固定術の種類

なぜ固定するのか、固定術の歩み、PLF・PLIF・TLIF・LLIF・OLIF・ALIFの違いを同じ背骨の図で比較。間接的除圧、PPS・ナビゲーション・ロボット支援。

固定術をすすめられて調べると、PLIF、TLIF、LLIF、OLIF、ALIFと、よく似たアルファベットがたくさん出てきます。このページでは、まず「なぜ固定するのか」をおさらいし、固定術がどのように進歩してきたかをたどってから、それぞれの方法の違いを、同じ背骨の図でお話しします。

このページでわかること

  • 脚の痛みをとるのは除圧、固定は何のためにするのか
  • 固定術の歩み(骨の移植から、椎弓根スクリューまで)
  • 骨と骨のあいだに何も入れない、後側方固定(PLF)
  • 後ろから入れる方法(PLIF・TLIF)
  • 横から・前から入れる方法(LLIF・OLIF・ALIF)と「間接的除圧」
  • 小さな傷でネジを入れる方法(PPS)、ナビゲーションとロボット支援
  • 方法の選び方と、主治医に聞いておきたいこと

1. なぜ固定術をするのか

脚の痛みをとるのは「除圧」

腰部脊柱管狭窄症で、脚の痛みやしびれをとるのは、神経を押しているものを取り除く除圧です。固定術も、多くの場合、除圧とセットで行います。脚の症状を楽にしているのは、そのうちの除圧の部分です。

では、固定は何のために加えるのか。目的は大きく二つです。ぐらつく骨を安定させることと、骨と骨のあいだ(椎体間)を広げることです。

固定を加える四つの理由

  1. ぐらつき:骨と骨のあいだがぐらついていると、除圧をしても、動くたびに神経が刺激され続けることがあります
  2. すべり:骨が前にずれている場合、除圧のあとにすべりが進むと、ふたたび神経が押されることがあります
  3. 神経の出口を広げる:骨と骨のあいだが低くつぶれると、神経の出口(椎間孔)も狭くなります。椎体間を広げて高さを戻し、その高さを保つには固定が必要です
  4. 腰の自然なそり:腰の骨は本来、少し前にそっています。このそりが失われている場合、固定のときに整えることがあります

固定するかどうかは、腰が痛いかどうかでは決めません。決めるのは骨の状態です。それでも、答えが一つに決まらないことも多く、主治医と話し合ってよい部分です。このおさらいは、手術療法 のページの動画「腰部脊柱管狭窄症の手術:除圧術と固定術、何が違う?」で、くわしくお話ししています。固定術全体の成績やリスクは 固定術 のページにまとめています。


2. 固定術の歩み

骨を移植して、じっと待った時代

背骨を固定する手術は、百年以上前、1910年代に始まりました。当時は、背骨の後ろに骨を移植し、あとは骨が自然につながるのを待つしかありませんでした。骨がつながるまでの数か月、ギプスやコルセットで体を固め、長いあいだ寝て過ごす必要がありました。それでも、骨がつながらずに終わることがよくありました。

針金とフック

1960年代ごろから、金属で背骨を支える方法が広まります。背骨の後ろの骨(椎弓)にフックを引っかけたり、針金を巻きつけたりして、金属の棒に留める方法です。おもに背骨の曲がり(側弯症)の手術で発展しました。骨移植だけの時代よりずっと安定しましたが、骨の表面に引っかけるだけなので、支える力には限りがありました。

椎弓根スクリューの登場

1970〜80年代に、椎弓根(ついきゅうこん)という骨の柱を通して、骨の本体(椎体)までネジを入れる方法が考え出され、1990年代には広く使われるようになりました。骨の表面ではなく、骨の芯までネジがしっかり入るので、固定の力が大きく強くなりました。骨がつながりやすくなり、手術のあと早くから歩けるようになったのも、この進歩のおかげです。

背骨を横から見た図。ネジが椎弓根を通って椎体に入り、上下のネジを棒でつなぎ、骨と骨のあいだにスペーサーが入っている

いまの固定術の多くは、三つの部品でできています。

  • スペーサー(ケージ):骨と骨のあいだ(椎間板のあった場所)に入れる、つっかえ棒です。中に骨を詰めておき、やがて上下の骨がこの中でつながります
  • ネジ(椎弓根スクリュー):背骨の後ろから椎弓根を通して、椎体に入れます
  • 棒(ロッド):上下のネジをつなぎ、骨がつながるまでのあいだ、動かないように支えます

