ノイロトロピンは、どんなお薬?

日本で30年以上使われてきた痛み止め、ノイロトロピン。痛みのブレーキを助けるしくみ、研究でわかっていること、向いている方と飲み方、次の診察で確かめたいことを解説します。

ノイロトロピンは、日本で生まれ、30年以上使われてきた痛み止めです。体にもともと備わっている「痛みのブレーキ」を助けて効きます。研究は古く小さなものが中心ですが、胃や腎臓への負担が少なく、今も多くの医師が処方し続けています。効き目は、2〜3週間かけて少しずつ出てきます。

腰痛や脊柱管狭窄症で、ノイロトロピンを処方されている方はたくさんいます。「聞いたことのない名前」「どんな薬なのかわからない」という声もよく聞きます。このページでは、どんなお薬か、研究でわかっていること、向いている方と飲み方、次の診察で確かめたいことをまとめました。


1. どんなお薬か

名前の長いお薬です

ノイロトロピンは商品名です。成分の名前は「ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液」ととても長く、炎症を起こしたウサギの皮膚から取り出して精製した成分を使っています[1]。

飲み薬(錠剤)は1988年に発売され、腰痛症、頸肩腕症候群(首・肩・腕の痛み)、肩関節周囲炎、変形性関節症、帯状疱疹のあとの神経痛に使うお薬として承認されています[1]。ふつうは1日4錠を、朝と夕方の2回に分けて飲みます。

痛みのブレーキを助けて効きます

私たちの体には、脳から背骨の中の神経へ「痛みを弱めなさい」という信号を送る、痛みのブレーキのしくみがあります。ノイロトロピンは、このブレーキを働きやすくすると考えられています[1]。痛みのしくみについては、なぜ痛いのかで説明しています。

ロキソプロフェン(ロキソニン)などの消炎鎮痛薬とも、トラマドールなどのお薬とも違う種類のお薬です。そのため、胃や腎臓への負担が少なく、ほかの痛み止めと組み合わせて使われることもよくあります。


2. 研究でわかっていること

承認されたときの試験

腰痛症の方を、ノイロトロピンを飲む群と、偽薬を飲む群に分けて比べた試験では、「よくなった」と判定された方が、ノイロトロピンの群で51%、偽薬の群で31%でした[1]。消炎鎮痛薬を飲んでいる方に上乗せした試験でも、57%と40%で、ノイロトロピンの群のほうが多くよくなっていました[1]。

どちらも発売前に行われた試験で、人数も100〜200人ほどです。今の基準で見ると、古く、小さな研究です。

最近の日本からの報告

脊柱管狭窄症で腰痛のある方64人を3つの群に分けて12週間比べた試験では、ノイロトロピンを飲んだ群で、腰の痛みが軽くなり、歩く速さや歩幅もよくなっていました[2]。人数が少なく、どの薬を飲んでいるかを本人も医師も知っている試験です。

3か月以上続く腰痛の方106人のカルテを調べた研究では、ノイロトロピンを飲み始めて12週間で、痛みの強さが10点満点で平均6.7から4.7に下がり、6割の方で、はっきり実感できるほど軽くなっていました[3]。副作用の報告はありませんでした。ただ、飲まなかった方と比べた研究ではないので、自然に軽くなった分も含まれています。

海外では使われていないお薬です

ノイロトロピンは、主に日本と、アジアの一部の国で使われているお薬です。そのため、海外の大きな研究や、海外の診療ガイドラインには、ほとんど出てきません。

それでも、今も選ばれている理由

発売から30年以上たった今も、ノイロトロピンは多くの医師が処方し続けているお薬です。大規模な研究で数字として示されているわけではありませんが、実際に使って手ごたえを感じている医師が多いということだと、私は考えています。副作用が少なく、ご高齢の方でも使いやすいことも、選ばれる理由のひとつです。


3. 向いている方と、飲み方の注意

こんな方で選ばれることがあります

  • 胃や腎臓が心配で、消炎鎮痛薬を長く飲みにくい方
  • ほかの痛み止めだけでは足りず、組み合わせを考えたい方
  • 眠気やふらつきの出やすいお薬を、できるだけ増やしたくない方

