牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、しびれに効く?

脚のしびれや冷えに処方される漢方薬、牛車腎気丸。どんな方に選ばれるか、研究でわかっていること、飲み方と副作用、漢方を2種類以上飲むときの甘草・附子の重なりを解説します。

牛車腎気丸は、脚の痛みやしびれ、腰痛に使われる漢方薬です。体質に合う方で効果が期待されますが、狭窄症での研究はまだ少なく、合うかどうかは飲んで確かめていくお薬です。漢方を2種類以上飲んでいる方は、同じ生薬の重なりに注意してください。

脚のしびれや冷えで、牛車腎気丸を処方されている方はたくさんいます。このページでは、どんなお薬か、研究でわかっていること、飲み方と副作用、ほかによく処方される漢方と、2種類以上飲むときの注意をまとめました。


1. どんなお薬か

10種類の生薬を組み合わせた漢方薬です

牛車腎気丸は、地黄(じおう)、牛膝(ごしつ)、車前子(しゃぜんし)、附子(ぶし)など、10種類の生薬を組み合わせた漢方薬です[1]。附子は、トリカブトの根を、毒を弱めるように加工したもので、体を温める働きがあるとされています。

牛車腎気丸は10種類の生薬を組み合わせた漢方薬。附子(ぶし)はトリカブトの根を、毒を弱めるように加工したもので、体を温める働きがあるとされる

ふつうは1日7.5gを2〜3回に分けて、食前か食間(食事と食事のあいだ)に飲みます[1]。

体質に合わせて選ぶお薬です

添付文書には、効能として「疲れやすく、手足が冷えやすく、尿の量が少ないか多く、ときに口が渇く方の、脚の痛み・腰痛・しびれ・頻尿・むくみ」などが書かれています[1]。症状の名前だけでなく、こうした体質が合うかどうかを見て処方されるのが、漢方薬の特徴です。

漢方薬は体質を見て選ぶお薬。説明書には、疲れやすく、手足が冷えやすく、尿の量が少ないか多い方の、脚の痛み・しびれ・腰痛などに使うとある

高齢で、脚のしびれと冷えがあり、夜中にトイレに起きる、という方で選ばれることがよくあります。合うかどうかは、主治医が判断します。


2. 研究でわかっていること

狭窄症での研究は、まだ少ないお薬です

牛車腎気丸は日本で広く使われていますが、腰部脊柱管狭窄症のしびれに効くかを、偽薬と比べて確かめた質の高い研究は、見つかりませんでした。

腰痛で牛車腎気丸を飲んだ28人のカルテを調べた日本の研究では、半年以内に腰痛がよくなった方が10人いました[2]。いつもの量(1日7.5g)を飲んでいた方のほうがよくなりやすく、一方で、脊柱管狭窄症など背骨の病気がある方では、よくならなかった方が多くみられました。人数が少なく、比べる群のない研究なので、はっきりしたことは言えません。

だからこそ、飲んで確かめるお薬です

添付文書にも、症状がよくならない場合は飲み続けないように、と書かれています[1]。1〜2か月を目安に、しびれや冷え、夜の眠りがどう変わったかを、主治医と一緒に見直してください。

牛車腎気丸は飲んで確かめるお薬。よくならない場合は飲み続けず、1〜2か月を目安にしびれ・冷え・夜の眠りの変化を主治医と見直す

しびれには、ぴりぴりする「痛みに近いしびれ」と、感覚が鈍くなる「感覚が届かないしびれ」があり、合う対策が違います。くわしくは狭窄症のしびれは、なぜ起こる?をご覧ください。


3. 飲み方と、副作用

飲み方のコツ

粉薬が飲みにくい方は、お湯に溶かして飲むと飲みやすくなります。飲み忘れても、2回分を一度に飲まないでください。

気をつけたい副作用

  • 食欲がない、胃がもたれる、吐き気、下痢など、胃腸の症状
  • 発疹、かゆみ
  • 動悸、のぼせ、舌のしびれ(附子による症状のことがあります)

暑がりで、のぼせやすく、顔が赤くなりやすい方では、動悸やのぼせが出やすいとされています[1]。

まれでも、すぐに連絡してほしい副作用

  • 咳、息切れ、発熱:間質性肺炎という肺の病気のことがあります。お薬をやめて、すぐに主治医に連絡してください[1]
  • 体がだるい、皮膚や白目が黄色い:肝臓の働きが悪くなっていることがあります[1]

