その腰痛、圧迫骨折?

動き始めに強く痛む腰痛は、圧迫骨折のことがあります。狭窄症の症状とのちがい、検査、次の骨折を防ぐ骨をつくる3種類の薬を解説します。

狭窄症とお付き合いのある方が、ある日から急に腰が痛くなった。そんなとき、狭窄症が悪くなったと思い込む前に、考えておきたいのが背骨の圧迫骨折です。圧迫骨折は、見分け方を知っていれば見つけやすく、治療で次の骨折を防ぐことができます。


このページでわかること

  • 圧迫骨折の腰痛の特徴と、狭窄症の症状とのちがい
  • 見分ける手がかりと、レントゲン・MRI・骨密度の検査
  • 一度折れると、次の骨折が起きやすい理由
  • 骨をつくる3種類の薬:テリパラチド、アバロパラチド、ロモソズマブ
  • 痛みとの関係、背骨の手術を考えている方へ

1. その腰痛、圧迫骨折かもしれません

「動き始め」に強く痛む

圧迫骨折は、骨粗しょう症で弱くなった背骨の骨(椎体)が、上下からつぶれるように折れるものです。

痛みには、わかりやすい特徴があります。

  • 寝返り、起き上がり、立ち上がりといった動き始めに、腰や背中が強く痛む
  • じっと横になっていると、楽なことが多い
  • 尻もちや、重い物を持ち上げた程度の軽いきっかけで起こる。はっきりしたきっかけがないこともある

朝、布団から起き上がるのに何分もかかるようになった、というのはよく聞くお話です。

椅子から立ち上がろうとして、腰に手を当てて痛がる高齢の女性

多くは「いつの間にか」起きている

背骨の骨折は、本人が気づかないうちに起きていることが少なくありません。強い痛みが出て骨折とわかる方は、背骨の骨折全体のうちの一部です。「いつの間にか骨折」と呼ばれるのはこのためです。

痛みが軽い、あるいはなかったとしても、骨折が起きたこと自体が、骨が弱っているサインです。

狭窄症の症状とは、どこがちがう?

腰部脊柱管狭窄症 は、主に脚の症状で診断される病気です。

圧迫骨折 腰部脊柱管狭窄症
主な場所 腰・背中 お尻から脚
痛み方 動き始めに強く痛む 歩くと、痛み・しびれが出る
楽になるのは 横になって、じっとしているとき 前かがみになる、座って休む
始まり方 ある日から、急に 少しずつ

狭窄症の方に腰痛があることはよくありますが、狭窄症の診断の決め手になるのは脚の症状で、腰痛があるかどうかは問われません。

ですから、腰の痛みがある日から急に強くなったときは、狭窄症のせいと決めつけず、圧迫骨折がないかを調べる価値があります。もちろん、狭窄症と圧迫骨折が一緒にあることもあります。


2. 見分ける手がかりと、検査

自分で気づける手がかり

背が縮んだ

若いころと比べて背が縮んだのは、背骨の骨折のサインのことがあります。とくに、ここ数年で目立って縮んだときは注意が必要です。健康診断の身長の記録を、昔の数字と見比べてみてください。

背中が丸くなってきた

背骨の骨折が重なると、背中が丸くなってくることがあります。ただし、背中が丸いからといって、必ず骨折があるわけではありません。

背骨をたたくと、響く

痛む場所の背骨を、こぶしで軽くたたくと響くように痛むことがあります。仰向けに寝るのがつらい、というのも手がかりの一つです。いずれも、ご自身で強くたたいて確かめる必要はありません。診察で医師が確かめます。

病院で行う検査

レントゲンとMRI

まずレントゲンを撮ります。ただ、骨折したばかりの時期は、レントゲンでははっきりしないことがあります。

疑わしいときは、MRIで調べます。MRIでは、新しい骨折か、昔の骨折かを見分けることができます。レントゲンで骨折がはっきりしなくても、症状から新しい骨折が疑われるときは、骨折があるものとして対応し、時間をおいてレントゲンを撮り直すこともあります。

