病気を理解するために、まず背骨の基本を知りましょう。
このページでわかること
- 背骨はどんな構造になっているか
- 「脊柱管」とは何か
- 神経はどこを通っているか
- なぜ年齢とともに変化するか
脊椎の基本構造と神経の走行について、わかりやすく解説します。
病気を理解するために、まず背骨の基本を知りましょう。
このページでわかること
- 背骨はどんな構造になっているか
- 「脊柱管」とは何か
- 神経はどこを通っているか
- なぜ年齢とともに変化するか
背骨は、椎骨(ついこつ)という骨が、積み木のように重なってできています。

人間の背骨は、全部で24個の椎骨と、その下の仙骨(せんこつ)からできています。腰の痛みで問題になるのは、主に腰椎(ようつい)の部分です。

それぞれの椎骨には、真ん中に穴が開いています。椎骨が積み重なると、この穴がつながって1本のトンネルのようになります。このトンネルを 「脊柱管(せきちゅうかん)」 と呼びます。

たとえるなら、脊柱管は直径2〜3センチのホースのようなもので、その中を神経が通っています。
脊柱管の中を通る神経は、次の3つに分けて理解しておくとわかりやすくなります。
脊髄は、脳からの命令を体に伝え、体からの感覚を脳に届ける、通信ケーブルのような太い神経の束です。中枢神経系に属し、通常は第1〜2腰椎のレベルで終わります。
脊髄損傷について: 脊髄は中枢神経であるため、脳と同じように、損傷すると多くの場合、不可逆的(元に戻らない)機能障害を引き起こします。脳梗塞のあとに残る障害と同じように、元どおりに治す方法はまだ確立していません。
脊髄が終わった下のレベル(第2腰椎より下)では、脊髄がバラバラの神経に分かれます。脊柱管の中のこの複数の神経は「馬の尻尾」のように見えることから、馬尾神経と呼ばれています。
馬尾神経は末梢神経系に属します。そのため脊髄よりは回復の可能性がありますが、高度に傷害されると、やはり回復しなくなります。
脊髄や馬尾神経から、各椎間ごとに1対の神経根が、左右に脊柱管から出ます。
神経根も末梢神経系に属します。頚椎の神経根は上肢(腕や手)、胸椎の神経根は肋間神経、腰椎の神経根は下肢(脚や足)に信号を送っています。

末梢神経である馬尾神経や神経根は、脊髄と比べると回復する可能性があります。
しかし、両下肢(両脚)が動かなくなるような麻痺 が起きた場合は、緊急事態 です。
すぐに病院へ!
このような症状が出たら、早期に対応しないと永続的な麻痺 になる可能性があります。
様子を見てはいけません。すぐに救急外来を受診してください。
脊柱管の後ろ側には、中の神経を屋根瓦のように守る椎弓(ついきゅう)という骨があり、その左右に椎間関節という関節があります。この関節は上下の椎骨をつなぎ、背骨の動きを支えています。
背骨が曲がるときは、前方の椎間板を支点にして、次のような動きが起こります。

椎間関節は、膝関節と同じような構造です。膝関節が何十年も曲げ伸ばしを繰り返すと変形性膝関節症になるように、椎間関節も何十年もこの動きを繰り返すうちに、加齢変化が起こり、変形が進み、関節が厚くなって(肥厚して)いきます。
この変化が、脊柱管を狭くする原因の1つになります。
椎骨と椎骨は、靭帯という強い組織でつながれています。脊柱管狭窄症で特に関わりが深いのは、次の2つです。
腰部脊柱管狭窄症で、最も重要な靭帯 です。脊柱管の後ろ側を裏打ちしています。

棘突起(背中を触ると出っ張っている骨)と棘突起の間をつなぐ靭帯です。 前かがみになると、黄色靭帯と同じように棘突起と棘突起の間が開きますが、棘間靭帯はその開きを制限します。
前かがみになるときは、黄色靭帯が引き伸ばされ、ゴムが伸びて引き戻すように前かがみを制限します。後ろに反るときは、黄色靭帯がたわみ(緩み)、折りたたまれるような状態になります。
何十年も引き伸ばされたり緩んだりを繰り返すうちに、黄色靭帯は厚くなって(肥厚して)いきます。厚くなった靭帯は脊柱管を後ろから圧迫し、これが脊柱管狭窄の大きな原因の1つになります。
輪ゴムを何年も伸ばしたり縮めたりしていると、だんだん厚く硬くなってくるのと似ています。
神経の圧迫が高度になると、体の動きに伴う黄色靭帯の変化が、症状に大きく影響します。体幹を反らすと黄色靭帯がたわんで神経が圧迫され、脚の痛みが強くなります。前かがみになると黄色靭帯が引き伸ばされ、神経の圧迫が和らぎます。前かがみで楽になり、反ると症状が強くなるのは腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状で、この黄色靭帯の動きによって起きています。
椎骨と椎骨の間には、椎間板(ついかんばん)という軟骨のクッションがあります。

