狭窄症と介護保険・要介護認定
要介護認定の申請から結果まで、主治医意見書と認定調査、歩くのがつらい方に関係するサービスと費用、身体障害者手帳との違い、相談先。
申請の流れと、使えるサービス
「狭窄症で歩くのがつらくなってきた。親の介護保険を申請したいけれど、何から始めればいいの?」。申請の窓口はお住まいの市区町村で、地域包括支援センターでも相談できます。脊柱管狭窄症は、40〜64歳の方でも介護保険を使える病気の一つです。
このページでわかること
- 脊柱管狭窄症で介護保険を使えるのは、どんな方か(40〜64歳の方の「特定疾病」も)
- 要介護認定の申請から結果が届くまでの流れと、主治医意見書・認定調査
- 歩くのがつらい方に関係するサービス(リハビリ、福祉用具、住宅改修)と費用
- 身体障害者手帳との違いと、困ったときの相談先
1. 狭窄症で、介護保険は使えるのか
65歳以上の方
介護保険のサービスを使うには、市区町村の「要介護認定(要支援認定を含みます)」を受けます。
65歳以上の方(第1号被保険者)は、介護が必要になった原因を問いません。狭窄症で歩くのがつらくなった場合も、ほかの病気やけがが重なっている場合も、同じように申請できます。
40〜64歳の方と「特定疾病」
40〜64歳で医療保険に入っている方(第2号被保険者)は、介護が必要になった原因が、政令で決められた16の「特定疾病」のどれかであるときに限って、サービスを使えます。
その16の病気の9番目が、脊柱管狭窄症です。介護保険法施行令の正式な書き方は「脊柱管狭窄症」で、腰とも首とも書かれていません。厚生労働省の診断基準では、首・胸・腰のどこか1か所以上で脊柱管が狭くなっていて、画像で神経がはっきり押されており、その狭さと症状とのあいだに因果関係があるもの、とされています。
特定疾病に当たるかどうかは、主治医意見書の内容をもとに、市区町村の介護認定審査会が確かめます。
決め手は「どれくらい介護の手間がかかるか」
「狭窄症と診断されたから、要介護になる」わけではありません。要介護認定が判定するのは、病気の重さより、介護サービスがどれくらい必要かです。厚生労働省も「病気の重さと要介護度の高さとが必ずしも一致しない場合がある」と説明しています。
同じ狭窄症でも、少し休めば買い物に行ける方と、家の中を移動するのにも手すりが要る方とでは、結果が変わります。ですから、申請のときには病名よりも、毎日の暮らしで何に困っているかを伝えることが大切になります。
7つの区分と「非該当」
結果は、要支援1・2、要介護1〜5の7段階と、「非該当」のどれかで届きます。
| 区分 |
おおまかな位置づけ |
| 要支援1・2 |
日常生活に支援が必要で、介護予防のサービスが役立つ状態 |
| 要介護1〜5 |
日常生活の動作に介護が必要な状態。数字が大きいほど、介護の手間が大きい |
| 非該当 |
介護保険のサービスの対象にはならない。ただし、市区町村の事業を使える場合がある |
区分は、「要介護認定等基準時間」というものさしで分けられます。これは判定のための時間で、実際に家で介護にかかる時間や、受けられるサービスの時間とは別のものです。
2. 申請から認定までの流れ
全体の流れ
| 順番 |
すること |
だれが |
| 1 |
市区町村の窓口に申請する |
本人・家族、または地域包括支援センターなどが代わりに |
| 2 |
認定調査(自宅などへの訪問) |
市区町村の調査員 |
| 3 |
主治医意見書の作成 |
主治医(市区町村が依頼します) |
| 4 |
コンピュータによる一次判定 |
市区町村 |
| 5 |
介護認定審査会による二次判定 |
保健・医療・福祉の専門家 |
| 6 |
結果の通知 |
市区町村(原則として申請から30日以内) |
申請の窓口と持ち物
申請先は、お住まいの市区町村です。介護保険の被保険者証を持っていきます。40〜64歳の方は、医療保険の保険証が必要です。
本人が窓口に行けないときは、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者(ケアマネジャーのいる事業所)などが、手続きを代わりに行うことができます。ご家族が代わりに申請する場合の扱いや書類は、市区町村によって違いますので、窓口か地域包括支援センターに確かめてください。
認定調査
市区町村の調査員が自宅や入院先を訪ね、体の状態や、ふだんの生活の様子を聞き取ります。
狭窄症の症状は、日によって、時間によって変わります。調査の日にたまたま調子がよいと、いつもの困りごとが伝わらないことがあります。歩ける距離、休む回数、手すりが要る場所、転びそうになったことなどを、前もってメモにしておくと伝えやすくなります。ご家族が同席できると、本人が言い出しにくいことも補えます。

主治医意見書
主治医意見書は、市区町村が主治医に作成を依頼する書類です。本人が医師に頼みに行く必要はなく、申請した方が作成料を払うこともありません。申請書には、主治医の名前と医療機関を書く欄があります。主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受けます。
意見書は、新たに検査をしなくても、これまでの診療の記録をもとに書くことができます。診察室では、家の中での動きや、夜の様子まではなかなか見えません。申請を考えたら、次の受診のときに「介護保険を申請します」と主治医に伝え、困っていることを具体的に話しておいてください。

