狭窄症のしびれは、なぜ起こる?

ぴりぴりする痛みに近いしびれと、感覚が鈍いしびれ。神経に何が起きているのか、しびれは戻るのか、早く手術すれば残らないのか、タイプごとの対策と診察での伝え方を解説します。

「しびれ」には、ぴりぴり・じんじんする痛みに近いしびれと、感覚が鈍くなるしびれがあります。この二つは起こり方が違い、合う対策も違います。自分のしびれがどちらに近いかを知っておくと、主治医との相談がぐっと具体的になります。

腰部脊柱管狭窄症の方からは、「足がしびれる」という訴えを、痛みと同じくらいよく聞きます。ところが同じ「しびれ」という言葉で、まったく違う感覚を指していることがよくあります。このページでは、しびれの二つのタイプ、神経に何が起きているのか、しびれは戻るのか、タイプごとの対策をまとめました。


1. しびれには二つのタイプがあります

ぴりぴり・じんじんする「痛みに近いしびれ」

正座のあとに足がじんじんする、あの感じに近いしびれです。ぴりぴり、ちくちく、焼けるよう、電気が走るよう、と表現されることもあります。

これは、押されて傷ついた神経が、刺激もないのに勝手に信号を出している状態です。神経が「うるさくなっている」と言うとわかりやすいかもしれません。

感覚が鈍い「感覚が届かないしびれ」

足の裏に紙が一枚はさまっているよう、自分の足ではないよう、触っても感じが薄い。こちらは、神経の信号がうまく届かなくなっている状態です。神経が「静かになりすぎている」とも言えます。

多くの方は両方が混ざっています

実際には二つがはっきり分かれる方は多くありません。「ふだんは鈍いのに、歩くとじんじんしてくる」というように、両方が混ざっていることがよくあります。

それでも、どちらが強いかを知っておく意味はあります。あとで説明するように、お薬が届きやすいのは主に「痛みに近いしびれ」のほうだからです。

自分のしびれを言葉にするのは、意外とむずかしいものです。このページの最後に、診察で伝えやすくするためのメモの例を載せています。


2. 神経に何が起きているのか

押され方と押されている期間で変わる

狭窄症では背骨の中の神経の通り道が狭くなり、神経が押されます。動物の実験から、神経に起きる変化は、押され方の強さと、押されている期間によって段階的に進むことがわかっています[1][2]。

段階 神経に起きていること 戻りやすさ
はじめ 神経の血のめぐりが悪くなり、むくむ 圧迫が取れれば戻りやすい
長く続くと 神経を包む覆い(電線のビニールにあたる部分)が傷む 時間をかけて戻ることが多い
さらに続くと 神経の線維そのものが減り、かたくなる 戻りにくい

歩くとしびれる・じっとしていてもしびれる

狭窄症に多い「歩くと足がしびれて、休むと楽になる」というしびれは、主に、歩いているあいだに神経の血のめぐりが足りなくなることで起こると考えられています。休むと血のめぐりが戻るので、しびれも引いていきます。

これに対して、じっとしているときも一日中しびれているという場合は、神経そのものの変化が進んでいることがあります。研究でも、安静にしていてもしびれる方は、手術のあとにしびれが残りやすいとされています[3]。


3. しびれは戻るのか

痛みよりゆっくり戻ります

神経を押しているものを手術で取りのぞくと、多くの方で痛みは比較的早く楽になります。しびれも軽くなっていきますが、そのペースは痛みよりゆっくりです[4][5]。

手術のあとのしびれの経過を1年間追った研究では、しびれは半年ほどかけて少しずつ軽くなり、そこから先は大きくは変わりませんでした[5]。「手術のあと数週間でしびれが取れないから、失敗だった」と考える必要はありません。

早く手術すればしびれは残らないのか

外来でよく聞かれる質問です。答えは「そうとも言い切れない」です。

しびれが長く続いていた方や、手術の前のしびれが強かった方ほど、手術のあとにしびれが残りやすいという研究は、いくつもあります[5]。ただ、どの研究も手術のタイミングを比べて確かめたものではありません。しびれが強い方ほど長く続いている、という重なりもあるため、「待ったからしびれが残った」とまでは言えないのです。

手術の時期を比べて確かめた研究としては、腰椎椎間板ヘルニアの研究があります。早めに手術をした方は、しばらく様子を見た方よりも早く楽になりましたが、1年たつと、両方のグループの回復はほとんど同じでした[6]。

