背骨が固まる病気(DISH)と、腰の痛み

年齢とともに背骨が骨でつながるDISH。腰の痛みとの本当の関係、固まった背骨の下で狭窄症が起きやすいしくみ、軽い転倒のあとの骨折とあとから出るまひ、強直性脊椎炎との違いを解説します。

レントゲンを撮ったら「背骨が一部、骨でつながっていますね」と言われた。そう聞くと、腰の痛みはこれのせいだろうか、と考えたくなります。DISH(ディッシュ)は、年齢とともに背骨の靭帯が骨に変わり、背骨が固まっていく状態です。実は、DISHそのものが強い腰の痛みを起こすことは、多くありません。気をつけたいのは、固まった背骨のすぐ下の腰に負担が集まること。そして、軽く転んだだけで、背骨が折れることがあることです。ご自分がDISHだと知っておくこと、軽く転んだだけでも受診すること。この二つが、まひを防ぎます。


このページでわかること

  • DISHとは何か、どのくらいの方にあるのか
  • DISHがあると、腰は痛むのか
  • 固まった背骨の下で、狭窄症が起きやすくなるしくみ
  • いちばん気をつけたいこと:軽い転倒のあとの骨折と、あとから出るまひ
  • ご自分がDISHだと知っておくこと、軽い転倒でも受診すること
  • 若い方の「固まる背骨」、強直性脊椎炎との違い

1. DISHとは ― 背骨が、自然に固まっていく

靭帯が、骨に変わる

背骨の前には、骨と骨をつなぐ、長い靭帯(じんたい)が通っています。年齢とともに、この靭帯が少しずつ骨に変わり、上下の骨が、骨の橋でつながっていくことがあります。

これが、DISH(ディッシュ) です。英語の Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis の頭文字で、日本語では、びまん性特発性骨増殖症(びまんせいとくはつせいこつぞうしょくしょう) といいます。

  • びまん性:体の広い範囲に起きる
  • 特発性:はっきりした原因がわからない
  • 骨増殖症:骨が増える

という意味です。古くは、強直性脊椎骨増殖症(きょうちょくせいせきついこつぞうしょくしょう)とも呼ばれました。背骨の四つ以上の骨が、前の骨の橋で続けてつながったものを、DISHと呼びます。

背中の高さ(胸の骨)から始まることが多く、そこから腰や首へ広がる方もいます。

めずらしいものではない

DISHは、めずらしい病気ではありません。日本で、けがのために全身のCTを撮った方を調べた研究では、およそ五人に一人にDISHがありました。年齢が上がるほど多く、女性より男性に多いことがわかっています。

調べ方 DISHがあった割合 出典
日本・けがで全身のCTを撮った方 約5人に1人(19.5%) Hiyama 2018
日本・胸のCTを撮った方 約11人に1人(8.7%) Mori 2017
米国・65歳以上の男性のレントゲン 約5人に2人(42%) Holton 2011

調べ方で数字は違いますが、高齢の男性では、ありふれた変化だといえます。

多くの方は、気づかずに暮らしている

DISHは、ゆっくり進みます。痛みを感じないまま、ほかの理由で撮ったレントゲンやCTで、たまたま見つかる方がほとんどです。


2. DISHがあると、腰は痛むのか

DISHそのものは、強い痛みの原因になりにくい

「背骨が骨でつながっている」と聞くと、それが痛みの原因だと思いがちです。ところが、これまでの研究では、DISHのある方とない方で、腰の痛みの多さに、はっきりした差は見つかっていません。

米国の高齢男性の研究では、むしろDISHのある方のほうが、この一年に腰が痛かった方は少ないくらいでした(59%と71%)。日本の住民健診の研究でも、腰の痛みに差はありませんでした。

DISHで多いのは、痛みよりも、背中や腰の「こわばり」 です。体を反らす、ひねる、といった動きが、しにくくなります。こうした体の動かしにくさが重なって、男性では、生活の質が少し下がるという報告もあります。

