脊髄刺激療法(SCS)としびれ

しびれと痛みの違い、SCSでしびれはどう変わるのか、研究と監修医の経験から。相談のときのチェックリスト付き。

しびれにも効くのか。研究でわかっていること、わかっていないこと、私の外来での経験


このページでわかること

  • 「痛み」と「しびれ」の違い
  • しびれが、手術のあとにも残りやすい理由
  • SCSでしびれがどう変わるのか(研究と、私の外来での経験)
  • しびれがいちばんつらい方が、SCSを考えるときのポイント
  • しびれを医師にうまく伝えるためのチェックリスト
  • SCS以外に、しびれに対してできること

1. しびれとは、なぜ残るのか

3分でわかるまとめ

足のしびれは、腰部脊柱管狭窄症や、腰の手術のあとに残る症状として、とても多いものです。そして、痛みとくらべて和らぎにくいことが知られています。神経が長いあいだ圧迫されていると、神経そのものが傷んでしまうことがあり、これは手術でも、お薬でも、SCSでも同じです。

SCS(脊髄刺激療法)の研究の多くは「痛み」を中心に調べていて、しびれだけをくわしく調べた研究は、まだ多くありません。これは、正直にお伝えしておきたい点です。

私の経験では、外来でSCSを受けた患者さんの経過を見ると、しびれも、全体としてははっきりとよくなる方向に変化しています。ただ、その改善の度合いは痛みより小さく、「満足している」というお声も、痛みにくらべるとしびれのほうが少なめでした。

しびれへの効果は、痛みにくらべてやや劣ることがあります。ただ、SCSのあとで、しびれが消失した症例も経験しています。

ですから私は、しびれがいちばんつらい方には、「SCSは、しびれもよくなることが期待できる治療です。ただ、どのくらいよくなるかは、痛みにくらべて、人による差が大きいです」とお話ししています。

しびれが残っていても、痛みが和らぐことで、歩ける距離が伸びたり、夜眠れるようになったりする方は少なくありません。「しびれだから」とあきらめる前に、何がいちばんつらいのかを、主治医に具体的に伝えてみてください。


「痛み」と「しびれ」は、どう違うのか

どちらも神経から来る症状ですが、感じ方も、和らぎ方も、少しずつ違います。

痛み しびれ
感じ方の例 ずきずき、焼けるよう、電気が走るよう じんじん、ぴりぴり、膜が一枚張ったよう、感覚がにぶい
出やすい場面 歩いたとき、同じ姿勢を続けたとき 一日じゅう続く、夜や安静時に気になる
和らぎやすさ 治療で比較的和らぎやすい 和らぎにくいことがある

日本語の「しびれ」には、じんじんする異常な感覚と、感覚がにぶくなる状態の両方が含まれます。どちらのしびれなのかによって、治療の手ごたえも変わることがあります。医師に伝えるときは、「どんなしびれか」を言葉にしてみると役に立ちます(後半のチェックリストをご覧ください)。


なぜ、しびれは残りやすいのか

手術のあとも、しびれは残ることがある

腰部脊柱管狭窄症で神経の通り道を広げる手術(除圧術)を受けたあと、足の痛みは大きくよくなったのに、しびれが残るという方は少なくありません。

日本の病院で除圧術を受けた方を調べた研究では、手術のあとに何らかのしびれが残った方は珍しくなく、強いしびれが続いた方もいました。糖尿病があること、手術前のしびれが強いことなどが、しびれが残りやすい要因として挙げられています。[1]

しびれは、満足度にも大きく関わる

同じ研究グループの別の報告では、手術の満足度に関わる症状として、腰の痛みや足の痛みよりも、しびれの影響が大きかったと報告されています。[2]痛みがとれても、しびれが残ると、「治療がうまくいった」とは感じにくくなります。

理由は「神経そのものの傷み」

神経が長いあいだ圧迫されると、圧迫がとれたあとも、神経そのものの働きがすぐには戻らないことがあります。これは、SCSに限った話ではありません。手術でも、お薬でも、しびれは痛みより残りやすいということを、まず知っておいていただきたいと思います。


2. SCSでしびれは変わるのか

研究からわかっていること

研究の多くは「痛み」を調べている

SCSの効果を調べた代表的な研究は、ほとんどが足や腰の痛みを主な評価項目にしています。

たとえば、腰の手術のあとに足の痛みが続く方を対象にした多施設のランダム化比較試験では、SCSを加えた方が、お薬などの治療だけを続けた方にくらべて、足の痛み・腰の痛み・生活の質がよくなったと報告されています。[3]ただし、この試験は機器メーカーの資金提供を受けて行われたもので、評価の中心は痛みでした。しびれを独立して評価したものではありません。