椎間板は、中心に髄核(ずいかく)というゼリー状の部分があり、その周りを線維輪(せんいりん)という固い繊維が包んでいます。
たとえるなら、椎間板は「あんパン」のようなものです。
この椎間板があることで、背骨は前後左右に曲がることができ、衝撃を吸収できます。
背骨の加齢変化は、20代から始まっています。ただしゆっくり進むため、症状が出るのは何十年も後になることが多いです。
椎間板の中心にある髄核(ゼリー状の部分)が、少しずつ水分を失っていきます。みずみずしさが失われ、支える力が低下します。
髄核が縮むと、椎間板全体の厚みが減っていきます。
皆さんも、若い頃に比べて身長が減っていることにお気づきだと思います。その大きな要因が、椎間板の加齢変化です。椎間板は全部で23個ありますから、1つあたり1〜2mm縮むだけで、身長は2〜4cm低くなります。
椎間板の高さが減ると、残った線維輪(外側の固い部分)が行き場を失い、椎体(骨)の縁より外へ膨らむようになります。


線維輪が膨らんで椎体の縁を刺激すると、骨も反応して出っ張るようになります。これが「骨棘(こつきょく)」で、神経を圧迫する原因の1つになります。

| 部位 | 動きやすさ | 加齢変化 |
|---|---|---|
| 頚椎(首) | 大きく動く | 変化しやすい |
| 胸椎(背中) | 肋骨につながっているため動きが少ない | 変化しにくい |
| 腰椎(腰) | 体重の負荷がかかって大きく動く | 最も変化しやすい |
大きく動かす部分ほど、加齢変化が起こりやすいという原則があります。そのため、頚椎(首)と腰椎(腰)に問題が起きやすくなります。
年齢とともに、次のような変化が重なって起こります。
| 部位 | 若いとき | 年齢を重ねると |
|---|---|---|
| 椎間板 | 水分が多く、弾力がある | 水分が減り、高さが減少する |
| 骨(椎体) | しっかりしている | 骨棘(こつきょく)という出っ張りができる |
| 椎間関節 | 滑らかに動く | 変形し、肥厚する |
| 靭帯(黄色靭帯) | 薄くてしなやか | 厚くなり、硬くなる |
| 脊柱管 | 広い | 狭くなる ← これが「狭窄症」 |
これらの変化が重なると、脊柱管が狭くなり、中を通る神経が圧迫されます。これが「腰部脊柱管狭窄症」です。 同じような変化が頚椎で起こると、頚髄(頚部の脊髄)が圧迫されて、頚椎症性脊髄症と呼ばれる状態になります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 背骨の構造 | 24個の椎骨が積み重なっている |
| 脊柱管 | 椎骨の中を通るトンネル(ホースのようなもの) |
| 神経 | 脊柱管の中を脊髄・馬尾神経・神経根が通っている(腰の部分では主に馬尾神経) |
| 椎間板 | 椎骨の間のクッション(あんパンのような構造) |
| 加齢による変化 | 脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することがある |
診察の際に、このような質問をしてみましょう:
「先生、私の腰椎のどの部分に問題がありますか?」
「私の椎間板はどのくらい変性していますか?」
「私の狭窄はどのレベル(L4/5など)にありますか?」
「MRI画像で、どの部分が神経を圧迫していますか?」
医師に質問するときは、このページの図や表を見せて「この部分について教えてください」と聞くのもよい方法です。
背骨のしくみを理解したら、次はこちらのページへ進みましょう。
→ 腰部脊柱管狭窄症とは — 狭窄症の症状と原因を詳しく解説します
→ 痛みの原因とメカニズム — なぜ痛みが起きるのか、そのしくみを理解します
→ 検査と診断 — どのような検査で狭窄症を診断するのかを知ります
このページは医学的に正確な情報を提供していますが、個別の診断・治療については医師にご相談ください。