手術したのに、また痛い・歩けない

狭窄症の手術のあとに残った症状、戻ってきた症状の見かた。なぜMRIに写ったすべての場所を手術しないのか、診察で伝えること、もう一度の手術やSCSという選択肢を解説します。

狭窄症の手術を受けたのに、まだ足が痛い、歩ける距離がまた短くなってきた。「手術は失敗だったのか」「先生が見落としたのか」と不安になる方へ。症状を三つに分けて見ると、次に何をすればよいかが見えてきます。


大切なお願い: 手術のあとの症状の多くは、急を要するものではありません。ただし、おしっこやお通じの出方が変わった・お尻のまわりが新しくしびれてきた・足に急に力が入らなくなったときは、次の診察を待たずに、手術を受けた病院へ連絡してください。


このページでわかること

  • 手術のあとの症状を「残った」「戻ってきた」「新しい」の三つに分ける見かた
  • なぜ、MRIに写ったすべての狭い場所を手術しないのか
  • しびれや痛みが残ったとき、何が起きているのか
  • いったん楽になった症状が戻ってきたとき、どこを疑うのか
  • 診察で伝えてほしいこと、その先の選択肢(もう一度の手術、SCS)

1. 「残った」のか、「戻ってきた」のか、「新しい」のか

外来でよく聞く言葉

「手術をしたのに、まだ歩くと足がしびれます」「半年はよかったのに、また痛くなってきました」。手術のあとの外来で、よく聞く言葉です。

同じ「手術したのに」でも、中身は三つに分かれます。どれに当たるかで、考えることも、することも変わります。

三つの型 どんな経過か 多いこと すること
残った 手術のあと、ずっと続いている しびれ。痛みが残ることもある 次の診察で、手術の直後と比べてどうかを伝える
戻ってきた いったん楽になったあと、数か月から数年たって、また歩くと足が痛む・しびれる 手術した場所がまた狭くなった、となりの場所、腰以外の原因 何が・いつから・どれだけ歩けるかを伝え、画像で確かめる
新しく、急に 急に足の力が入らない、おしっこやお通じの出方が変わった、お尻のまわりがしびれる 神経が強く押されているサイン その日のうちに、手術を受けた病院へ連絡

三つ目の「新しく、急に」は、このページでは詳しく扱いません。急いで受診すべきサイン にまとめてあります。

「手術は失敗だったのでしょうか」

症状が残っていることは、手術がうまくいかなかったことと、同じではありません。

狭窄症の手術の目的は、神経を押しているものを取りのぞくことです。押されていた神経がどこまで戻るかは、押されていた期間や強さで変わり、手術で決められる部分ではありません。しびれが残りやすい理由は 手術のあとも、しびれが残るとき にまとめました。

もうひとつ、手術のあとに「残った」と感じる理由があります。手術では、MRIに写ったすべての狭い場所を広げるわけではないからです。次のページで、その理由をお話しします。


2. なぜ、MRIに写ったすべての場所を手術しないのか

狭い場所は、何か所も写ります

狭窄症は、年齢とともに背骨が変わっていく病気です。MRIを撮ると、狭いところが何か所も見つかることが、むしろふつうです。狭さの程度は場所ごとに違います。

そして、写っている狭さと、今の症状は、同じではありません。同じ年代の方を調べた日本の研究では、強い狭さが写っていた方のうち、実際に症状があったのは5〜6人に1人ほどでした。狭いところがあっても、症状を出していない場所が、たくさんあるということです。

全部広げてほしい、と思うのは自然です

「狭いところは全部広げてほしい」と思うのは、自然なことです。

一方で、手術する場所が増えるほど、手術の時間は長くなり、出血も増え、体への負担は大きくなります。合併症の危険はゼロにはならず、手術が大きくなるほど増えやすくなります。症状を出していない場所のために、その負担を上乗せする価値があるかどうか。ここが、手術の範囲を決めるときの考えどころです。

加藤からひとこと 少なくとも私の外来では、まず症状をよく聞き、足の力や感覚を診察し、そのうえでMRIを見て、どの場所が今の症状を出しているかを考えます。そして、原因と考えた場所だけを手術することが多いです。写っている狭さを全部直すのではなく、症状に合った場所を直す、という考え方です。

症状のある場所だけを手術し、ほかの狭いところは手術せずに10年間経過を追った日本の研究があります。ほかの場所を残したことで、再手術が増えることはありませんでした。ひとつの研究ですが、この考え方を支える結果です。

