SCSの刺激の調整 — 植込んでからが本番です

植込み後の調整で何をするのか、通院の間隔、効き方が弱まったときにできること、調整の日に伝えたいこと。

脊髄刺激療法(SCS)は、植込んだら終わりではありません。調整を重ねて、あなたの痛みに合わせていく治療です。

※本ページは一般的な情報提供を目的としています。調整の方法や頻度は、病院や機器によって異なります。実際の治療については、主治医にご相談ください。


1. 調整とは、なぜ必要なのか

3分でわかるまとめ

  • SCSは、植込んだあとの刺激の調整で効き方が変わる治療です
  • はじめは月に1回ほど調整の外来に通い、痛みが和らいで波が少なくなったら、間隔をあけていきます
  • 1回の調整では、電気がきちんと流れているか、充電がきちんとできているか、刺激が痛みの中心に当たっているかを確かめます
  • 時間がたつと効き方が弱まることがあり、これが機器を取り出す理由として最も多いことが、海外の報告で示されています[1][2]
  • 効き方が弱まっても、設定の見直しで取り戻せることがあります。あきらめる前に相談してください[3]
  • SCSの効果を保ち続けるには、植込んだあとの調整が欠かせません

このページでわかること

  • なぜ調整が必要なのか
  • 調整では、何を変えているのか
  • 1回の調整で確かめていること
  • どのくらいの間隔で通うのか
  • 効き方が弱まったときにできること
  • 調整の日に伝えてほしいこと

なぜ、調整が必要なのか

SCSの効き方は、植込んだ日から一定ではありません。調整が必要になる理由は、主に三つあります。

理由 どういうことか
電極が体になじむ 植込み直後は、電極のまわりの組織が落ち着いていく時期です。この間に、刺激の感じ方が変わることがあります
痛みの出方が変わる 季節、体調、活動量、ほかの病気などで、痛む場所や強さは変わります
体が刺激に慣れてくる 同じ刺激を長く続けていると、だんだん効き方が弱まることがあります

「慣れ」で効き方が弱まることがある

三つ目の「慣れ」は、少し詳しくお話しします。

はじめはよく効いていたのに、数か月から数年たつうちに、効き方が弱まってくることがあります。専門的には「効果の減弱」などと呼ばれます。原因はひとつではなく、電極の位置のわずかなずれ、電極のまわりの組織の変化、痛みそのものの変化などが関わると考えられています。

海外の多施設の調査では、SCSの機器を取り出した理由として最も多かったのは、「効果が得られない、または効果が弱まった」ことでした。合併症よりも多い理由です。[1][2][4]

SCSが役に立たない治療だという意味ではありません。効き方を保つには、植込んだあとの手入れが欠かせない、ということです。調整を続けることで、その多くは防いだり、取り戻したりできる可能性があります。


2. 調整で何をしているのか

調整では、何を変えているのか

SCSの刺激には、いくつもの「つまみ」があります。

つまみ 内容
場所 電極の、どの部分から電気を流すか。刺激が届く範囲が変わります
強さ どのくらいの強さで流すか
流し方 ビリビリと感じる流し方か、ほとんど何も感じない流し方か、など

これらの組み合わせは、とても多くあります。だからこそ、一度で正解が決まるとは限りません。いろいろな設定を試しながら、あなたに合うものを探していくのが調整です。

調整は、医師や、機器を専門に扱う医療スタッフが、あなたのお話をうかがいながら行います。


1回の調整で確かめていること

私の外来では、調整のたびに主に次の三つを確かめます。

1. 電気がきちんと流れているか

電極と本体のあいだで、電気がきちんと流れているかを、機械で測ります。「電気の通りにくさ」を数値で見るもので、専門的にはインピーダンスと呼ばれます。

この値がふだんと大きく違うときは、電線の部分に何か起きている可能性があるため、レントゲンなどで確認することがあります。

2. 充電がきちんとできているか

充電するタイプの機器では、充電がきちんとできているか、電池の状態に問題がないかを確かめます。充電の間隔は、機器の種類や、刺激の流し方・強さなど、いくつもの条件で変わります。毎日の充電が必要なこともあれば、もっとずっと間隔をあけられることもあります。

3. 刺激が、痛みの中心に当たっているか

ビリビリと感じる流し方の場合は、刺激を感じる場所が痛みのある場所の真ん中にきちんと当たっているかを、あなたに確かめていただきます。ずれていれば、その場で設定を変えて合わせていきます。


3. 通う間隔と、目指すところ

どのくらいの間隔で通うのか

私の外来では、次のように進めています。

時期 調整の外来
植込み後しばらく 月に1回ほど
痛みが和らぎ、日による波が少なくなってきたら 間隔を少しずつあけていく
効き方が変わったと感じたら 次の予約を待たずに相談

最初の時期に何度か調整を重ねるのは、ふつうのことです。1回目で合わなくても、失敗ではありません。

ご自身でできる調整もあります

病院での調整がいちばん大切です。そのうえで、多くのSCSでは、手元のリモコンで、刺激のオン・オフや強さ、あらかじめ用意された設定の切り替えができます。痛みには日によって波があります。病院で整えてもらった設定をもとに、その日の痛みに合わせてご自身でも調整できることも、SCSの良さのひとつです。どこまで変えてよいかは、調整の外来で確認しておきましょう。


