脊髄刺激療法(SCS)

脊髄刺激療法の仕組み、適応、植込みまでの流れを解説します。

痛みを「治す」のではなく、「和らげる」新しい選択肢


このページでわかること

  • 脊髄刺激療法(SCS)とは何か
  • どんな人に向いているか
  • SCSの仕組み(なぜ痛みが和らぐのか)
  • デバイス(機械)について
  • 植込みまでの流れ(トライアルを含む)
  • 術後の生活
  • 期待できる効果と限界
  • 費用と保険

1. SCSとは(3分でわかるまとめ)

3分でわかるまとめ

まず、大事なところだけをやさしくまとめます。ここだけ読んでも、だいたいの流れがわかります。

脊髄刺激療法(SCS)は、背骨の中を通る脊髄にごく弱い電気の刺激を送り、つらい痛みを和らげる治療です。心臓のペースメーカーに似た小さな機械を体の中に埋め込み、そこから細い電線を通して刺激を送ります。かゆいところを掻くとかゆみがまぎれるのと似た理屈で、電気の刺激が、痛みの信号が脳に伝わるのをやわらげると考えられています。

SCSは、次のような場面で考えられます。

  • お薬や注射などをしっかり試しても痛みが残り、手術で取り除ける原因がはっきりしないとき
  • 手術はできるけれど、背骨を広く固定する必要があるなど、体への負担やリスクが大きいとき
  • 手術を受けたあとも、しびれや痛みが続いているとき

SCSは、手術をあきらめた人の最後の手段ではありません。状況によっては早めに考えてよい、第三の選択肢です。

埋め込んだ機器は、合わなければ取り出すことができ、体を元の状態に戻せます。どんな処置にもリスクはありますが、あとから選び直せる可逆的な治療です。希望があれば、植え込む前に試験刺激(トライアル)を行うこともできます。ただ、短い期間では効果を判断しにくい方が多いことと、感染のリスクを考えて、最近はリードと本体を一度に植え込むことが多くなっています。

SCSは、痛みを完全にゼロにする治療ではありません。目安としては痛みが半分ほどまで軽くなれば効果ありと考え、痛みがあってもやりたいことができる状態を目指します。また、しびれへの効果は痛みにくらべてやや劣ることがあります。一方で、SCSのあとにしびれが消えた方もいらっしゃいます。お薬の量を減らせたり、生活が楽になったりする方もいます。埋め込んだあとも、入浴や運動、お仕事など、多くの日常生活はこれまで通り続けられます。病院での刺激の調整はとても大切で、そのうえで、日々の痛みの波に合わせて手元のリモコンでご自身でも刺激を調整できます。

受けるのに適した時期は、痛みが続いて6ヶ月〜2年ほどのころが目安とされます。早すぎても遅すぎても効果が出にくいことがあるため、気になる方は早めにご相談ください。治療は健康保険が使え、高額療養費制度で自己負担額に上限を設けることもできます。SCSは専門的な治療のため、まずはかかりつけの先生に相談し、SCSを行っている施設を紹介してもらうところから始めるとよいでしょう。ご家族が診察に付き添い、聞きたいことを一緒に整理しておくのも心強いと思います。

ここまでが全体像です。もっと詳しく知りたい方は、このあとの説明をお読みください。


SCSとは

正式名称

SCSは Spinal Cord Stimulation(スパイナル・コード・スティミュレーション)の略で、日本語では「脊髄刺激療法」と呼ばれます。

一言でいうと

背骨の中の脊髄に弱い電気刺激を送って、痛みを和らげる治療法です。

心臓のペースメーカーに似た小さな機械を体に埋め込み、そこから細い電線(リード)を通じて脊髄に電気刺激を送ります。

SCSの位置づけ

SCSが検討される場面は、大きく3つあります。

① 手術対象が不明確な場合
  • 保存療法(薬・注射など)を十分試したが改善しない
  • 画像では狭窄があるが、それが症状の主な原因か不明確
  • 神経性の痛み・しびれが主体で、構造的な問題が少ない