骨密度(DXA)

あわせて骨密度を測り、骨粗しょう症の程度を調べます。年齢とともに腰の骨は変形して、骨密度が実際より高く出ることがあるため、太ももの付け根(大腿骨)でも測るのが基本です。

骨粗しょう症そのものと、狭窄症との関係は 骨粗しょう症と狭窄症 にまとめてあります。

骨粗しょう症と決めつけないでほしいサイン

次のような場合は、骨粗しょう症による骨折と決めつけず、早めに受診して詳しい検査を受けてください。

  • がんの治療を受けたことがある
  • 熱がある、体重が減ってきた
  • 安静にしていても、夜中に痛む
  • 脚に力が入らない、しびれが広がってきた
  • おしっこやうんちが出にくい

ほかの急ぐサインは 急いで受診すべきサイン にまとめてあります。


3. 次の骨折を防ぐ ― 骨をつくる薬

一度折れると、次が起きやすい

背骨を一度骨折すると、次の骨折が起きやすくなります。とくに、骨折してから間もない時期は、次の骨折の危険が高い時期です。一つの骨折が次の骨折を呼ぶことを、「骨折の連鎖」と呼びます。

背骨の模式図:上から三つの骨が続けて折れている(赤)。一つの骨折が次の骨折を呼ぶ「骨折の連鎖」

骨粗しょう症の治療の目的は、この連鎖を止めることです。骨折をきっかけに治療を始めるなら、早いほうが安心です。

骨をつくる薬(骨形成促進薬)

骨粗しょう症の薬には、大きく分けて二つの働きがあります。

  • 骨をつくる働きを高める薬(骨形成促進薬)
  • 骨が壊されるのを抑える薬(骨吸収抑制薬)

骨をつくる薬は、骨折の危険性が高い方に使われ、新しい背骨の骨折を減らすことが臨床試験で示されています。日本で使える骨をつくる薬は、次の3種類です。

テリパラチド アバロパラチド ロモソズマブ
主な製品名 フォルテオ、テリパラチドBS、テリボン オートインジェクター オスタバロ イベニティ
使う頻度 毎日(フォルテオ・テリパラチドBS)/週2回(テリボン オートインジェクター) 毎日 月1回
注射するのは ご自身で ご自身で 医療機関で
使える期間 24か月まで 18か月まで 12か月まで

テリパラチド

骨をつくる細胞の働きを高める注射薬です。テリボンには、医療機関で週1回注射する製剤もあります。注射のあとに、めまいや吐き気が出ることがあります。

アバロパラチド

テリパラチドと同じ仲間で、同じように骨をつくる細胞に働きかける注射薬です。注射のあとに、めまいや動悸が出ることがあります。

ロモソズマブ

骨をつくる働きを高めながら、骨が壊されるのも抑える注射薬です。過去1年以内に、狭心症・心筋梗塞や脳梗塞などの心臓や脳の血管の病気があった方には、使うのを避けることになっています。

どれを選ぶか

この3種類の効き目を、直接比べた臨床試験はありません。どれを使うかは、骨折の数や骨密度、持病、通院のしやすさ、ご自身で注射ができるかどうかなどから、主治医と相談して決めます。

使い終えたら、骨を守る薬へ

骨をつくる薬には、使える期間に上限があります。使い終えたあと、何も使わずにいると、せっかく増えた骨が減っていきます。そのため、骨が壊されるのを抑える薬(飲み薬や注射薬)に切り替えて、増えた骨を保ちます。

背骨の骨折がある方のように、骨折の危険性が高い方には、まず骨をつくる薬から始め、そのあと骨を守る薬へつなぐ、という順番が、日本のガイドラインで一般的な考え方になっています。


