しびれにも効くのか。研究でわかっていること、わかっていないこと、私の外来での経験
このページでわかること
- 「痛み」と「しびれ」の違い
- しびれが、手術のあとにも残りやすい理由
- SCSでしびれがどう変わるのか(研究と、私の外来での経験)
- しびれがいちばんつらい方が、SCSを考えるときのポイント
- しびれを医師にうまく伝えるためのチェックリスト
- SCS以外に、しびれに対してできること
しびれと痛みの違い、SCSでしびれはどう変わるのか、研究と監修医の経験から。相談のときのチェックリスト付き。
しびれにも効くのか。研究でわかっていること、わかっていないこと、私の外来での経験
このページでわかること
- 「痛み」と「しびれ」の違い
- しびれが、手術のあとにも残りやすい理由
- SCSでしびれがどう変わるのか(研究と、私の外来での経験)
- しびれがいちばんつらい方が、SCSを考えるときのポイント
- しびれを医師にうまく伝えるためのチェックリスト
- SCS以外に、しびれに対してできること
足のしびれは、腰部脊柱管狭窄症や、腰の手術のあとに残る症状として、とても多いものです。そして、痛みとくらべて和らぎにくいことが知られています。神経が長いあいだ圧迫されていると、神経そのものが傷んでしまうことがあり、これは手術でも、お薬でも、SCSでも同じです。
SCS(脊髄刺激療法)の研究の多くは「痛み」を中心に調べていて、しびれだけをくわしく調べた研究は、まだ多くありません。これは、正直にお伝えしておきたい点です。
私の経験では、外来でSCSを受けた患者さんの経過を見ると、しびれも、全体としてははっきりとよくなる方向に変化しています。ただ、その改善の度合いは痛みより小さく、「満足している」というお声も、痛みにくらべるとしびれのほうが少なめでした。
しびれへの効果は、痛みにくらべてやや劣ることがあります。ただ、SCSのあとで、しびれが消失した症例も経験しています。
ですから私は、しびれがいちばんつらい方には、「SCSは、しびれもよくなることが期待できる治療です。ただ、どのくらいよくなるかは、痛みにくらべて、人による差が大きいです」とお話ししています。
しびれが残っていても、痛みが和らぐことで、歩ける距離が伸びたり、夜眠れるようになったりする方は少なくありません。「しびれだから」とあきらめる前に、何がいちばんつらいのかを、主治医に具体的に伝えてみてください。
どちらも神経から来る症状ですが、感じ方も、和らぎ方も、少しずつ違います。
| 痛み | しびれ | |
|---|---|---|
| 感じ方の例 | ずきずき、焼けるよう、電気が走るよう | じんじん、ぴりぴり、膜が一枚張ったよう、感覚がにぶい |
| 出やすい場面 | 歩いたとき、同じ姿勢を続けたとき | 一日じゅう続く、夜や安静時に気になる |
| 和らぎやすさ | 治療で比較的和らぎやすい | 和らぎにくいことがある |
日本語の「しびれ」には、じんじんする異常な感覚と、感覚がにぶくなる状態の両方が含まれます。どちらのしびれなのかによって、治療の手ごたえも変わることがあります。医師に伝えるときは、「どんなしびれか」を言葉にしてみると役に立ちます(後半のチェックリストをご覧ください)。
腰部脊柱管狭窄症で神経の通り道を広げる手術(除圧術)を受けたあと、足の痛みは大きくよくなったのに、しびれが残るという方は少なくありません。
日本の病院で除圧術を受けた方を調べた研究では、手術のあとに何らかのしびれが残った方は珍しくなく、強いしびれが続いた方もいました。糖尿病があること、手術前のしびれが強いことなどが、しびれが残りやすい要因として挙げられています。[1]
同じ研究グループの別の報告では、手術の満足度に関わる症状として、腰の痛みや足の痛みよりも、しびれの影響が大きかったと報告されています。[2]痛みがとれても、しびれが残ると、「治療がうまくいった」とは感じにくくなります。
神経が長いあいだ圧迫されると、圧迫がとれたあとも、神経そのものの働きがすぐには戻らないことがあります。これは、SCSに限った話ではありません。手術でも、お薬でも、しびれは痛みより残りやすいということを、まず知っておいていただきたいと思います。
SCSの効果を調べた代表的な研究は、ほとんどが足や腰の痛みを主な評価項目にしています。