手術で明確に治せない痛みに対して、SCSを検討します。

② 手術は可能だが、負担やリスクが過大な場合
  • 多椎間(2椎間以上)にわたる固定が必要
  • 高齢や合併症があり、大きな手術のリスクが高い
  • 固定術の長期的な問題(隣接椎間障害(りんせつついかんしょうがい)など)を避けたい

手術の代わりに、または手術と並行してSCSを提案します。固定する椎間の数が多いほど、SCSの優位性が高まります。

③ 手術後も痛みが残る場合
  • 手術で構造は改善したが、神経性の痛みが続く
  • 再手術の効果が期待しにくい、またはリスクが高い

手術後の痛みに対して、SCSを検討します。

いずれの場合も、最近はリードと本体を一度に植え込むことが多くなっています。希望があれば、その前に約1週間のトライアル(試験刺激)を行うこともできます。

SCSは手術のあきらめではありません。除圧で治る方には除圧を、1椎間の固定なら固定を勧めます。しかし、多椎間の固定が必要な場合や、手術リスクが高い場合には、SCSは手術に代わる有力な選択肢です。最後の手段ではなく、早い段階で検討してよい第三の選択肢です。


2. 向いている人と、効く仕組み

どんな人に向いているか

SCSの適応(3つのパターン)

上で挙げた3つの場面を、もう少し詳しく説明します。

① 手術対象が不明確な場合

以下のような場合に、手術に代わる選択肢として検討されます。

状況 詳細
保存療法が無効 6ヶ月以上、薬・注射・リハビリを試したが改善しない
手術対象が不明確 画像では狭窄があるが、それが症状の主原因か不明確
多椎間変性 複数の場所に変性があり、どこを手術すべきか判断困難
神経性の痛みが主体 痛み・しびれが主で、構造的な不安定性は少ない
慢性疼痛(6ヶ月以上) NRS 5/10以上の痛みが続いている
② 手術は可能だが、負担やリスクが過大な場合

手術で治せる病態があっても、手術の規模や患者さんの状態によっては、SCSが有力な選択肢になります。

状況 詳細
多椎間固定が必要 2椎間以上の固定が必要で、手術の負担が大きい
手術リスクが高い 高齢・合併症が多い・全身麻酔のリスクが高い
隣接椎間障害の懸念 長い固定は将来の隣接椎間障害リスクが高まる
可逆性を重視 大きな固定術は元に戻せないが、SCSは可逆的

手術前にSCSを検討するという考え方について:

従来、SCSは主に手術後の痛みに対する治療として用いられてきました。近年は、多椎間の固定が必要な場合や手術リスクが高い場合に、手術前にSCSを検討するという考え方があります。これは監修医師の臨床経験にもとづく考え方です。

ただし、この治療方針は医療機関や医師によって見解が異なる場合があります。ご自身の状態について、担当医と十分に相談してください。

③ 手術後も痛みが残る場合
状況 詳細
手術後疼痛 手術で構造は改善したが、神経性の痛みが続く
複数回手術歴 再手術の効果が期待しにくい
隣接椎間障害 手術した上下の椎間に新たな問題

手術とSCSの関係は「白か黒か」ではありません

手術で治せるなら手術、治せないならSCS、というほど単純ではありません。

実際には、どんな手術が必要かと患者さんの状態の両方を見て、治療を判断します。

病態に応じた治療の考え方
病態 推奨される治療 補足
除圧だけで改善が見込める 除圧術(じょあつじゅつ) 多少の不安定性があっても除圧を優先
1椎間の固定が必要 固定術 隣接椎間障害のリスクを説明した上で実施
2椎間の固定が必要 SCSを並行して提案 高齢や合併症がある場合は、SCS > 固定術
3椎間以上の固定が必要 SCSを優先 高度脊柱変形以外は、合併症リスクと可逆性を考慮