加藤からひとこと
私も意見書を書くときは、ご家族から家での様子をうかがうようにしています。
結果が届いたら
結果は原則として申請から30日以内に届きます。調査に時間がかかるなどの理由があるときは、延びることがあり、その場合は市区町村から通知があります。認定は、申請した日にさかのぼって効力をもちます。
認定には有効期間があります。初めての認定は原則6か月、更新は原則12か月で、状態に応じて市区町村が長さを決めます。期間が切れるとサービスが使えなくなるので、満了の前に更新の申請をします。
手術のあとで歩けるようになった、あるいは症状が進んだ、というように状態が変わったときは、有効期間の途中でも、区分の変更を申請できます。
3. 歩くのがつらい方に関係するサービスと費用
ケアプラン
サービスを使うには、どのサービスをどれだけ使うかの計画(ケアプラン)を作ります。要支援1・2の方は地域包括支援センターに、要介護1以上の方は居宅介護支援事業者のケアマネジャーに相談します。
リハビリと、通う・来てもらうサービス
| サービス |
内容 |
要支援の方 |
| 通所リハビリテーション(デイケア) |
施設に通って、心身の機能の維持・回復のためのリハビリを受ける |
使える |
| 訪問リハビリテーション |
理学療法士などが自宅に来て、リハビリを行う |
使える |
| 通所介護(デイサービス) |
施設に通って、食事や入浴などの支援や機能訓練を受ける |
使えない |
| 訪問介護(ホームヘルプ) |
ホームヘルパーが自宅に来て、入浴などの介護や、掃除・買い物などの生活の支援を行う |
市区町村の事業で行われる |
| 短期入所(ショートステイ) |
施設に短期間泊まって、日常生活の支援や機能訓練を受ける |
使える |
病院でのリハビリが終わったあとも、運動を続ける場として、デイケアや訪問リハビリを使うことができます。くわしくは 運動療法 のページにまとめています。
福祉用具:借りるものと、買うもの
福祉用具は、原則として借ります(貸与)。手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえは、要支援の方も借りられます。車いすや特殊寝台(介護用ベッド)などは、要支援1・2と要介護1の方は原則として対象外ですが、体の状態によっては対象になる場合があります。
入浴や排せつに使う、貸し借りになじまない用具は買います(特定福祉用具販売)。腰掛便座、入浴用のいすや浴槽用の手すりなどです。購入は同じ年度で10万円までが対象で、いったん全額を払い、あとから保険の分が払い戻されます。
2024年4月から、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、つえ(単点杖・多点杖。松葉づえを除く)は、借りるか買うかを選べるようになりました。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が、どちらがよいかを提案します。
住宅改修:工事の前に申請します
手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくい床への変更、引き戸への取り替え、洋式便器への取り替えなどの工事に、介護保険が使えます。

- 支給の限度は、ひとり生涯20万円です。この範囲なら、何回かに分けて使えます。転居したときや、要介護度が大きく重くなったときには、あらためて20万円の枠が設けられます
- 工事の前に、市区町村へ申請するのが原則です。 やむを得ない事情があるときは工事のあとに申請できる場合もありますが、まず事前に相談してください。ケアマネジャーなどが作る「住宅改修が必要な理由書」も要ります
- 窓口の名前、書類の様式、申請の期限は市区町村ごとに違います。たとえば東京都世田谷区は着工予定日の10日前(土日祝日を除く)までの申請を求めています。必ずお住まいの市区町村で確かめてください
入院中の扱いも市区町村のページで確かめてください。たとえば世田谷区は、入院中は住宅改修費を支給しないとしたうえで、退院後の家をあらかじめ直しておく必要があるときは、事前に区の承認を得て工事をし、退院後に申請するよう案内しています。手術を控えている方は、入院前に相談しておくと安心です。
費用:自己負担は1割から
サービスを使ったときの自己負担は、原則として費用の1割です。65歳以上で一定以上の所得がある方は、2割または3割になります。40〜64歳の方(第2号被保険者)は、法律上、所得にかかわらず1割です。
自宅で受けるサービスには、区分ごとに1か月に使える量の上限(支給限度額)があります。上限を超えた分は、全額が自己負担です。また、1か月の自己負担の合計が所得に応じた上限を超えたときは、申請すると、超えた分が「高額介護サービス費」として払い戻されます。
4. 身体障害者手帳との違いと、相談先
目的も仕組みも違う二つの制度
介護保険と身体障害者手帳は、目的も仕組みも違う制度です。
|
介護保険(要介護認定) |
身体障害者手帳(肢体不自由など) |
| 法律 |
介護保険法 |
身体障害者福祉法 |
| 判定するもの |
介護サービスがどれくらい必要か |
法律で定められた障害に当たるか(一定以上で、永続すること) |
| 医師の書類 |
主治医意見書(市区町村が依頼) |
都道府県知事などが定めた医師の診断書・意見書(本人が用意して申請) |
| 決めるところ |
市区町村(介護認定審査会) |
都道府県知事など(指定都市・中核市は市長) |
| 期間 |
有効期間があり、更新する |
障害が永続することが要件 |
手帳の対象になるかどうかは、障害が一定以上で、永続するかどうかの判断が要ります。主治医に相談してください。
両方に当てはまるとき
障害福祉のサービスと介護保険のサービスで同じような内容のものがあるときは、原則として介護保険が優先されます。ただし国の通知は、一律に介護保険を優先するのではなく、一人ひとりの状況に応じて判断するとしています。たとえば車いすや歩行器、つえは、体の状態に合わせた個別の対応が必要と判断された場合には、障害福祉の制度(補装具費)で支給されることもあります。
どちらを使うかは、市区町村の窓口で、状況を伝えて相談してください。
相談先は地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢の方とそのご家族のための総合相談の窓口で、市区町村が設けています。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどがいて、介護保険の申請の相談や、要支援の方のケアプラン作りも担当します。
「申請するほどなのか、わからない」という段階で相談してかまいません。非該当になった方でも、市区町村の事業で、生活機能を保つためのサービスを使える場合があります(このうち体操教室などの一般介護予防事業は65歳以上が対象です)。