骨がしっかりつながるまでには、数か月から一年ほどかかります。

方法の移り変わり

固定の方法も、時代とともに広がってきました。

方法 日本で広く行われた時期(おおよそ) 特徴
前方椎体間固定(ALIF) 1980年代ごろまで主流 おなか側から、骨と骨のあいだに腰の骨(腸骨)を移植する
後側方固定(PLF) 1980〜90年代〜(椎弓根スクリューとともに) 背骨の後ろ外側に骨を移植する。骨と骨のあいだには入れない
後方椎体間固定(PLIF) 1990年代〜(スペーサーの導入とともに) 背中側から、神経をよけて骨と骨のあいだに入れる
経椎間孔椎体間固定(TLIF) 2000年代〜 片側の関節を取り、斜めに入れる
側方・斜側方椎体間固定(LLIF・OLIF) 2010年代〜 わき腹やおなかの横から入れる

日本では、腰の骨を移植する前方固定が長く行われてきました。1980年代から椎弓根スクリューが使われ始め、1990年代に骨と骨のあいだに入れるスペーサーが登場すると、背中側からの固定が中心になります。その後、小さな傷でネジを入れる方法(2005年に使えるようになりました)や、横から入れる方法(2010年代前半に導入)が加わりました。海外では、前方からの椎体間固定は1930年代、後方からの椎体間固定は1940〜50年代から報告されています。

骨と骨のあいだに骨やスペーサーを入れる方法を「椎体間固定」といいます。骨のつながる面が広く、骨と骨のあいだの高さを戻せるので、いまは椎体間固定が中心です。

背骨の輪切りの図に、スペーサーを入れる5つの方向(後ろ・斜め後ろ・横・斜め前・前)を矢印で示したイラスト


3. 後ろから入れる方法

後側方固定(PLF):骨と骨のあいだには入れない

背骨の輪切りの図。左右の横突起の上に移植した骨を置いている

後側方固定は、骨と骨のあいだにスペーサーを入れない方法です。背骨の横に張り出した骨(横突起)の上に骨を移植し、ネジと棒で留めて、外側で骨をつなげます。

スペーサーを入れる「椎体間固定」ができなかった頃からの、古典的な方法です。いまは、神経の圧迫を取る必要がなく、長い範囲を固定する手術(背骨の変形の矯正など)で使われることが多くなっています。

後方椎体間固定(PLIF)

背骨の輪切りの図。椎弓と棘突起を取り、神経の両側からスペーサーを2つ入れている

背中の真ん中を切り、後ろの骨(椎弓・棘突起)と関節の内側を削ります。神経をよけながら、その両側から、骨と骨のあいだにスペーサーを二つ入れます。後ろの骨を取るので、神経の圧迫を直接取り除く「除圧」も同時にできます。日本では、多く行われている方法の一つです。

経椎間孔椎体間固定(TLIF)

背骨の輪切りの図。片側の椎間関節を取り、斜め後ろからブーメランのような形のスペーサーを入れている

片側の椎間関節を取り除き、そこから斜めにスペーサーを入れます。神経を大きくよけずに済むのが特徴です。ブーメランのような曲がったスペーサーを、骨と骨のあいだの前のほうへ回り込ませて置く方法がよく使われます。

背骨の輪切りの図。まっすぐなスペーサーを斜めに1つ入れている

PLIFと同じ、まっすぐな形のスペーサーを斜めに一つ入れる方法もあります。どちらを選ぶかは、骨の形や医師の考え方によります。

加藤からひとこと 私自身は、TLIFではブーメランのような形のスペーサーを使っています。ただ、スペーサーの形や数よりも大切なのは、神経の圧迫がきちんと取れているか、骨がしっかりつながるか、です。


4. 横から・前から入れる方法と「間接的除圧」

側方椎体間固定(LLIF)

背骨の輪切りの図。わき腹から腸腰筋の中を通り、横長の大きなスペーサーを入れている

体を横向きにして、わき腹から入ります。背骨の横にある腸腰筋(ちょうようきん)という筋肉の中を通り、骨と骨のあいだに、横長の大きなスペーサーを入れます。大きなスペーサーで、つぶれた骨と骨のあいだの高さを戻しやすいのが特徴です。

腸腰筋の中には、脚へ向かう神経が通っています。そのため、手術のあと、太ももの前のしびれや、脚の付け根の力の入りにくさが出ることがあります。多くは時間とともに良くなります。

斜側方椎体間固定(OLIF)

背骨の輪切りの図。おなかの横の斜め前から、血管と腸腰筋のあいだを通ってスペーサーを入れている

おなかの横から、腸腰筋の前を通って入ります。大きな血管と腸腰筋のあいだのすき間を使うので、腸腰筋の中の神経に触れにくい方法です。一方で、血管や尿管のすぐ近くを通るため、それらを傷つけないよう注意が必要です。