4. 痛みとの関係、背骨の手術を考えている方へ

痛みは、和らぐのか

骨をつくる薬は、まずは次の骨折を防ぐための薬です。そのうえで、テリパラチドについては、骨折したばかりの時期から使うと、長い目で見て痛みが軽くなりやすい、という報告があります。

アバロパラチドとロモソズマブについては、痛みを主な目的として調べた研究は、まだ多くありません。

いずれも、痛み止めの代わりになる薬ではありません。骨折したばかりの時期の痛みには、痛み止めやコルセットなどを組み合わせます。痛み止めのお薬の考え方は お薬 にまとめてあります。

背骨の手術を考えている方へ

骨が弱い方が、背骨を固定する手術(固定術)を受けるとき、手術の前後に骨をつくる薬を使うと、骨がつきやすくなる可能性が報告されています。

狭窄症で手術を考えている方は、骨の状態も一緒に調べておくと安心です。薬をいつから使うかは、手術を担当する医師と相談してください。

主治医に聞いてみてください

  1. 「この腰痛は、圧迫骨折の可能性はありますか。MRIで確かめたほうがよいですか」
  2. 「骨密度は、どのくらいですか。私は骨折の危険性が高いほうですか」
  3. 「骨をつくる薬は、私に合っていますか。使い終えたあとは、どうしますか」

5. まとめ

  • 動き始めに強く痛み、横になると楽になる腰痛は、圧迫骨折のことがあります
  • 狭窄症は主に脚の症状の病気です。腰痛が急に強くなったら、骨折がないか調べる価値があります
  • 背骨を一度骨折すると、次の骨折が起きやすくなります。とくに最初のうちが要注意です
  • 骨をつくる薬は3種類(テリパラチド、アバロパラチド、ロモソズマブ)。どれを使うかは、主治医と決めます
  • 骨をつくる薬を使い終えたら、骨を守る薬につなぎます

よくあるご質問

Q. 圧迫骨折は、自然に治りますか? 多くの方は、数週間から数か月で痛みが落ち着いていきます。ただし、骨がうまくつかなかったり、つぶれが進んだりして、痛みが長引く方もいます。痛みが長引くとき、脚のしびれや力の入りにくさが出てきたときは、主治医に伝えてください。