「DISHのせい」で終わらせない

ですから、腰が痛むときに「DISHがあるから、しかたない」で終わらせないでください。痛みの原因は、別のところにあることが多いからです。とくに気をつけたいのが、次の二つです。

  • 固まった背骨のすぐ下で起きる、腰部脊柱管狭窄症
  • 転んだあとに起きる、背骨の骨折

固まった背骨の下に、負担が集まる

背骨は、一つ一つのつなぎ目が、少しずつ動くことで、体を曲げたり、ひねったりしています。DISHで背中の高さが固まると、そこで動いていた分を、まだ動く腰のつなぎ目が、代わりに引き受けることになります。

たとえるなら、長い列車の、前のほうの車両を、全部つないで一本の棒にしたようなものです。カーブのたびに、棒のすぐ後ろのつなぎ目だけが、大きくしなります。

腰の固定術のあとに、隣の高さが傷みやすくなるのと、同じしくみです(固定術のあと、隣の骨が悪くなる?)。DISHは、体が自分で作った、長い固定のようなものだといえます。

DISHのある方は、狭窄症の手術が多い

実際に、日本の大きな研究では、DISHのある割合は、次のように段階的に増えていました。

対象 DISHがあった割合 出典
症状がなく、画像でも狭窄がない住民 14.4% Yamada 2019
症状はないが、画像では狭窄がある住民 21.1% 同上
狭窄症で、手術が必要になった方 31.7% 同上

年齢などをそろえても、DISHのある方は、手術が必要な狭窄症になりやすい(およそ1.7倍)という結果でした。脚のしびれや痛み、少し歩くと休みたくなる、といった症状があれば、腰部脊柱管狭窄症 を疑って、診察を受けてください。

腰の手術を考えるときは、DISHの範囲を伝える

DISHが腰まで広がっている方では、狭窄症の手術のあとに、もう一度手術を受ける割合が高いことも、わかっています。ある研究では、平均8年あまりで、腰までDISHが広がった方の22%が再手術を受けていました(広がっていない方は7%)。

一方で、背骨のまん中の骨や靭帯を残す、体への負担の少ない広げ方では、再手術が少なかったという報告もあります。DISHがある方の手術は、範囲や方法を、ふだん以上によく考える必要がある、ということです。

手術の話が出たら、「DISHがあると言われています」と伝え、背骨全体のレントゲンで、どこまで固まっているかを確認してもらってください。


3. いちばん気をつけたいこと ― 軽い転倒のあとの骨折

固まった背骨は、一本の棒のように折れる

ふつうの背骨は、たくさんの関節で、しなるように力を逃がします。ところが、DISHで固まった背骨は、しなりません。強い力がかかると、一本の長い棒のように、ポキッと折れてしまいます。

しかも、折れた場所の上と下が、長い棒になっているため、てこのように、折れた場所が大きくぐらつきます。中を通る神経が傷つきやすく、まひにつながることがあります。

多くは、立った高さからの転倒

DISHのある方の背骨の骨折は、大きな事故より、ちょっとした転倒で起きることが多いのが特徴です。

私たちが、全国の病院で、DISHのある方の背骨の骨折285例を調べた研究では、次のことがわかりました。

わかったこと 割合 出典
立った高さ・座った高さからの転倒で折れた 約半数(51%) Okada 2019
骨折の診断が、1日以上遅れた 約5人に2人(40%) 同上
あとから、まひが出たり、重くなったりした 約3人に1人(31%) 同上

最初は、軽い痛みだけのことがある

とくに、背中から腰の骨折は、最初は脚の動きに問題がないことが多いのです(約3人に2人)。痛みも軽いことがあり、本人も、医師も、「ただの打ち身」「よくある圧迫骨折」と考えてしまいがちです。

ところが、骨折が見逃されたまま動いているうちに、折れた場所がずれ、何日も、ときには何週間もたってから、脚が動かなくなることがあります。私たちの研究では、病院を受診したのに骨折と診断されなかった方のうち、半数近く(46%)で、あとから神経の症状が悪くなっていました。はっきりした転倒の覚えがないのに折れていた方も、背中から腰の骨折の約1割にいました。

