固定術のあと、隣の骨が悪くなる? 固定すると、なぜ隣の高さに負担がかかるのか。どのくらいの方に起きるのか、症状、起きにくくするための「固定は必要な範囲だけ」、起きたときの選択肢と、固定を勧められたときの質問。
「固定すると、隣の骨がまた悪くなるよ」。腰の固定術の話をすると、近所の方や知り合いから、こう言われることがあります。隣の高さに負担がかかるのは、本当です。ただ、全員に症状が出るわけではありません。どのくらいの方に、なぜ起きるのかを知っておくと、手術の話し合いが、ずっとしやすくなります。
このページでわかること
固定すると、なぜ隣の高さが代わりに動くのか(引き出しのたとえ)
どのくらいの方に起きるのか:画像の変化、症状、もう一度の手術
隣の高さが悪くなると、どんな症状が出るのか
起きにくくするために:固定は、必要な範囲だけ
起きてしまったときの選択肢と、固定を勧められたときの質問
隣接椎間障害とは、どのくらい起きるのか 固定すると、隣が代わりに動く・どのくらいの人に起きるのか 隣が悪くなると、どうなるか 通り道が、また狭くなる・手術の前と似た症状が、ふたたび・その日のうちに連絡してほしい変化 起きにくくするために ― 固定は、必要な範囲だけ 要因の多くは、手術の決め方とやり方に・そもそも、固定が本当に必要か 起きてしまったら、そして固定を勧められたら すぐに手術、とは限らない・SCSを相談する価値(加藤の見解)・まとめ・よくあるご質問・固定術を勧められたら、主治医に聞いてみてください・次に読むページ・主な参考文献 1. 隣接椎間障害とは、どのくらい起きるのか 固定すると、隣が代わりに動く
腰の骨は、少しずつ動いている
腰の骨は、五つの骨が積み重なり、そのあいだの一つ一つが、少しずつ動くことで、体を曲げたり、そらしたりしています。
動かなくした分を、隣が引き受ける
固定術 では、ネジと棒で、骨と骨のあいだを動かないようにします。すると、そこで動いていた分を、すぐ上や下の高さが、代わりに引き受けることになります。
たとえるなら、三段の引き出しのうち、真ん中だけを、釘で打ちつけたようなものです。上と下の引き出しは、今まで以上に出し入れされ、レールや枠が早く傷みやすくなります。
隣接椎間障害とは
こうして、固定した場所の隣の高さが、年月とともに傷んでくるのが、隣接椎間障害(りんせつついかんしょうがい) です。英語の頭文字から、ASDと呼ばれることもあります。
手術の直後に起きるのではなく、何年もかけて、少しずつ進んでいくのが特徴です。
どのくらいの人に起きるのか
画像の変化は多い、症状が出る方は少ない
では、どのくらいの方に起きるのでしょうか。報告によって幅がありますが、大きな研究をまとめると、次のようになります。
手術のあと、レントゲンやMRIで、隣の高さに変化が見えるのは、およそ四人に一人です。ところが、痛みやしびれといった症状が出るのは、およそ十二人に一人にとどまります。
年数とともに、固定の数とともに増える
一方で、この変化は、年数とともに増えていきます。隣の高さのために、もう一度手術を受けた方は、ある研究では、十年でおよそ五人に一人でした。そして、固定する高さの数が多いほど、その割合は高くなります。
時期・条件
割合
出典
画像の変化
約4人に1人(約27%)
Xia 2013(多くの研究のまとめ)
症状が出る
約12人に1人(約9%)
同上
もう一度の手術:5年
約7人に1人(約14%)
Sears 2011
もう一度の手術:10年
約5人に1人(約22%)
同上
10年・固定した高さの数別
1か所 16%・2か所 31%・3〜4か所 40%
同上
正直なところ
つまり、隣の高さの変化は、多くの方では症状にならない。けれども、長い目で見ると、無視できない。これが、正直なところです。
2. 隣が悪くなると、どうなるか 通り道が、また狭くなる
隣の高さが傷むと、そこでも、椎間板がすり減ったり、靭帯や関節が厚くなったりして、神経の通り道が、また狭くなることがあります。骨がずれてくることもあります。
手術の前と似た症状が、ふたたび
そうなると、手術の前と似た症状が、ふたたび出てきます。
手術のあと、何年かたってから、こうした症状が出てきたら、早めに主治医に伝えてください。手術のあとの症状の見かたは 手術したのに、また痛い・歩けない にもまとめてあります。
その日のうちに連絡してほしい変化
脚の力が急に入らなくなった、おしっこやうんちが出にくい、といった変化は、その日のうちに連絡してください(急いで受診すべきサイン )。
3. 起きにくくするために ― 固定は、必要な範囲だけ 要因の多くは、手術の決め方とやり方に
隣接椎間障害を起こしやすくする要因の多くは、実は、手術の決め方や、やり方の中にあります。
固定する高さの数 :固定する高さが増えるほど、残った高さにかかる負担は大きくなります。ですから、固定は、必要な範囲だけにとどめることが大切です
固定する角度 :立ったときの腰は、ゆるやかに前にそっています。このそりを保って固定しないと、隣の高さに負担がかかりやすくなります
隣を削りすぎない :固定のすぐ隣の骨や靭帯を、必要以上に削らないことです
そもそも、固定が本当に必要か
そして、そもそも固定が本当に必要かどうかです。固定が必要になる主な理由は、次の四つです。