加藤からひとこと 私は、神経が長く押されるほど傷みが進み、しびれが残りやすくなると考えてきました。動物の実験はそれを支えています。外来でも、我慢できなくなるまで手術を待った方ほど、手術のあとに残ったしびれを嘆かれている印象があります。けれども、「早く手術すれば、しびれが残らない」ことを確かめた研究は、調べた範囲では見つかりませんでした。ですから、しびれだけを理由に手術を急ぐことはしません。一方で、よくならないまま何年も様子を見続けることも、おすすめしていません。

手術を考えるタイミングや、手術のあとに残ったしびれについては、手術のあとも、しびれが残るときでくわしく説明しています。

待たずに受診してほしいとき

しびれの種類にかかわらず、次のときは、次の診察を待たずに受診してください。足に力が入りにくくなってきた。おしっこやお通じの出方が変わった。お尻のまわりや股のあたりがしびれる。くわしくは急いで受診すべきサインをご覧ください。


4. タイプごとの対策

「痛みに近いしびれ」にはお薬が合う方がいます

神経が勝手に信号を出している状態には、神経の痛みに使うお薬(プレガバリン〔リリカ〕、ミロガバリン〔タリージェ〕など)が、うるさくなった神経を落ち着かせる方向に働きます。研究でも、こうしたお薬は、痛みに過敏になっている方ほど手ごたえが出やすいことがわかっています[7]。

ただし、狭窄症のしびれそのものを主な目的にして、これらのお薬を確かめた研究はまだありません。眠気やふらつきが出やすいお薬でもあり、高齢の方では骨折が増えたという報告もあります[8]。少ない量から始め、手ごたえとふらつきを見ながら、続けるかどうかを主治医と決めていきます。くわしくはリリカとタリージェの違いをご覧ください。

歩くとしびれる両足のしびれには、神経の血のめぐりをよくするお薬(リマプロスト〔オパルモン〕など)が使われることもあります[9][10]。

「感覚が届かないしびれ」はお薬で取り戻しにくい

信号が届かなくなった神経をお薬で元に戻すことは、いまのところむずかしいと考えられています。ビタミンB12のお薬(メコバラミン〔メチコバール〕)も、ビタミンB12が足りている方では、期待ほどの効果が確認されていません。くわしくはメコバラミン(メチコバール)は、しびれに効く?をご覧ください。

このタイプのしびれで大切なのは、足を守ることです。

  • お風呂のあとに、足の裏を目で見て、小さな傷がないか確かめる
  • 湯たんぽや電気あんかを、足に直接あてない(熱さに気づきにくく、低温やけどになりやすい)
  • かかとのある、脱げにくい靴をはく
  • 夜のトイレに行く道に、足元の明かりをつける

感覚の鈍い足に、お薬のふらつきが重なると、転びやすくなります。「しびれの薬を足したら、ふらつくようになった」と感じたら、そのままにせず主治医に伝えてください。

それでもつらいとき

しびれや痛みが続いて生活に支障があるときは、脊髄刺激療法(SCS)という治療を検討することもあります。しびれについてわかっていることは、SCSとしびれで説明しています。


5. しびれの伝え方とよくある質問

診察で伝えやすくするメモ

次の4つを書き出して持っていくと、しびれの様子が主治医に伝わりやすくなります。

  1. どんな感じか:ぴりぴり・じんじん/紙が一枚はさまったよう・感じが薄い
  2. いつ出るか:歩くと出て休むと引く/じっとしていても一日中
  3. どこか:片足か両足か、足の裏、すね、太もも、お尻のまわり
  4. 変わってきたか:強くなった、広がった、ほとんど変わらない

よくある質問

Q. しびれと痛み、どちらが先によくなりますか? 多くの場合、痛みのほうが先に楽になります。しびれは、痛みよりゆっくり軽くなることが多いと考えてください。

Q. しびれが強いのは、狭窄症が重いということですか? しびれの強さだけで病気の重さは決まりません。ただ、じっとしていてもしびれる、範囲が広がってきた、という変化は、神経の状態が変わってきたサインのことがあります。変化があれば主治医に伝えてください。

Q. しびれに、運動は意味がありますか? 運動でしびれそのものが減るかは、まだわかっていません。それでも、しびれを理由に動かなくなると、足腰が弱って、かえって歩けなくなります。休みながらでも歩く、自転車をこぐなど、続けられる形で体を動かしてください(歩ける距離をのばす)。

次に読む・見る

→ メコバラミン(メチコバール)は、しびれに効く?