腰部脊柱管狭窄症の足の痛みに対するSCSについても、日本の施設からの報告[4]や、ヨーロッパの複数施設の記録をまとめた報告[5]があり、痛みや生活の機能の改善が示されています。ただし、いずれも過去の記録をふり返って調べた研究で、比較する対照群がなく、しびれを主な評価項目にしたものではありません。

しびれについての手がかり

腰の手術のあとに片側の足の神経症状が続く方を対象に、SCSの前後で感覚の状態をくわしく調べた小規模な研究では、治療前に多くの方が訴えていた焼けるような感じ、ぴりぴり感、しびれなどの症状が、SCSの3か月後には目立たなくなっていたと報告されています。[6]ただし、対象は20人あまりと少なく、結論を広げるにはさらに研究が必要です。

まとめると

  • SCSは、痛みについては多くの研究で効果が示されている
  • しびれについての研究は少なく、効果の大きさは、まだはっきりわかっていない
  • 小規模な研究や臨床の経験からは、しびれもよくなる方向に変化する方がいると考えられる

しびれについてのエビデンス(科学的な根拠)は、まだ十分とはいえません。


私の外来でのデータ

私の経験をお話しします。外来では、SCSを受けた患者さんに、治療の前後で質問票に答えていただき、経過を見ています。

  • 腰の痛み、足の痛み、足のしびれは、いずれも、全体としてははっきりとよくなる方向に変化していました
  • ただ、しびれの改善の度合いは、痛みにくらべて小さめでした
  • 治療に「満足している」というお声も、痛みにくらべると、しびれについては少なめでした

しびれへの効果は、痛みにくらべてやや劣ることがあります。ただ、SCSのあとで、しびれが消失した症例も経験しています。

これが、私の経験からの正直な実感です。なお、これは一つの施設での経験であり、研究として比較対照を置いて調べたものではありません。


3. しびれがつらい方へ

SCSをどう考えるか

しびれがいちばんつらい症状だという方に、私は次のようにお話ししています。

「私がSCSを行った患者さんの経過を見ると、しびれも、全体としてははっきりとよくなる方向に変化しています。ですから、SCSは、しびれもよくなることが期待できる治療です。そのうえで、どのくらいよくなるかは、痛みにくらべて、人による差が大きいです」

そのうえで、次の点を一緒に考えます。

  • 痛みもあるか:痛みとしびれの両方がある方は、痛みが和らぐだけでも、生活が大きく変わることがあります
  • 何ができるようになりたいか:「スーパーまで休まず歩きたい」「夜ぐっすり眠りたい」など、目標を具体的にします
  • 試して確かめるか:不安があれば、本番の前に、実際に刺激を体験して確かめる「トライアル」という選択肢もあります。どの方法がよいかは、担当の医師と相談してください
  • 元に戻せるか:SCSは、合わなければ機器を取り出して、元の状態に戻すことができる治療です

ゴールは、しびれを「ゼロ」にすることではなく、しびれがあっても気にならない毎日に近づくことです。


しびれを医師に伝えるときのチェックリスト

しびれは、外から見えない症状です。次の項目をメモして診察に持っていくと、医師に伝わりやすくなります。

□ いちばんつらいのは?

  • 痛み/しびれ/その両方

□ どこが?

  • 足の裏、足の指、ふくらはぎ、太もも、おしり(片側か、両側か)

□ どんなしびれ?

  • じんじん・ぴりぴりする/感覚がにぶい/冷たい感じがする/締めつけられる感じがする

□ いつ強くなる?

  • 歩いたあと/立っているとき/夜や安静にしているとき/一日じゅう

□ 生活への影響は?

  • 眠れない、歩くのがこわい、つまずきやすい、靴下や靴の感覚がわからない

□ これが楽になれば、何がしたい?

  • 「孫と出かけたい」「畑仕事を続けたい」など

しびれに対して、SCS以外にできること

SCSは選択肢の一つです。しびれに対しては、ほかにもできることがあります。

できること ポイント
神経の痛み・しびれに使うお薬 効き方や眠気・ふらつきなどの副作用には個人差があります。量や種類は主治医と相談して調整します
体を動かす・歩く 無理のない範囲で続けると、足の筋力やバランスを保ちやすくなります
持病の管理 糖尿病はしびれが残りやすい要因の一つです。[1]血糖の管理も大切です
足を守る工夫 感覚がにぶいと、けがややけどに気づきにくくなります。足をよく見る、湯たんぽの低温やけどに気をつける、合った靴をはくなど
転倒の予防 しびれで足の感覚がわかりにくいと、つまずきやすくなります。家の中の段差や照明を見直しましょう

