかもしれません。でも慢性的な痛みの治療では、痛みをゼロにすることだけがゴールではありません。

  • 痛みがあっても、やりたいことができる
  • 痛みが減り、薬の量を減らせる
  • 痛みへの不安が減り、心に余裕ができる

どれも立派な改善です。痛みとうまく付き合うのは、諦めとは違います。生活の質を自分から上げていくやり方です。


まとめ

  • 手術後に何らかの症状が残る方は珍しくない
  • 症状が残っても、手術の失敗ではない。原因は複数ある
  • まずは主治医に相談 → 画像検査 → 治療の見直し
  • もう何もできない、ということはない。選択肢は残っている
  • 痛みの専門家(ペインクリニック)という選択肢がある
  • 痛みと上手に付き合うことも、立派な改善

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