ヘルニアと狭窄症、何が違う?

椎間板ヘルニアは飛び出した中身が1本の神経を、狭窄症はまわりから通り道全体を狭くする。姿勢での見分け方、両方ある場合、病名より大切な「どこが・何で・どの神経を」を解説します。

狭窄症とは長いつきあいなのに、ここ数週間で、急に脚が痛くなった。MRIで「ヘルニアも出ています」と言われた。狭窄症とヘルニアは、何が違うのでしょうか。両方あるとは、どういうことなのでしょうか。二つは、神経が押される「しくみ」が違います。そして、狭窄症のある方に、ヘルニアが加わることがあります。


このページでわかること

  • 背骨の中にある、神経の通り道
  • 椎間板ヘルニア:飛び出した中身が、多くは1本の神経を押す
  • 腰部脊柱管狭窄症:まわりから少しずつ、通り道全体が狭くなる
  • 姿勢での見分け方と、両方が一緒にある場合
  • 病名より大切な「どこが・何で・どの神経を」押しているか

1. 神経の通り道と、椎間板ヘルニア

背骨の中には、神経の通り道がある

まず、正常な腰の骨を、上から見てみましょう。

上から見た正常な腰の骨:前に椎間板、その後ろに神経の通り道(脊柱管)があり、左右に脚へ向かう神経が分かれている。後ろには黄色靭帯、横には椎間関節がある

前にあるのが、骨と骨のあいだのクッション、椎間板(ついかんばん)です。外側はかたい輪っか、中にはやわらかいゼリーのような髄核(ずいかく)が入っています。

その後ろに、神経の通り道、脊柱管(せきちゅうかん)があります。中を通る神経の束から、左右に一本ずつ、脚へ向かう神経が分かれていきます。脊柱管の後ろには、黄色靭帯(おうしょくじんたい)という靭帯、横には、椎間関節(ついかんかんせつ)という関節があります。

ヘルニアは、中身が飛び出して、1本の神経を押す

椎間板ヘルニアは、椎間板の外側の輪っかに裂け目ができて、中の髄核が、後ろへ飛び出す病気です。

上から見た椎間板ヘルニア:椎間板の中身が裂け目から後ろへ飛び出し、左右どちらか一方の、脚へ向かう神経を押している(赤い部分)

飛び出した部分は、多くの場合、左右どちらか一方に寄っていて、脚へ向かう神経の一本を押します。ですから、痛みやしびれは、片方の脚に、一本の神経の通り道に沿って出ることが多くなります。

横から見た腰の骨:下の椎間板が後ろへ飛び出し、そこから出る1本の神経を押している(赤い部分)

急に始まり、自然に良くなることも多い

ヘルニアは、二十代から五十代に多く、重いものを持ったあとなどに、急に痛くなることがよくあります。前かがみや、座っている姿勢で、痛みが強くなりやすいのも特徴です。

そして、飛び出した部分は、時間とともに、体に吸収されて小さくなることが少なくありません。手術をしなくても、自然に良くなる方が多い病気です。


2. 狭窄症は、通り道全体がまわりから狭くなる

一か所が飛び出すのではない

一方、腰部脊柱管狭窄症 は、一か所が飛び出すのではありません。

上から見た腰部脊柱管狭窄症:前の椎間板のふくらみ、後ろの厚くなった黄色靭帯、横の大きくなった椎間関節に囲まれて、神経の通り道全体が小さくなっている

年齢とともに、前からは椎間板がふくらみ、後ろからは黄色靭帯が厚くなり、横からは椎間関節が大きくなります。こうして、神経の通り道全体が、まわりから少しずつ狭くなっていきます。

両方の脚に出ることも、歩くと出て休むと楽

神経の束全体が締めつけられるので、両方の脚に症状が出ることもよくあります。

歩いているうちに脚がしびれたり痛くなったりして、少し休むとまた歩ける、間欠跛行(かんけつはこう)が、代表的な症状です。

ゆっくり始まる

狭窄症は、五十代以上に多く、何か月、何年という時間をかけて、少しずつ症状が出てきます。

二つを並べると

項目 椎間板ヘルニア 腰部脊柱管狭窄症
何が押すか 飛び出した椎間板の中身 まわりから狭くなった通り道
押される神経 多くは1本(片方の脚) 神経の束全体(両方の脚のことも)
始まる年齢 20〜50代に多い 50代以上に多い
始まり方 急に痛くなることが多い 少しずつ症状が出る
痛む姿勢 前かがみで悪化 反ると悪化、前かがみで楽
間欠跛行 少ない 特徴的
自然経過 自然に良くなることも多い 大きくは変わらないことが多い