普通のレントゲンだけでは、わからないことがある

固まった背骨の骨折は、普通のレントゲンでは、写りにくいことがあります。骨折の場所や、背骨の後ろ側まで折れているかどうかは、CTで調べると、はっきりします。背骨の後ろ側まで折れている骨折は、とくにぐらつきやすく、あとからのまひにつながりやすいことがわかっています。

まず、ご自分がDISHだと知っておく

骨折を見逃さないための第一歩は、ご自分の背骨にDISHがあると、知っておくことです。

レントゲンやCTで「背骨が骨でつながっている」「骨のとげが橋になっている」と言われたら、それがDISHかどうか、主治医に確かめてください。DISHと言われたら、その名前を覚えておき、ご家族にも伝えておきましょう。お薬手帳に「DISH(びまん性特発性骨増殖症)」と書いておくのも、よい方法です。初めての病院や救急外来でも、すぐに伝えられます。

DISHのある方が、転んだら

DISHのある方は、軽く転んだだけでも、病院を受診してください。「これくらいで」と思うような転倒でも、です。そのうえで、次のことを覚えておいてください。

  1. 転んだあと、新しく背中や腰が痛むときは、軽くても受診する:とくに、寝返り、起き上がり、立ち上がりのときに痛む場合は、骨折を疑います
  2. 受診したら、「DISHがある」と伝える:そのうえで、CTやMRIで調べる必要がないか、相談してください
  3. あとから出る変化を見逃さない:脚に力が入りにくい、しびれが広がる、おしっこやうんちが出にくい。こうした変化が出たら、その日のうちに受診してください

急いで受診したほうがよいサインは 急いで受診すべきサイン にもまとめてあります。


4. ほかの「固まる背骨」と、主治医への質問

若いころからの腰の痛みなら、強直性脊椎炎も

背骨が固まる病気には、DISHのほかに、強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん) があります。こちらは、炎症によって背骨や骨盤の関節が固まっていく病気で、DISHとは別のものです。

強直性脊椎炎の腰の痛みには、次のような特徴があります。

  • 40歳より前に、いつのまにか始まる
  • 夜や明け方に痛み、朝、腰がこわばる
  • 体を動かすと楽になり、安静にしていてもよくならない

日本では、欧米よりずっと少ない病気です。ただ、こうした特徴のある腰の痛みが続くときは、リウマチ科で相談する価値があります。

強直性脊椎炎で固まった背骨も、DISHと同じように、軽い転倒で折れやすくなります。転んだあとの注意は、DISHと同じです。

まとめ

  • DISHは、年齢とともに背骨の靭帯が骨に変わり、背骨が固まっていく状態です。高齢の男性では、めずらしくありません
  • DISHそのものは、強い腰の痛みの原因になりにくい。痛みがあるときは、別の原因を探します
  • 固まった背骨の下の腰には、負担が集まり、狭窄症が起きやすくなります
  • いちばん気をつけたいのは、軽い転倒のあとの骨折です。ご自分がDISHだと知っておき、軽く転んだだけでも受診して、「DISHがある」と伝えてください

よくあるご質問

Q. DISHと言われました。治療が必要ですか? DISHそのものを元に戻す治療は、今のところありません。痛みがなければ、DISHのための治療は必要ありません。大切なのは、ご自分がDISHだと知っておくこと、転ばないように気をつけること、そして、軽く転んだだけでも受診することです。転ばないための工夫は 転倒予防 にまとめてあります。

Q. 骨粗しょう症とは違うのですか? 違うものです。DISHは骨が増える変化で、骨粗しょう症は骨がもろくなる病気です。ただ、どちらも高齢の方に多く、両方を持っている方もいます。骨粗しょう症の検査や治療は、DISHとは別に考えてください。

Q. 首にもDISHがあると言われました。 首のDISHでは、骨の橋が大きくなって、飲み込みにくさが出ることがあります。また、首の骨折は、背中や腰の骨折より、まひが重くなりやすいことがわかっています。首を打った、首から先の手足がしびれる、といったときは、すぐに受診してください。