前方椎体間固定(ALIF)

背骨の輪切りの図。おなか側から、血管をよけて大きなスペーサーを入れている

おなか側から、腸や大きな血管をよけて入ります。骨と骨のあいだを正面から広く見られるので、大きなスペーサーを入れられます。腰のいちばん下の椎間で使われることが多い方法です。血管の近くを通ること、まれに男性で射精の障害が起こりうることが、知っておきたい点です。

「間接的除圧」とは

LLIF・OLIF・ALIFでは、ふつう、背中側から骨や靭帯を削る除圧はしません。

骨と骨のあいだが狭くなると、椎間板や黄色靭帯がたわんで、神経の通り道にはみ出してきます。神経の出口(椎間孔)も狭くなります。そこで、大きなスペーサーで骨と骨のあいだを広げると、たわんでいた椎間板や黄色靭帯が引き伸ばされて、はみ出しが小さくなり、神経の出口も広がります。骨や靭帯を取り除かずに、神経への圧迫がゆるむ。これを間接的除圧といいます。

ただし、骨そのものが神経を強く押している場合などは、間接的除圧だけでは足りないことがあります。その場合は、後ろからの除圧を組み合わせます。

横や前から入れたあとのネジ

横や前からスペーサーを入れたあとも、多くの場合、背中からネジと棒で留めます。そのとき使われることが多いのが、次にお話しする小さな傷のネジです。


5. ネジの入れ方(PPS・ナビゲーション・ロボット)

経皮的椎弓根スクリュー(PPS)

背骨の輪切りの図2つ。従来の方法は筋肉を左右にはがして広く開け、PPSは小さな傷から筋肉の間を通してネジを入れる

従来の方法では、背中の真ん中を切り、背骨についた筋肉を左右に大きくはがして、ネジの入り口を目で見ながらネジを入れます。

経皮的椎弓根スクリュー(PPS)では、ネジ一本ごとに小さな傷をつけ、X線などで位置を確かめながら、筋肉の間を通してネジを入れます。筋肉をはがす範囲が小さいので、手術のあとの痛みや出血を減らせると考えられています。

背中の傷の比較。従来の方法は背中の真ん中に1本、PPSはネジごとに小さな傷が4か所

PPSは、背中の外から骨の中が見えない状態でネジを入れる方法です。そのぶん、X線やナビゲーションの画像が頼りになり、医師の慣れが結果を左右します。

ナビゲーション

X線透視で入れる方法と、ナビゲーションで入れる方法の比較。ナビゲーションでは道具の向きが画面の輪切りの図に映る

X線透視でネジを入れるときは、正面と横の二枚の平らな画像を、医師が頭の中で組み立てて、ネジの向きを決めます。

ナビゲーションでは、手術中に撮ったCTやX線の画像をもとに、道具がいまどこを向いているかが、背骨の輪切りの画像の上に映し出されます。研究をまとめた報告では、ナビゲーション、とくにCTをもとにしたナビゲーションで、ネジの位置の正確さが高いことが示されています。一方で、CTを撮るぶんの放射線や、機器の費用といった面もあります。

ロボット支援

ロボットの腕が、CTで計画したネジの通り道にガイドを合わせて保っている概念図

一部の施設では、ロボット支援も使われ始めています。手術の前や手術中にCTの画像でネジの通り道を計画し、ロボットの腕が、その向きにガイドを合わせて保ちます。ネジを入れるのは医師で、ロボットが手術をするわけではありません。ネジの位置の正確さを高めることが期待されていて、研究が続いています。

このほかにも、体への負担をさらに小さくする固定術の方法が、いくつも開発されています。

ナビゲーションやロボットがなければ危ない? そうとは限りません。経験を積んだ医師は、X線透視でも正確にネジを入れます。機器は、正確さを助ける道具の一つです。大切なのは、その医師が、その方法にどれだけ慣れているかです。


6. 方法の選び方と主治医への質問

どの方法を選ぶか

どの方法が合うかは、次のようなことで決まります。

  • どの高さの椎間か(腰のいちばん下は、横からは入りにくい、など)
  • 骨のずれや、骨と骨のあいだのつぶれ方
  • 神経を直接除圧する必要があるか(間接的除圧で足りるか)
  • 以前の手術や、おなかの手術の経験
  • 骨の強さ(骨粗しょう症の有無)
  • 医師が、その方法にどれだけ慣れているか

小さな傷の方法も、慣れるまでの時期は、手術時間が長くなったり、合併症が増えたりすることが報告されています。内視鏡の手術と同じで、方法の名前よりも、医師の経験がものをいいます。くわしくは 内視鏡の手術と従来の手術 をご覧ください。

