プレガバリン(リリカ)とミロガバリン(タリージェ)、何が違う?
数字の違いは強さの違いではありません。同じ仲間の二つのお薬の共通点と違い、費用、医師がどちらを選び・変える理由を添付文書の事実をもとに解説します。
数字の違いは、強さの違いではありません。二つは同じ家の兄弟のようなお薬で、探すのは優れたほうより、あなたに合うほうです。
プレガバリン(商品名:リリカ)とミロガバリン(商品名:タリージェ)のどこが同じで、どこが違うのかを、添付文書の事実をもとに整理しました。医師がどちらかを選び、ときに変える理由と、診察室で聞いておきたいことも載せています。
動画があります
二つのお薬の関係と、医師がどちらを選ぶかの考え方を、約7分の動画でお話ししています。飲み方や副作用対策は、お薬ごとの動画(ページ末尾)でくわしく解説しています。
1. 兄弟のような二つの薬
同じ家の兄弟 — 目的も、働き方の基本も同じ
リリカとタリージェは、同じ仲間のお薬です。脊柱管狭窄症や坐骨神経痛で神経が圧迫されると、神経は興奮しっぱなしになり、ビリビリ・ジンジンとした痛みやしびれの信号を出し続けます。どちらのお薬も、神経の表面にあるカルシウムの通り道の「部品」(α2δサブユニット)に結合して、この過剰な信号をしずめます。
ですから、リリカからタリージェへ、あるいはその逆へ変わるのは、まったく別のお薬への乗り換えではありません。同じ家の中で部屋を替えるくらいの調整です。
一目でわかる比較表
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プレガバリン(リリカ) |
ミロガバリン(タリージェ) |
| 歩んできた道 |
世界で長く使われてきたお薬。日本では2010年に帯状疱疹後神経痛で承認され、同年に末梢性神経障害性疼痛へ広がった |
日本で開発されたお薬。2019年1月承認・同年4月発売 |
| 規格 |
25mg・75mg・150mg(カプセル/OD錠) |
2.5mg・5mg・10mg・15mg(錠/OD錠) |
| 飲む回数 |
1日2回(朝夕) |
1日2回(朝夕) |
| 始め方と増やし方 |
1日150mgから始め、1週間以上かけて1日300mgへ。最高1日600mg |
1回5mgから始め、1週間以上あけて5mgずつ増やし、通常1回15mg(年齢・症状により1回10〜15mg) |
| 腎臓の働きによる調整 |
あり(クレアチニンクリアランス値を目安に量と間隔を調節) |
あり(同じく、目安に調節) |
| 主な副作用 |
添付文書で頻度が高いとされるのは、眠気(傾眠)とめまい(浮動性めまい)。ほかにむくみ(浮腫)、便秘、体重増加など |
添付文書で頻度が高いとされるのは、眠気(傾眠)とめまい(浮動性めまい)。ほかにむくみ(浮腫)、体重増加など |
| ジェネリック |
あり(「プレガバリン」の名前で流通) |
現時点ではなし(先発品のみ) |
出典:各薬剤の添付文書(KEGG MEDICUS 掲載版・2026年9月閲覧)。数値は臨床試験や添付文書上のもので、個々の患者さんに起こる確率ではありません。
2. 数字と設計の違い
数字がまったく違うのは、強さの違いではありません
袋に「300mg」と「10mg」と書いてあると、「少ない量で済むタリージェのほうが強いのでは」と心配される方が本当に多いのですが、これは誤解です。
お薬はそれぞれ、成分が働くのに必要な量がもともと違うだけです。コーヒーと紅茶で一杯に入れる粉や葉の重さが違っても、「どちらが濃い飲み物か」は決まらないのと同じで、mgの数字を二つのお薬の間で比べることには意味がありません。
どちらのお薬も、「少ない量から始めて、1週間以上あいだをあけながら段階的に増やす」という原則は共通です。あなたの量は、年齢や腎臓の働きに合わせて主治医が決めたものです。
設計の違いと、それでも残る個人差
副作用の種類は共通です。眠気、めまい、ふらつき、むくみは、どちらのお薬でも起こることがあります。
そのうえで、タリージェは神経の「部品」への結合のしかたに工夫があり、めまいや眠気を起こしにくくすることを目指して設計されたお薬です(くわしくはタリージェの動画で)。
ただ、そのように設計されていても、タリージェでめまいが出る方はいます。 逆に、リリカのほうが体に合って楽に続けられる方もいます。二つのお薬の効果や副作用を直接比べて優劣を確かめた十分な証拠はなく、副作用の出方には個人差が大きいのが実際です。