→ 手術のあとも、しびれが残るとき

→ SCSとしびれ

参考文献

出典
  1. Delamarter RB, Bohlman HH, Dodge LD, Biro C. Experimental lumbar spinal stenosis. Analysis of the cortical evoked potentials, microvasculature, and histopathology. *J Bone Joint Surg Am*. 1990;72(1):110-120. PMID: 2295658。イヌの馬尾を25・50・75%狭めて3か月観察。狭め方が強いほど、静脈のうっ滞・むくみから、神経の覆いの障害、神経線維の減少へと変化が進んだ(動物実験)
  2. Pedowitz RA, Garfin SR, Massie JB, et al. Effects of magnitude and duration of compression on spinal nerve root conduction. *Spine*. 1992;17(2):194-199. PMID: 1553590。ブタの馬尾で、圧迫の強さと時間が大きいほど神経の伝わり方の障害が強く、回復しにくかった(動物実験)
  3. Hara N, Oka H, Yamazaki T, et al. Predictors of residual symptoms in lower extremities after decompression surgery on lumbar spinal stenosis. *Eur Spine J*. 2010;19(11):1849-1854. PMID: 20309711。除圧術89人を2年追跡。手術前にじっとしていてもしびれがあった方は、足の痛み・しびれが残りやすかった(日本・前向き研究)
  4. Huang P, Sengupta DK. How fast pain, numbness, and paresthesia resolves after lumbar nerve root decompression: a retrospective study of patient's self-reported computerized pain drawing. *Spine*. 2014;39(8):E529-E536. PMID: 24480941。腰の神経根の除圧術85人。痛みは術後6週で大きく改善した一方、しびれと異常感覚の改善はゆっくりだった(米国・後ろ向き研究)
  5. Zou T, Chen H, Wang PC, et al. Predictive factors for residual leg numbness after decompression surgery for lumbar degenerative diseases. *BMC Musculoskelet Disord*. 2022;23(1):910. PMID: 36224568。腰の除圧術314人を12か月追跡。しびれは6か月まで軽くなり、その後はほぼ横ばい。手術前のしびれの強さなどが残りやすさに関係(中国・前向き研究)
  6. Peul WC, van Houwelingen HC, van den Hout WB, et al. Surgery versus prolonged conservative treatment for sciatica. *N Engl J Med*. 2007;356(22):2245-2256. PMID: 17538084。坐骨神経痛(腰椎椎間板ヘルニア)283人のランダム化比較試験。早期手術群は回復が早かったが、1年後の回復は両群で同程度(オランダ)
  7. Gewandter JS, Sohn MB, De Guzman R, et al. Predicting Treatment Response with Sensory Phenotyping in Post-Traumatic Neuropathic Pain. *Pain Med*. 2022;23(10):1726-1732. PMID: 35312012。外傷後の神経障害性疼痛の試験(539人)の再解析。痛覚過敏のある人ではプレガバリンが偽薬より痛みを減らし、ない人では差がなかった
  8. Wakabayashi H, Fukasawa T, Yoshida S, et al. Risk of Fracture Associated with Pregabalin or Mirogabalin Use: A Case-Case-Time-Control Study Based on Japanese Health Insurance Claims Data. *Drug Saf*. 2025;48(5):503-511. PMID: 39934585。日本の診療報酬データを用いた解析で、プレガバリン・ミロガバリンの使用と骨折の増加が関連(観察研究)
  9. Matsudaira K, Seichi A, Kunogi J, et al. The efficacy of prostaglandin E1 derivative in patients with lumbar spinal stenosis. *Spine*. 2009;34(2):115-120. PMID: 19112336。両足のしびれと間欠跛行のある狭窄症79人で、リマプロストと消炎鎮痛薬(エトドラク)を8週間比較。足のしびれなどでリマプロストが良好(日本・ランダム化比較試験)
  10. 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会(監修)『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)』南江堂, 2021. 英文要約:Takeshita K. *Spine Surg Relat Res*. 2023;7(4):306-307. PMID: 37636152