たとえば、腰の手術のあとに足の痛みが続く方を対象にした多施設のランダム化比較試験では、SCSを加えた方が、お薬などの治療だけを続けた方にくらべて、足の痛み・腰の痛み・生活の質がよくなったと報告されています。[3]ただし、この試験は機器メーカーの資金提供を受けて行われたもので、評価の中心は痛みでした。しびれを独立して評価したものではありません。
腰部脊柱管狭窄症の足の痛みに対するSCSについても、日本の施設からの報告[4]や、ヨーロッパの複数施設の記録をまとめた報告[5]があり、痛みや生活の機能の改善が示されています。ただし、いずれも過去の記録をふり返って調べた研究で、比較する対照群がなく、しびれを主な評価項目にしたものではありません。
腰の手術のあとに片側の足の神経症状が続く方を対象に、SCSの前後で感覚の状態をくわしく調べた小規模な研究では、治療前に多くの方が訴えていた焼けるような感じ、ぴりぴり感、しびれなどの症状が、SCSの3か月後には目立たなくなっていたと報告されています。[6]ただし、対象は20人あまりと少なく、結論を広げるにはさらに研究が必要です。
しびれについてのエビデンス(科学的な根拠)は、まだ十分とはいえません。
私の経験をお話しします。外来では、SCSを受けた患者さんに、治療の前後で質問票に答えていただき、経過を見ています。
しびれへの効果は、痛みにくらべてやや劣ることがあります。ただ、SCSのあとで、しびれが消失した症例も経験しています。
これが、私の経験からの正直な実感です。なお、これは一つの施設での経験であり、研究として比較対照を置いて調べたものではありません。
しびれがいちばんつらい症状だという方に、私は次のようにお話ししています。
「私がSCSを行った患者さんの経過を見ると、しびれも、全体としてははっきりとよくなる方向に変化しています。ですから、SCSは、しびれもよくなることが期待できる治療です。そのうえで、どのくらいよくなるかは、痛みにくらべて、人による差が大きいです」
そのうえで、次の点を一緒に考えます。
ゴールは、しびれを「ゼロ」にすることではなく、しびれがあっても気にならない毎日に近づくことです。
しびれは、外から見えない症状です。次の項目をメモして診察に持っていくと、医師に伝わりやすくなります。
□ いちばんつらいのは?
□ どこが?
□ どんなしびれ?
□ いつ強くなる?
□ 生活への影響は?
□ これが楽になれば、何がしたい?
SCSは選択肢の一つです。しびれに対しては、ほかにもできることがあります。
| できること | ポイント |
|---|---|
| 神経の痛み・しびれに使うお薬 | 効き方や眠気・ふらつきなどの副作用には個人差があります。量や種類は主治医と相談して調整します |
| 体を動かす・歩く | 無理のない範囲で続けると、足の筋力やバランスを保ちやすくなります |
| 持病の管理 | 糖尿病はしびれが残りやすい要因の一つです。[1]血糖の管理も大切です |
| 足を守る工夫 | 感覚がにぶいと、けがややけどに気づきにくくなります。足をよく見る、湯たんぽの低温やけどに気をつける、合った靴をはくなど |
| 転倒の予防 | しびれで足の感覚がわかりにくいと、つまずきやすくなります。家の中の段差や照明を見直しましょう |
Q. しびれだけでも、SCSを考えてよいですか?
A. しびれだけの方にSCSを行うかどうかは、症状の原因や、ほかの治療の経過によって判断が分かれます。痛みもあるかどうか、生活にどのくらい影響しているかを含めて、担当の医師とよく相談してください。
Q. SCSの刺激の「ビリビリ」と、しびれは同じものですか?
A. 違います。刺激の方法によっては、SCSの電気刺激を「ビリビリ」「トントン」と感じることがありますが、これは治療の刺激です。最近は、刺激をほとんど感じない方法も使われています。もともとのしびれとは別のものですので、気になるときは調整の外来で伝えてください。
Q. SCSのあとに、しびれが強くなったように感じたら?
A. 刺激の感じ方が急に変わったときは、電極の位置がずれた可能性などもあります。我慢せずに、植込みを受けた病院に相談してください。刺激の設定を変えることで、楽になることもあります。
診察のときに、次のような質問をしてみましょう。
本ページの内容は、以下の文献と、監修医の臨床経験に基づいています。