神経の通り道を広げても、骨のぐらつきが神経を刺激し続ける場合
すべりが進んで、また神経を押すおそれがある場合
椎間板の高さを上げて、神経の出口を広げたい場合
腰のそりを取り戻したい場合
固定術の基本は 固定術 、長い目で見た負担は 固定術の長期リスク にまとめてあります。
4. 起きてしまったら、そして固定を勧められたら すぐに手術、とは限らない
隣の高さで症状が出てきた場合も、すぐに手術というわけではありません。薬やリハビリで、様子を見られる方も多くいます。
症状が強く、生活に困るようになったときは、隣の高さの通り道を広げる手術や、固定の範囲を延ばす手術を考えることになります。
SCSを相談する価値(加藤の見解)
加藤からひとこと
ここからは、私の考えです。一般的な治療の順番として決まったものではありません。
隣の高さの症状が、脚の神経の痛みが中心で、もう一度の手術を避けたい、あるいは体の負担から手術が難しい、という方では、脊髄刺激療法(SCS) を相談する価値があると考えています。
SCSは、背骨を固めることなく、痛みの伝わり方を和らげる治療です。ただし、通り道の狭さそのものを広げる治療ではありません。脚の力が落ちている場合などは、手術が優先されます。主治医と、よく話し合ってください。
まとめ
固定した場所の分を、隣の高さが引き受けるため、年月とともに隣が傷むことがあります
画像の変化は多くても、症状が出る方は少数です。ただし、年数と固定の数で増えます
固定は、必要な範囲だけ
起きてしまっても、いくつかの選択肢があります
よくあるご質問
Q. 固定術を受けると、必ず隣が悪くなるのですか?
必ずではありません。レントゲンやMRIで隣の高さに変化が見えるのは、およそ四人に一人で、症状が出るのは、およそ十二人に一人です。ただし、年数とともに、固定する高さの数が多いほど、増えていきます。
Q. 隣の高さに変化があると言われました。すぐに手術が必要ですか?
すぐに手術というわけではありません。症状がなければ、すぐに治療が必要になるわけではありません。症状があっても、薬やリハビリで様子を見られる方も多くいます。
固定術を勧められたら、主治医に聞いてみてください
「なぜ、固定が必要なのですか。広げるだけでは、だめですか」
「固定するのは、いくつの高さですか」
「隣の高さは、今、どんな状態ですか」
※ このページは一般的な情報の提供を目的としています。隣接椎間障害でSCSを相談するという考えは加藤の見解であり、標準的な治療の順番ではありません。実際の判断は、主治医にご相談ください。
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主な参考文献
Xia XP, et al. "Prevalence of adjacent segment degeneration after spine surgery: a systematic review and meta-analysis." Spine. 2013;38(7):597-608. PMID 22986837.(腰の手術のあと、画像の変化 26.6%・症状 8.5%)
Sears WR, et al. "Incidence and prevalence of surgery at segments adjacent to a previous posterior lumbar arthrodesis." Spine J. 2011;11(1):11-20. PMID 21168094.(隣の高さのための再手術:5年 13.6%・10年 22.2%、固定した高さの数で増える)
Lau KKL, et al. "Demographic, Surgical, and Radiographic Risk Factors for Symptomatic Adjacent Segment Disease After Lumbar Fusion: A Systematic Review and Meta-Analysis." J Bone Joint Surg Am. 2021;103(15):1438-1450. PMID 34166276.(腰のそりが手術で減ると、隣接椎間障害が増える)
Simonetta B, et al. "Laminectomy Adjacent to Instrumented Fusion Increases Adjacent Segment Disease." Spine. 2025;50(3):196-200. PMID 38597215.(固定のすぐ隣を削ると、隣接椎間障害が増える)
利益相反(COI)について
この記事の監修医は、脊髄刺激療法(SCS)を実施する脊椎外科医です。SCSの機器メーカー(Medtronic社、Boston Scientific社)とアドバイザリー関係があり、SCSの診療を行うことによる経済的な利益があります。また本サイトは、日本メドトロニック株式会社から疾患啓発のスポンサーシップ(バナー広告)を受けています。協賛企業が記事の内容を指示・承認することはなく、特定の製品名・機種名は掲載していません。治療の選択は、SCS以外の方法も含めて、主治医とご相談ください。
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