4. ほかによく処方される漢方と、2種類以上飲むとき

ほかによく処方される漢方

  • 八味地黄丸(はちみじおうがん):牛車腎気丸のもとになった漢方で、牛膝と車前子が入っていないものです。附子を含みます
  • 疎経活血湯(そけいかっけつとう):しびれと痛みが混じった、腰や脚の痛みに使われます。甘草(かんぞう)を含みます[3]
  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):こむら返りに使われます。甘草を多く含みます。くわしくは夜のこむら返りをご覧ください

どれを選ぶかは、体質と症状を見て、主治医が決めます。

漢方を2種類以上飲んでいる方へ

漢方薬どうしでは、同じ生薬が重なることがあります。とくに気をつけたいのが、甘草と附子です。

重なりやすい生薬 主に含む漢方 重なったときに出やすい症状
甘草 芍薬甘草湯、疎経活血湯 など多くの漢方 むくみ、血圧が上がる、手足がだるい・力が入らない
附子 牛車腎気丸、八味地黄丸 など 動悸、のぼせ、舌のしびれ

甘草が重なると、むくみや血圧の上昇、手足の力が入りにくくなる「偽アルドステロン症」が起こることがあります。牛車腎気丸そのものに甘草は入っていませんが、芍薬甘草湯などと一緒に飲んでいる方は、甘草の量が増えていないか確かめてもらってください。牛車腎気丸の添付文書でも、ほかの漢方薬と一緒に使うときは生薬の重なりに注意し、附子を含むものとの併用にはとくに注意するよう書かれています[1]。

市販の漢方薬にも、同じ生薬が入っています。漢方薬を買うときや、別の病院で漢方を処方されたときは、お薬手帳を見せてください。


5. 飲んでいる方へ:次の診察で

次の診察で聞いてみてください

  1. 「このお薬は、どの症状のために飲んでいますか」
  2. 「どのくらい飲んだら、効いているかを見直しますか」
  3. 「ほかに飲んでいる漢方と、生薬が重なっていませんか」

よくある質問

Q. 漢方薬なら、副作用はないのでは? 漢方薬にも副作用はあります。多くは軽いものですが、咳や息切れ、発熱が出たときは、すぐに主治医に連絡してください。

Q. 市販の牛車腎気丸と同じですか? 同じ名前の市販薬もありますが、量が違うことがあります。処方されたお薬と重ねて飲まないでください。

Q. 何か月も飲んでいますが、変わった気がしません。 添付文書にも、よくならない場合は飲み続けないよう書かれています。やめるか、ほかのお薬に変えるかを、主治医と相談してください。

次に読む・見る

→ 薬物療法:痛みのタイプ別のお薬の選び方

→ 夜のこむら返り:芍薬甘草湯の使い方

→ お薬手帳は一冊に

参考文献

出典
  1. ツムラ牛車腎気丸エキス顆粒(医療用)添付文書(2023年12月改訂)。組成(ジオウ、ゴシツ、サンシュユ、サンヤク、シャゼンシ、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ末の10生薬。カンゾウは含まない)、効能・効果、用法・用量(1日7.5gを2〜3回に分割し食前又は食間)、重要な基本的注意(改善が認められない場合は継続投与を避ける/他の漢方製剤等との含有生薬の重複に注意、ブシを含む製剤との併用は特に注意)、重大な副作用(間質性肺炎、肝機能障害・黄疸)、その他の副作用(消化器症状、過敏症、心悸亢進・のぼせ・舌のしびれ)
  2. Hamaguchi T, Yoshino T, Horiba Y, Watanabe K. Goshajinkigan for Low Back Pain: An Observational Study. *J Altern Complement Med*. 2017;23(3):208-213. PMID: 27991830。慶應義塾大学病院漢方医学センターで腰痛に牛車腎気丸を処方された28人の後ろ向き観察研究。6か月以内に改善10人・非改善9人。通常量(7.5g/日)で改善が多く、脊柱管狭窄症などの脊椎疾患では非改善が多かった
  3. ツムラ疎経活血湯エキス顆粒(医療用)添付文書。組成に日局カンゾウ1.0gを含む