効き目は、2〜3週間かけて

飲んですぐに痛みが消えるお薬ではありません。毎日続けて飲み、2〜3週間かけて少しずつ痛みを軽くしていくお薬です。1〜2か月続けて、効いているかどうかを主治医と一緒に見直すのがよいと思います。効き目は、歩ける距離、夜の眠り、家事のしやすさなど、生活の変化で確かめてください。

副作用は少ないお薬です

主な副作用は、胃の不快感、吐き気、眠気、発疹などで、多くはありません[1]。まれに、肝臓の働きが悪くなることや、強いアレルギー反応が起こることがあります[1]。体がだるい、皮膚や白目が黄色い、じんましんや息苦しさが出た、というときは、すぐに主治医に連絡してください。


4. 飲んでいる方へ:次の診察で

自分の判断でやめたり、増やしたりしないでください

ノイロトロピンは、ほかのお薬と組み合わせて処方されていることがよくあります。やめるときも、主治医と相談しながら進めてください。

次の診察で聞いてみてください

  1. 「このお薬は、どの痛みのために飲んでいますか」
  2. 「飲み始めてから、どのくらいで効き目を見直しますか」
  3. 「ほかの痛み止めとの組み合わせは、今のままでよいですか」

お薬の数が多い方は、お薬手帳は一冊にも参考にしてください。


5. よくある質問

Q. ウサギの皮膚から作るお薬と聞いて、心配です。 国の承認を受けた医薬品で、30年以上使われてきた実績があります。アレルギーを起こしやすい方は、飲み始める前に主治医に伝えてください。

Q. 注射もあると聞きました。 注射薬もあり、痛みの治療で使われることがあります。飲み薬と注射のどちらがよいかは、主治医と相談してください。

Q. 何年も飲んでいます。やめたほうがいいですか? 長く飲むこと自体がいけないわけではありません。効いていると感じているか、ほかのお薬との組み合わせが今のままでよいかを、主治医と一度見直してみてください。

次に読む・見る

→ 薬物療法:痛みのタイプ別のお薬の選び方

→ なぜ痛いのか:痛みのブレーキのしくみ

→ 痛み止めが効きにくくなったら

参考文献

出典
  1. ノイロトロピン錠4単位 添付文書(日本臓器製薬)。効能・効果(帯状疱疹後神経痛、腰痛症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、変形性関節症)、用法・用量(1日4錠を朝夕2回に分けて)、臨床成績(腰痛症の二重盲検比較試験:有効以上 ノイロトロピン51%〈n=59〉対 プラセボ31%〈n=61〉、P<0.05/イブプロフェンを基礎薬とする腰痛性疾患:57%〈n=101〉対 40%〈n=100〉、P<0.05)、作用機序(モノアミン作動性下行性疼痛抑制系の活性化、ブラジキニン遊離抑制、末梢循環改善など)、重大な副作用(肝機能障害・黄疸、ショック・アナフィラキシー)、販売開始1988年7月
  2. Eguchi Y, Aoki Y, Yamashita M, et al. Clinical Efficacy of Neurotropin for Lumbar Spinal Stenosis with Low Back Pain. *Pain Ther*. 2023;12(2):461-473. PMID: 36645650。腰痛のある腰部脊柱管狭窄症64人。ノイロトロピン群・リマプロスト群・併用群で12週間比較(多施設・無作為化・非盲検)。ノイロトロピン群で腰痛、歩行速度・歩幅が改善
  3. Inage K, Kim G, Toshi N, et al. Efficacy of Neurotropin for Chronic Low Back Pain: A Retrospective Observational Study. *Spine Surg Relat Res*. 2026;10(4):627-633. PMID: 42605421。慢性腰痛106人(多施設・後ろ向き観察研究・対照群なし)。VASは12週で6.74→4.73、62.3%で臨床的に意味のある改善。有害事象の報告なし