3. 姿勢で変わる ― そして、両方ある方も

反ると悪くなるか、かがむと悪くなるか

二つの見分けの手がかりになるのが、姿勢です。

横から見た腰の骨:前かがみでは後ろ側のすき間が開いて神経の通り道が広がり、後ろに反ると閉じて狭くなる

狭窄症は、腰を後ろにそらすと通り道がさらに狭くなり、症状が強くなります。前かがみになると、少し広がって楽になります。自転車や、ショッピングカートを押して歩くと楽、という方が多いのはこのためです。

ヘルニアでは反対に、前かがみで痛みが強くなることが多くなります。

ヘルニアと狭窄症が、一緒にある方も

ただし、ここが大切なところです。ヘルニアと狭窄症が、同じ場所に、一緒にある方もいます。

よく見られるのは、もともと狭窄症のある方に、新しくヘルニアが加わる場合です。

上から見た、狭窄症にヘルニアが加わった状態:もともと狭い神経の通り道に、椎間板の中身が後ろへ飛び出し、神経を強く押している(赤い部分)

もともと狭くなっている通り道では、神経のまわりのすき間が、もうあまり残っていません。そこへ椎間板が後ろへ飛び出すと、小さなヘルニアでも、神経が強く押されます。それまで落ち着いていた症状が、急に悪くなるのは、このためです。

急に脚が痛くなったときは

狭窄症のある方が、ここ数週間で急に脚が痛くなった、というときは、ヘルニアが加わっていないかを確かめます。


4. 名前より、「どこが・何で・どの神経を」

ヘルニアの治療

では、病名の違いは、治療にどう関係するのでしょうか。

ヘルニアは、自然に小さくなることが多いので、まずは薬や安静、リハビリで様子を見ることが基本です。脚の力が入らない、痛みがどうしても治まらない、といった場合に、飛び出した部分をとる手術を考えます。

狭窄症の治療

狭窄症は、自然には、大きくは変わらない方が多く、悪くなる方は一部です。薬や運動で症状をやわらげながら、生活に困るようになれば、通り道を広げる除圧(じょあつ)という手術を考えます。治療の流れは 治療の全体像、手術については 除圧術 にまとめてあります。

両方がある方の治療

両方がある方では、通り道を広げながら、飛び出した部分も一緒にとる、というように、押しているものすべてに対応する手術になります。

まず 必要になれば
ヘルニア 薬・安静・リハビリで様子を見る 飛び出した部分をとる手術
狭窄症 薬や運動で症状をやわらげる 通り道を広げる手術(除圧)
両方ある ― 押しているものすべてに対応する手術

大切なのは、病名そのものより

大切なのは、病名そのものより、「どこが、何によって、どの神経を押しているのか」です。それによって、治療の考え方が決まります。


5. まとめと、主治医への質問

まとめ

  • ヘルニアは、飛び出した中身が、多くは一本の神経を押し、自然に良くなることも多い病気です
  • 狭窄症は、まわりから少しずつ、通り道全体が狭くなる病気です。自然には、大きくは変わらない方が多く、悪くなる方は一部です
  • 狭窄症は反ると悪化し、前かがみで楽になります。ヘルニアは前かがみで痛みが強くなることが多くなります
  • 狭窄症のある方にヘルニアが加わると、症状が急に悪くなることがあります
  • 病名にとらわれず、「何が、どこを押しているのか」を聞いてみてください

よくあるご質問

Q. 狭窄症と言われていたのに、ヘルニアもあると言われました。診断が変わったのですか? 診断が変わったとは限りません。ヘルニアと狭窄症が、同じ場所に一緒にある方もいます。もともと狭窄症のある方に、新しくヘルニアが加わることもあります。どちらが今の症状を起こしているのかを、主治医に確かめてもらってください。

Q. ヘルニアは、手術をしないと治らないのでしょうか? 飛び出した部分は、時間とともに体に吸収されて小さくなることが少なくありません。まずは薬や安静、リハビリで様子を見ることが基本です。脚の力が入らない、痛みがどうしても治まらない、といった場合に、手術を考えます。

主治医に聞いてみてください

  1. 「神経を押しているのは、椎間板の飛び出しですか。それとも、通り道全体の狭さですか。両方ですか」
  2. 「押されているのは、どの高さの、どの神経ですか。それは、今の私の症状と合っていますか」

※ このページは一般的な情報の提供を目的としています。実際の診断と治療の判断は、主治医にご相談ください。


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主な参考文献

  1. Zhong M, et al. "Incidence of Spontaneous Resorption of Lumbar Disc Herniation: A Meta-Analysis." Pain Physician. 2017;20(1):E45-E52. PMID 28072796.(飛び出した椎間板が自然に吸収された割合のまとめ)
  2. Wessberg P, Frennered K. "Central lumbar spinal stenosis: natural history of non-surgical patients." Eur Spine J. 2017;26(10):2536-2542. PMID 28417234.(手術を受けなかった狭窄症の方146人、平均3.3年の経過。脚の痛みは、変わらない方が半数以上、悪くなった方は一部)