ですから医師にも、どちらが優れたお薬かは答えられません。考えられるのはどちらがあなたに合うかで、それも実際に使ってみないと分からない部分が残ります。
3. 費用と、薬の選び方
お財布の話 — 費用も立派な判断材料
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先発品の薬価(1錠・1カプセル) |
通常量での1日の薬価(先発品) |
| リリカ150mg |
53.2円 |
300mg/日(150mg×2回)で約106円 |
| タリージェ15mg |
154.8円 |
30mg/日(15mg×2回)で約310円 |
薬価は2026年9月時点(KEGG MEDICUS 掲載)。実際の窓口負担はこの1〜3割で、薬価は改定されます。リリカにはジェネリック(プレガバリン)があり、先発品より安く処方できます。タリージェは現時点では先発品のみです。
長く続けるお薬なので、費用のことも遠慮なく主治医や薬剤師に相談してください。 「お金の話をするのは気が引ける」と思わなくて大丈夫です。医師は、そこも含めて一緒に考えます。
「変えましょう」は失敗ではない — 医師はこう選んでいます
主治医から「タリージェに変えてみましょう」「リリカに戻してみましょう」と言われると、「今までのお薬では、だめだったの?」と不安になる方がいます。でも、変更は治療の失敗ではありません。合う一剤を探していく中で、変えることはよくあります。
医師がどちらかを選び、あるいは変えるとき、頭の中にあるのは、おおよそ次の材料です。
- 痛みの様子:しびれ中心か、痛み中心か、どのくらい生活に響いているか
- 副作用の出方:眠気・めまい・むくみで続けにくくなっていないか
- 腎臓の働きと年齢:どちらのお薬も腎臓から出ていくため、量の設計が変わる
- 費用:ジェネリックの有無、長く続けられる金額か
- 生活のリズム:仕事や運転、夜間の安全
私の外来では、ご高齢の方や腎臓の働きに配慮したいときは、就寝前に少量から内服を始めることが多く、副作用がないことを確認したうえで少しずつ増量しています。これは私の考え方で、施設や主治医によって方針は異なります。
そして、変えるときも、急にゼロにして翌日から新しいお薬、という乱暴なことはしません。急にやめると、体がびっくりしたような症状が出ることがあるためです。主治医が、安全な切り替え方を設計します。 指示どおりに進めていただければ大丈夫です。
4. よくある質問と、診察室で聞きたいこと
よくある質問
Q. 友人はリリカ、私はタリージェ。どちらかが間違いということはありますか?
ありません。同じ仲間のお薬で、目的も同じです。どちらから始めるかは、上の5つの材料をもとに主治医が判断しています。
Q. リリカの袋に「プレガバリン」と書いてあります。別のお薬ですか?
同じ成分です。プレガバリンはリリカの成分名で、ジェネリック医薬品ではこの名前がそのままお薬の名前になっています。
Q. タリージェに変えたのに、めまいが出ました。設計が違うのでは?
めまいや眠気を起こしにくくすることを目指した設計ですが、それでも出る方はいます。多くは飲み始めや増量直後の時期に出て、体が慣れるにつれて軽くなります。つらいときは一段前の量に戻す方法もありますので、自己判断でやめず主治医に伝えてください。
Q. 二つを同時に飲むことはありますか?
同じ仲間のお薬なので、通常は同時には使いません。変えるときは一方から他方へ、主治医が切り替え方を設計します。
Q. 変えたら、また少ない量から始めるのですか?
お薬ごとに量の物差しが違うため、多くの場合、新しいお薬の少ない量から段階的に増やします。切り替えの手順は状況によって異なるので、主治医の指示に従ってください。
診察室で聞いておきたい、三つのこと
- 「私の量は、このお薬の中では、どのあたりですか」
- 「もし合わなかったら、もう一方に変える選択肢はありますか」
- 「費用の面で、選べる余地はありますか」
この三つを聞ければ十分です。
次に読む・見る
→ 薬物療法:痛みのタイプ別のお薬の選び方と、お薬ごとの解説動画(リリカの飲み方/タリージェの飲み方)
→ 痛み止めが効きにくくなったら:お薬の先にある選択肢
→ 動画で学ぶ:神経障害性疼痛のお薬シリーズをまとめて