4. よくある質問・まとめ

よくある質問

Q. しびれだけでも、SCSを考えてよいですか?

A. しびれだけの方にSCSを行うかどうかは、症状の原因や、ほかの治療の経過によって判断が分かれます。痛みもあるかどうか、生活にどのくらい影響しているかを含めて、担当の医師とよく相談してください。

Q. SCSの刺激の「ビリビリ」と、しびれは同じものですか?

A. 違います。刺激の方法によっては、SCSの電気刺激を「ビリビリ」「トントン」と感じることがありますが、これは治療の刺激です。最近は、刺激をほとんど感じない方法も使われています。もともとのしびれとは別のものですので、気になるときは調整の外来で伝えてください。

Q. SCSのあとに、しびれが強くなったように感じたら?

A. 刺激の感じ方が急に変わったときは、電極の位置がずれた可能性などもあります。我慢せずに、植込みを受けた病院に相談してください。刺激の設定を変えることで、楽になることもあります。


まとめ

  • しびれは痛みより和らぎにくく、手術でもお薬でもSCSでも残りやすい症状です
  • SCSの研究の多くは痛みを中心に調べており、しびれについての根拠は、まだ十分ではありません
  • 私の経験では、しびれも全体としてはよくなる方向に変化しましたが、改善の度合いは痛みより小さめでした
  • それでも、SCSのあとにしびれが消失した症例も経験しています。どのくらいよくなるかは、人による差が大きいです
  • 相談のときは、いちばんつらい症状と、楽になったらしたいことを具体的に伝えてください

医師への質問(しびれ編)

診察のときに、次のような質問をしてみましょう。

  • 「私のしびれは、どこから来ていると考えられますか?」
  • 「私の場合、SCSでしびれがよくなる見込みはありますか?」
  • 「痛みとしびれ、どちらにより効果が期待できますか?」
  • 「本番の前に、刺激を試して確かめることはできますか?」
  • 「SCS以外に、しびれに対してできる治療はありますか?」
  • 「足の感覚がにぶいとき、日常生活で気をつけることはありますか?」

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本ページの内容は、以下の文献と、監修医の臨床経験に基づいています。

出典
  1. Ogura Y, Kitagawa T, Kobayashi Y, et al. Risk factors for persistent numbness following decompression surgery for lumbar spinal stenosis. *Clin Neurol Neurosurg*. 2020;196:105952. PMID: 32535396 — 日本の単施設で除圧術を受けた患者を調べ、術後に残るしびれと、その要因(糖尿病・術前のしびれの強さなど)を報告。**単施設の観察研究(過去の記録の解析)**。
  2. Ogura Y, Takahashi Y, Kitagawa T, et al. Impact of leg numbness on patient satisfaction following decompression surgery for lumbar spinal stenosis. *J Clin Neurosci*. 2021;93:112-115. PMID: 34656233 — 除圧術後の満足度には、痛みよりもしびれの改善が強く関わっていたと報告。**単施設の観察研究**。
  3. Kumar K, Taylor RS, Jacques L, et al. Spinal cord stimulation versus conventional medical management for neuropathic pain: a multicentre randomised controlled trial in patients with failed back surgery syndrome. *Pain*. 2007;132(1-2):179-188. PMID: 17845835 — 腰の手術後に足の神経の痛みが続く患者で、SCSを加えると痛みと生活の質がよくなったと報告。評価の中心は痛み。**多施設のランダム化比較試験(約100人・機器メーカーの資金提供あり)**。
  4. Kamihara M, Nakano S, Fukunaga T, et al. Spinal cord stimulation for treatment of leg pain associated with lumbar spinal stenosis. *Neuromodulation*. 2014;17(4):340-344. PMID: 23919348 — 日本の施設から、腰部脊柱管狭窄症の足の痛みに対するSCSの経験を報告。**単施設の後ろ向き観察研究(対照群なし)**。
  5. Costantini A, Buchser E, Van Buyten JP. Spinal cord stimulation for the treatment of chronic pain in patients with lumbar spinal stenosis. *Neuromodulation*. 2010;13(4):275-279. PMID: 21992882 — ヨーロッパ3施設の記録から、腰部脊柱管狭窄症の慢性痛に対するSCSの長期経過を報告。**複数施設の登録データの後ろ向き解析(対照群なし)**。
  6. Ramaswamy S, Wodehouse T, Langford R, et al. Characterizing the somatosensory profile of patients with failed back surgery syndrome with unilateral lumbar radiculopathy undergoing spinal cord stimulation: a single center prospective pilot study. *Neuromodulation*. 2019;22(3):333-340. PMID: 30303595 — SCSの前後で感覚の状態を調べ、しびれを含む感覚症状が3か月後に目立たなくなっていたと報告。**少人数(約20人)の前向き観察研究**。