Q. 骨をつくる薬は、ずっと続けるのですか? いいえ。3種類とも使える期間に上限があり、使い終えたら骨を守る薬に切り替えます。

Q. 骨を守る注射(デノスマブ)を使っています。やめてもいいですか? デノスマブは、自己判断でやめると、骨折が急に増えることがある薬です。やめるとき、ほかの薬に切り替えるときは、必ず主治医と相談してください。

Q. 注射が怖いのですが。 ご自身で注射する製剤は、細い針で、始める前に使い方の説明があります。月1回の製剤や、週1回の製剤のように、医療機関で注射を受ける方法もあります。


※ このページは一般的な情報の提供を目的としています。薬の選択や使い方は、骨折の状態、骨密度、持病によって変わります。実際の治療は、主治医とご相談ください。


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主な参考文献

  1. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編. 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』.(臨床的に気づかれる椎体骨折は全体の約3分の1/発生2週間以内はMRIの診断率が高い/骨形成促進薬を先に使い、その後に骨吸収抑制薬を続ける考え方が一般的)
  2. 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会 監修. 『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2021(改訂第2版)』.(診断基準:殿部から下肢の症状が中心、腰痛の有無は問わない)
  3. Fink HA, et al. "What proportion of incident radiographic vertebral deformities is clinically diagnosed and vice versa?" J Bone Miner Res. 2005;20(7):1216-22. PMID 15940375.(X線で見つかった新しい椎体の変形のうち、臨床的に骨折と診断されたのは22.6%)
  4. Siminoski K, et al. "Accuracy of height loss during prospective monitoring for detection of incident vertebral fractures." Osteoporos Int. 2005;16(4):403-10. PMID 15309381.(実測で2 cmを超える身長低下は新しい椎体骨折の手がかり)
  5. Lindsay R, et al. "Risk of new vertebral fracture in the year following a fracture." JAMA. 2001;285(3):320-3. PMID 11176842.(新しい椎体骨折のあと1年以内に、19.2%が次の椎体骨折)
  6. Johansson H, et al. "Imminent risk of fracture after fracture." Osteoporos Int. 2017;28(3):775-780. PMID 28028554.(骨折後1年の再骨折リスクは一般の2.7倍、10年後は1.4倍)
  7. Neer RM, et al. "Effect of parathyroid hormone (1-34) on fractures and bone mineral density in postmenopausal women with osteoporosis." N Engl J Med. 2001;344(19):1434-41. PMID 11346808.(連日テリパラチド:新しい椎体骨折 RR 0.35)
  8. Nakamura T, et al. "Randomized Teriparatide [human parathyroid hormone (PTH) 1-34] Once-Weekly Efficacy Research (TOWER) trial for examining the reduction in new vertebral fractures in subjects with primary osteoporosis and high fracture risk." J Clin Endocrinol Metab. 2012;97(9):3097-106. PMID 22723322.(週1回テリパラチド:新しい椎体骨折 RR 0.20)
  9. Miller PD, et al. "Effect of Abaloparatide vs Placebo on New Vertebral Fractures in Postmenopausal Women With Osteoporosis: A Randomized Clinical Trial." JAMA. 2016;316(7):722-33. PMID 27533157.(アバロパラチド:新しい椎体骨折 0.6% vs 4.2%)
  10. Cosman F, et al. "Romosozumab Treatment in Postmenopausal Women with Osteoporosis." N Engl J Med. 2016;375(16):1532-1543. PMID 27641143.(ロモソズマブ:12か月の新しい椎体骨折 0.5% vs 1.8%)
  11. Leder BZ, et al. "Importance of prompt antiresorptive therapy in postmenopausal women discontinuing teriparatide or denosumab: The Denosumab and Teriparatide Follow-up study (DATA-Follow-up)." Bone. 2017;98:54-58. PMID 28286299.(骨をつくる薬のあと治療しないと、腰椎の骨密度が低下)
  12. Cummings SR, et al. "Vertebral Fractures After Discontinuation of Denosumab: A Post Hoc Analysis of the Randomized Placebo-Controlled FREEDOM Trial and Its Extension." J Bone Miner Res. 2018;33(2):190-198. PMID 29105841.(デノスマブ中止後に椎体骨折が増加)
  13. Alimy AR, et al. "Conservative Treatments in the Management of Acute Painful Vertebral Compression Fractures: A Systematic Review and Network Meta-Analysis." JAMA Netw Open. 2024;7(9):e2432041. PMID 39240564.(新しい椎体骨折:長期の痛みはテリパラチド連日・週1回でビスホスホネートより良好)
  14. Hadji P, et al. "The effect of teriparatide compared with risedronate on reduction of back pain in postmenopausal women with osteoporotic vertebral fractures." Osteoporos Int. 2012;23(8):2141-50. PMID 22159672.(2か月以上続く椎体骨折の腰痛では、腰痛の改善に群間差なし)
  15. Fatima N, et al. "Assessment of the efficacy of teriparatide treatment for osteoporosis on lumbar fusion surgery outcomes: a systematic review and meta-analysis." Neurosurg Rev. 2021;44(3):1357-1370. PMID 32728969.(固定術でテリパラチド使用時の骨癒合率 OR 2.15)
  16. 各製品の添付文書(PMDA):フォルテオ 2025年11月改訂、テリパラチドBS「モチダ」2023年4月改訂、テリボン(週1回製剤・オートインジェクター)2026年4月改訂、オスタバロ 2026年7月改訂、イベニティ。(使える期間・注意事項)