除圧を選ぶとき、先にお伝えしていること

狭窄症の手術には、神経の通り道を広げる 除圧術 と、ぐらつく骨をネジで留める 固定術 があります。除圧だけで足りることが多く、固定を足しても、足の痛みやしびれの改善は多くの場合変わらないことが、複数の研究で報告されています。

加藤からひとこと 私は、除圧だけをおすすめすることが多いです。そのとき、手術の前にお伝えしていることがあります。特に、年齢による変化が広い範囲に及んでいる場合は、除圧で、神経を押しているすべての原因を取り除くことが難しいことがあります。その度合いによっては、固定術を検討する必要がある、ということです。手術のあとに残った症状について、ご本人と一緒に「もう一度手術をするかどうか」を考えるのは、めずらしいことではありません。

ですから、手術のあとに症状が残っていても、見落としとは限りません。ただし、手術しなかった場所が、あとから症状を出すことはあります。それが「戻ってきた」のページの話です。


3. 残った症状:しびれと痛み

しびれが残ったとき

手術のあとに残る症状で、いちばん多いのはしびれです。痛みより残りやすく、変化の多くは手術後の早い時期にあらわれ、その後は大きく変わらないことが多いと報告されています。くわしくは 手術のあとも、しびれが残るとき をご覧ください。

加藤からひとこと 手術の前は足全体にあったしびれが、次第に膝から下になり、足首から下になり、最後は足の指や足の裏にだけ残る。そういう経過を、私はたくさん見てきました。これは私の経験で、研究で確かめられた経過ではありません。

痛みが残ったとき

手術のあとも痛みが続く状態は、「脊椎手術後疼痛症候群」と呼ばれます。手術のあとに痛みが残る理由は、ひとつではありません。

  • 手術しなかった場所に、狭いところが残っている
  • 手術した場所の圧迫が、取りきれていない
  • 手術のあとにできた傷のあとが、神経を押している
  • 長く押されていた神経が、痛みに敏感になっている
  • 腰以外の原因(股関節、足の血管、糖尿病による神経のしびれ)が重なっている

どれに当たるかは、診察と画像で絞っていきます。手術した病院で、手術前の画像と今の画像を比べてもらうのが近道です。対応は、お薬やリハビリ、ブロック注射 といった手術以外の方法から始めることが多く、原因がはっきりしていれば、もう一度の手術を考えることもあります。


4. 戻ってきた症状:同じ場所か、となりか、腰以外か

いったん楽になったのに

手術でいったん楽になったのに、数か月から数年たって、また歩くと足が痛む、しびれる。これも、めずらしいことではありません。年月がたつと、もう一度手術を受ける方は少なくない、と長く追った研究で報告されています。

疑う場所は、大きく三つです。

疑う場所 何が起きているか
手術した場所 広げたところがまた狭くなる、骨がぐらつく、すべりが進む。除圧だけのあとでは、ここがいちばん多い
となりの場所 手術のときは症状を出していなかった狭いところが、年月とともに症状を出す
腰以外 股関節の病気、足の血管が細くなる病気、糖尿病による神経のしびれ。腰の手術の前からあったものが、腰がよくなって目立ってくることもある

足の血管の病気との見分けは 似ている病気 に、固定術のあとの「となりの場所」の話は 固定術の長期リスク にまとめてあります。

診察で伝えてほしいこと

「また痛い」だけでは、医師は原因に近づけません。次の三つを伝えてください。

  1. 何が戻ってきたか(足の痛み、しびれ、腰の痛み。どちらの足の、どこか)
  2. いつからか(手術から何か月、何年たってか。急にか、じわじわか)
  3. 歩ける距離(手術のあといちばんよかったときと比べて、今はどのくらいか)

手帳に「今日はバス停まで休まず歩けた」「今日は途中で2回休んだ」と一言書いておくと、何よりの情報になります。

画像を撮り直す理由

多くの場合、MRIなどの画像を撮り直します。目的は、手術前・手術直後の画像と比べて、どこが変わったかを見ることです。狭くなったのが手術した場所か、となりか。骨の並びは変わっていないか。腰に変化が見つからなければ、股関節や血管を調べる方向へ進みます。

その先の選択肢

原因が見えてきたら、選択肢は大きく三つです。

様子を見る・保存療法を続ける

症状が軽く、力は入り、トイレの問題もなければ、お薬やリハビリ、注射で経過を見ることは多いです。狭窄症はゆっくりの病気ですから、急いで決めなくてよいことも多いです。