固定術をすすめられた場合は、その前に、脊髄刺激療法(SCS) という選択肢についても、主治医と話し合ってみる価値があります。

主治医に聞いておきたい質問

  1. 「私の場合、固定が必要な理由は何ですか」
  2. 「どの方法で、スペーサーをどの方向から入れますか。それはなぜですか」
  3. 「後ろからの除圧はしますか。間接的除圧で足りますか」
  4. 「この方法の手術を、先生はこれまでにどれくらい行っていますか」
  5. 「ネジは、どのように入れますか(PPS、ナビゲーションなど)」

ほかの質問の例は 医師への質問リスト にあります。

よくある質問

Q. 小さな傷の方法のほうが、良い手術ですか? 傷が小さく、筋肉への負担が少ないことは利点です。ただ、骨がつながるかどうかや、長い目で見た成績は、方法だけでは決まりません。骨の状態と、医師の経験に合った方法を選びます。

Q. 横や前から入れる手術でも、背中に傷ができますか? 多くの場合、背中からネジを入れるため、背中にも小さな傷ができます。

Q. ネジは一生入ったままですか? 多くの場合、入れたままにします。骨がつながったあとに困ることがなければ、取り出す必要はありません。

Q. 固定した上下の骨に、負担がかかると聞きました。 固定した部分の上や下の椎間に、年月とともに負担がかかることがあります。くわしくは 隣接椎間障害 をご覧ください。


※ このページは一般的な情報の提供を目的としています。どの方法が合うかは一人ひとり異なりますので、実際の判断は主治医にご相談ください。


次に読むページ


主な参考文献

  1. 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会(監修)『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)』南江堂, 2021.
  2. Said E, et al. "Posterolateral Fusion Versus Posterior Lumbar Interbody Fusion: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials." Global Spine J. 2022. PMID 33977761.
  3. de Kunder SL, et al. "Transforaminal lumbar interbody fusion (TLIF) versus posterior lumbar interbody fusion (PLIF) in lumbar spondylolisthesis: a systematic review and meta-analysis." Spine J. 2017. PMID 28647584.
  4. Hijji FY, et al. "Lateral lumbar interbody fusion: a systematic review of complication rates." Spine J. 2017. PMID 28456671.
  5. Abe K, et al. "Perioperative Complications in 155 Patients Who Underwent Oblique Lateral Interbody Fusion Surgery." Spine. 2017. PMID 27116114.
  6. Bateman DK, et al. "Anterior lumbar spine surgery: a systematic review and meta-analysis of associated complications." Spine J. 2015. PMID 25728552.
  7. Ahn Y, et al. "Learning curve for minimally invasive transforaminal lumbar interbody fusion: a systematic review." Eur Spine J. 2022. PMID 36178548.
  8. Sclafani JA, Kim CW. "Complications associated with the initial learning curve of minimally invasive spine surgery: a systematic review." Clin Orthop Relat Res. 2014. PMID 24510358.
  9. Perdomo-Pantoja A, et al. "Accuracy of Current Techniques for Placement of Pedicle Screws in the Spine: A Comprehensive Systematic Review and Meta-Analysis of 51,161 Screws." World Neurosurg. 2019. PMID 30880208.
  10. Eid S, et al. "3D-printed guides, navigation, and robotic assistance in spinal instrumentation: a network meta-analysis of pedicle screw accuracy and clinical outcomes." Spine J. 2026. PMID 42686030.
  11. Goldstein CL, et al. "Perioperative outcomes and adverse events of minimally invasive versus open posterior lumbar fusion: meta-analysis and systematic review." J Neurosurg Spine. 2016. PMID 26565767.
  12. Mobbs RJ, et al. "Lumbar interbody fusion: techniques, indications and comparison of interbody fusion options including PLIF, TLIF, MI-TLIF, OLIF/ATP, LLIF and ALIF." J Spine Surg. 2015. PMID 27683674.
  13. Ozgur BM, et al. "Extreme Lateral Interbody Fusion (XLIF): a novel surgical technique for anterior lumbar interbody fusion." Spine J. 2006. PMID 16825052.
  14. Silvestre C, et al. "Complications and Morbidities of Mini-open Anterior Retroperitoneal Lumbar Interbody Fusion: Oblique Lumbar Interbody Fusion in 179 Patients." Asian Spine J. 2012. PMID 22708012.
  15. Ishii K, et al. "The History and Development of the Percutaneous Pedicle Screw (PPS) System." Medicina (Kaunas). 2022. PMID 36013531.