調整の必要は、人によって違います

どのくらい調整が必要かは、人によって本当に違います。私の経験では、一度で合う方もいれば、時間をかけて整えていく方もいます。どちらも、SCSの「ふつう」の姿です。しばらくして痛みの出方が変わり、あらためて調整が必要になることもあります。


目指すのは「ゼロ」ではなく「暮らし」

私は、患者さんに「痛みが半分くらいになることを目指しましょう」とお話ししています。全部消えることを期待すると、少し残ったときにがっかりしてしまうからです。

とくに、疲れて出てくるタイプの腰の痛みは、消えるというより、ペースが変わります。少し歩いただけでつらかった方が、前よりずっと長く歩けるようになる。痛みがなくなるのではなく、痛くなるまでの時間が延びる。それも、暮らしを取り戻す大切な変化です。


4. 効き方が弱まったとき・調整の日に

効き方が弱まったときにできること

「前ほど楽にならなくなった」と感じたら、あきらめる前に、まず相談してください。

確かめること・できること 内容
電極の位置の確認 レントゲンで、電極がずれていないかを確かめます
電気の流れの確認 電線の部分に問題がないかを測ります
設定の見直し 場所・強さ・流し方を組み直します
流し方を切り替える ビリビリ型と、ほとんど感じない型など、別の流し方に切り替えます

効き方が弱まった方に、刺激の流し方を切り替えたり設定を組み直したりする方法は「サルベージ(立て直し)」と呼ばれ、一部の方で効果を取り戻せたという報告が集まっています。[3][5]ただし、報告の多くは振り返りの調査で、研究ごとに条件が異なり、長く続くかどうかはまだ十分にわかっていません。機器の入れ替えが必要になる場合もあります。[3]

それでも、取り出すことを考える前に、調整でできることがあります。


調整の日に、伝えてほしいこと

調整がうまくいくかどうかは、あなたの言葉にかかっています。次のことをメモにしておくと、伝えやすくなります。

伝えること 例
どこが楽になったか 「お尻は楽、ふくらはぎはまだ」
いつつらいか 「朝」「長く歩いたあと」「夜寝るとき」
刺激の感じ方 「強すぎる」「場所がずれている」「感じなくなった」
歩ける距離や時間の変化 前回からどう変わったか
困っていること 「充電がうまくいかない」「リモコンの使い方がわからない」

チェックリスト

  • 前回の調整から、痛みはどう変わったか
  • 痛みが強い時間帯・場面
  • 刺激を感じる場所は、痛む場所と合っているか
  • 充電やリモコンで困っていることはないか
  • できるようになったこと、まだできないこと

5. 医師への質問と次のステップ

医師への質問(刺激の調整編)

  • 「調整の外来には、どのくらいの間隔で通えばよいですか?」
  • 「調整では、どんなことを確かめていますか?」
  • 「効き方が弱まったと感じたら、次の予約を待たずに連絡してよいですか?」
  • 「私の機器では、刺激の流し方は何種類から選べますか?」
  • 「充電の目安は、私の場合どのくらいですか?」

次のステップ

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本ページの臨床的な記述のうち、「私の外来では」「私の経験では」とあるものは監修医の臨床経験に基づきます。

出典
  1. Pope JE, Deer TR, Falowski S, et al. Multicenter Retrospective Study of Neurostimulation With Exit of Therapy by Explant. *Neuromodulation*. 2017;20(6):543-552. PMID: 28714533 — 米国18施設で機器を取り出した方を振り返った調査で、取り出しの理由は「効果が得られない・弱まった」が最多(多施設の後ろ向き観察研究。取り出した方だけが対象)。
  2. Van Buyten JP, Wille F, Smet I, et al. Therapy-Related Explants After Spinal Cord Stimulation: Results of an International Retrospective Chart Review Study. *Neuromodulation*. 2017;20(7):642-649. PMID: 28834092 — 欧州4施設の長期追跡で、治療に関連した取り出しの半数以上が「痛みの軽減が不十分」(多施設の後ろ向き観察研究。機器メーカーの研究者が共著)。
  3. Yener U, Caparó M, Naeimi T, et al. Waveform-Conversion to Salvage Failed Spinal Cord Stimulation: A Systematic Review of Current Evidence. *Neuromodulation*. 2026;29(6):921-936. PMID: 42249871 — 刺激の流し方の切り替えで一部の方は効果を取り戻せるが、入れ替えを伴うことも多く長期の持続は不明(22研究の系統的レビュー。もとの研究の多くは観察研究。著者に企業資金あり)。
  4. Gheith R, Wortmann M, Najjar M, et al. Real-World Outcomes of Spinal Cord Stimulation: A Consecutive Institutional Experience with 505 Trials, Trial-to-Implant Ratio, Long-Term Efficacy, and Explantation Risk Factors. *J Pain Res*. 2025;18:6381-6395. PMID: 41341898 — 多くの方で効果が続いた一方、取り出しの理由は効果の減弱が最多(単一施設の後ろ向き観察研究)。
  5. Rigoard P, Ounajim A, Goudman L, et al. The Challenge of Converting "Failed Spinal Cord Stimulation Syndrome" Back to Clinical Success, Using SCS Reprogramming as Salvage Therapy, through Neurostimulation Adapters Combined with 3D-Computerized Pain Mapping Assessment: A Real Life Retrospective Study. *J Clin Med*. 2022;11(1):272. PMID: 35012013 — 効き方が弱まった方への設定の組み直しで痛みと生活の質が改善(少人数の後ろ向き観察研究・対照群なし)。