もう一度、手術をする

手術した場所がまた狭くなった、となりの場所が狭くなった、といった原因がはっきりしていれば、もう一度除圧をすることがあります。除圧をしても症状がよくならなかったとき、またはいったんよくなって戻ってきたときは、次の手術で、背骨の関節(椎間関節)まで削って、より広く除圧することがあります。関節を削ると骨が不安定になりやすいため、その場合は固定が必要になることが多いです。ほかにも、次のような場合に固定の話が出ます。

  • 骨がぐらつき、除圧をしても神経が刺激され続けそうなとき
  • すべりが進んで、また神経を押しているとき
  • 骨と骨のすき間を広げて、神経の出口を広げたいとき
  • 腰の反りを整えたいとき

固定が必要と言われたら、「なぜ除圧だけでは足りないのですか」と聞いてみてください。なお、二度目以降の手術は、一度目に比べて効果が出にくくなる傾向があります。

脊髄刺激療法(SCS)

手術のあとも痛みが残る方に、検討されることがある治療です。背中に細い電線を入れ、弱い電気で、痛みの信号を和らげます。そのうえで、お伝えしておくことがあります。体の中に機器を入れる治療で、感染や機器のトラブルなどのリスクがあります。神経の圧迫そのものを取りのぞくことはできず、狭いところは狭いままです。効き目には個人差があります。くわしくは 脊髄刺激療法(SCS) をご覧ください。

どの道を選ぶかは、ご本人と主治医が一緒に決めることです。手術した病院で相談しにくいときは、誰に診てもらう? にセカンドオピニオンの受け方をまとめてあります。


5. まとめと、よくあるご質問

まとめ

  • 手術のあとの症状は、「残った」「戻ってきた」「新しく、急に」の三つに分けて考えます。急な変化だけは、その日のうちに連絡を
  • MRIに写った狭い場所は、症状を出していないことが多く、手術では症状に合った場所を広げます。手術が大きくなるほど、体への負担は増えます
  • 残った症状で多いのはしびれです。痛みが残ることもあり、原因は手術した場所・手術しなかった場所・腰以外と、いくつかあります
  • 戻ってきた症状は、手術した場所、となりの場所、腰以外の順に疑い、画像で確かめます
  • 診察では「何が・いつから・どれだけ歩けるか」を伝えてください
  • その先は、様子を見る、もう一度の手術、SCSの三つ。順番も含めて、主治医と一緒に決めます

よくあるご質問

Q. 手術したのに症状が残っています。先生が見落としたのでしょうか? そうとは限りません。MRIに写った狭い場所をすべて手術するのではなく、症状を出している場所を手術するのがふつうです。残った症状が、手術しなかった場所から来ているのか、押されていた神経の傷みから来ているのかは、診察と画像で見分けます。気になるときは、手術を受けた病院で「手術前と比べてどうか」を確かめてもらってください。

Q. 最初から全部の場所を手術していれば、今こうなっていなかったのでは? それは、誰にもわかりません。手術の範囲を広げれば、そのぶん手術の負担と合併症の危険は増えます。症状のある場所だけを手術した方を長く追った研究では、ほかの場所を残したことで再手術が増えることはありませんでした。過去を責めるより、今どの場所が症状を出しているかを確かめることに目を向けてください。

Q. 手術しなかった場所が、あとから悪くなることはありますか? あります。年齢とともに、どの場所も変わっていくからです。ただ、それは「最初の手術が間違っていた」ということではなく、そのときに症状を出していなかった場所が、あとから症状を出した、ということです。そのときにあらためて、手術が必要かどうかを考えます。

Q. 二度目の手術で「固定が必要」と言われました。一度目はいらなかったのに、なぜですか? 一度目の除圧で症状がよくならなかった、または戻ってきたときは、背骨の関節(椎間関節)まで削って、より広く除圧することがあります。関節を削ると骨が不安定になりやすいため、固定が必要になることが多いのです。骨のぐらつきやすべりが進んだ場合も、固定の話が出ます。「なぜ除圧だけでは足りないのか」「固定する範囲はどこまでか」を、主治医に聞いてみてください。固定術 と 固定術の長期リスク も参考になります。

診察で伝えてほしいこと

  1. 「症状は、手術のあとずっと残っている/いったん楽になってから戻ってきた」
  2. 「戻ってきたのは(足の痛み・しびれ・腰の痛み)で、(何か月・何年)前からです」
  3. 「いちばんよかったときは(  )まで歩けました。今は(  )です」

※ このページは一般的な情報の提供を目的としています。手術のあとの経過は一人ひとり異なります。実際の判断は、手術を受けた病院の主治医にご相談ください。


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主な参考文献

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