主治医に聞いてみてください

  1. 「私の背骨にDISHはありますか。どこからどこまで、固まっていますか」
  2. 「転んだときは、どこで、どんな検査を受ければよいですか」
  3. 「腰の手術を考えるとき、DISHは、手術の方法に関係しますか」

※ このページは一般的な情報の提供を目的としています。実際の診断や治療の判断は、主治医にご相談ください。


次に読むページ


主な参考文献

  1. Hiyama A, Katoh H, et al. "Prevalence of diffuse idiopathic skeletal hyperostosis (DISH) assessed with whole-spine computed tomography in 1479 subjects." BMC Musculoskelet Disord. 2018;19:178. PMID 29848322.(けがで全身のCTを撮った方の19.5%にDISH)
  2. Mori K, et al. "Prevalence of thoracic diffuse idiopathic skeletal hyperostosis (DISH) in Japanese: Results of chest CT-based cross-sectional study." J Orthop Sci. 2017;22(1):38-42. PMID 27697426.(胸のCT 3013例の8.7%)
  3. Holton KF, et al. "Diffuse idiopathic skeletal hyperostosis and its relation to back pain among older men: the MrOS Study." Semin Arthritis Rheum. 2011;41(2):131-138. PMID 21377195.(65歳以上の男性の42%にDISH、この一年の腰の痛みは59%と71%)
  4. Ohshima K, et al. "Impact of diffuse idiopathic skeletal hyperostosis on quality of life and locomotive syndrome in community-dwelling older adults: the Yakumo study." Sci Rep. 2025;15(1):3582. PMID 39875502.(住民の18.2%にDISH、腰の痛みに差はなく、男性で生活の質が低い)
  5. Yamada K, et al. "Diffuse idiopathic skeletal hyperostosis is associated with lumbar spinal stenosis requiring surgery." J Bone Miner Metab. 2019;37(1):118-124. PMID 29327302.(DISHの割合 14.4%→21.1%→31.7%、調整オッズ比1.65)
  6. Yamada K, et al. "Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis Extended to the Lumbar Segment Is a Risk Factor of Reoperation in Patients Treated Surgically for Lumbar Stenosis." Spine. 2018;43(20):1446-1453. PMID 29481381.(腰まで広がったDISHで再手術 22%と7.3%)
  7. Yamada K, et al. "Less-invasive decompression procedures can reduce risk of reoperation for lumbar spinal stenosis with diffuse idiopathic skeletal hyperostosis extended to the lumbar segment." Eur Spine J. 2023;32(2):505-516. PMID 36567342.(負担の少ない広げ方で再手術 7%、従来の方法 25%)
  8. Okada E, et al. "Spinal fractures in patients with diffuse idiopathic skeletal hyperostosis: A nationwide multi-institution survey." J Orthop Sci. 2019;24(4):601-606. PMID 30679080.(285例:立った高さからの転倒 51.2%、診断の遅れ 40.4%、あとからの神経の悪化 30.5%)
  9. Katoh H, et al. "A Comparison of Cervical and Thoracolumbar Fractures Associated with Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis—A Nationwide Multicenter Study." J Clin Med. 2020;9(1):208. PMID 31940926.(背中から腰の骨折は最初に神経の症状がない方が多いが、医師の診断が遅れると45.6%で神経の症状が悪化)
  10. Okada E, et al. "CT-based morphological analysis of spinal fractures in patients with diffuse idiopathic skeletal hyperostosis." J Orthop Sci. 2017;22(1):3-9. PMID 27713008.(背骨の後ろ側の骨折は、あとからのまひと関連)
  11. Sieper J, et al. "New criteria for inflammatory back pain in patients with chronic back pain: a real patient exercise by experts from the Assessment of SpondyloArthritis international Society (ASAS)." Ann Rheum Dis. 2009;68(6):784-788. PMID 19147614.(炎症による腰の痛みの特徴)