この表の考え方をまとめると、次のようになります。

  • SCSは最後の手段ではありません
  • 固定する椎間数が増えるほど、SCSは早めに検討してよい選択肢になります
  • 除圧で治る患者さんには除圧を、1椎間なら固定を勧めます。SCSは、多椎間固定の前に考える第三の選択肢です
手術リスクが高い方

手術対象が明確でも、以下のような場合はSCSが有力な選択肢になります。

  • 高齢で、全身麻酔・大きな手術のリスクが高い
  • 合併症が多い(糖尿病、心疾患、肺疾患など)
  • 抗凝固薬を中止できない
  • 複数回の手術歴があり、再手術のリスクが高い

このような場合、手術よりもリスクが低く可逆的なSCSを先に試すことで、安全に痛みの改善を図ることができます。

SCSが適さない場合

以下の場合は、SCSではなく手術が優先されます。

  • 除圧だけで改善が見込める(単一レベルの明確な圧迫 → まず除圧術)
  • 構造的な不安定性が進行している(すべりが悪化、固定が不可避)
  • 高度な脊柱変形がある(矯正手術が必要)

また、以下の場合はSCS自体が適さないことがあります。

  • 活動性の感染症がある
  • 出血傾向がある(血液サラサラの薬など)
  • 精神的な問題が主な原因の痛み
  • ペースメーカーなど、他の埋め込み機器がある場合(要相談)

判断のポイント

医師は、次の3つの視点で治療を判断します。

① この痛みの原因は、手術で治せるか? ② 治せるとして、どの程度の手術が必要か? ③ 患者さんはその手術に耐えられるか?

この3つの答えによって、勧める治療が変わります。

手術で治せる? 必要な手術の規模 患者さんの状態 → 推奨
✅ 除圧のみ — 除圧術
✅ 1椎間固定 手術に耐えられる 固定術
✅ 2椎間固定 良好 固定術(SCSも並行提案)
✅ 2椎間固定 高齢・合併症あり SCSを優先
✅ 3椎間以上 — SCSを優先
❌ — — SCSを検討

早すぎず、遅すぎないタイミング

SCSは、受ける時期によっても効果が変わります。

タイミング 状況 推奨
早すぎる 保存療法を3〜6ヶ月未満 まだ保存療法を続ける
ちょうど良い 6ヶ月〜2年程度の慢性痛 SCS検討の最適期
遅い 数年以上の難治性疼痛 効果が出にくい可能性

早めに検討したほうが、効果が出やすい傾向があります。痛みが長く続いている方も、まずは主治医にご相談ください。


SCSの仕組み(なぜ痛みが和らぐのか)

痛みの信号をブロックする

通常、痛みは神経を通って脳に届きます。

通常の痛み:痛みの信号 → 脊髄 → 脳 → 「痛い!」と感じる

SCSは、脊髄に電気刺激を与えることで、痛みの信号が脳に届くのを邪魔します。

SCSによる効果:痛みの信号 → 脊髄 ← 電気刺激 → 痛みの信号がブロックされ、痛みが和らぐ

たとえると…

かゆいところを掻くと、かゆみが和らぐのと似ています。掻く刺激が、かゆみの信号をブロックするからです。SCSも同じように、電気刺激が痛みの信号をブロックします。

現在の考え方

SCSが効く仕組みには、いくつかの説があります。

  1. ゲートコントロール理論:痛みの「門」を閉じる
  2. 神経伝達物質の調整:痛みを抑える物質を増やす
  3. 血流の改善:刺激部位の血流が良くなる

科学的にはまだ完全には解明されていませんが、多くの患者さんで効果が確認されています。


3. 機器・トライアル・植込み手術

デバイス(機械)について

構成

SCSのシステムは、主に2つの部品でできています。

部品 役割 埋め込み場所
刺激装置本体(ジェネレーター) 電池と電気を作る部分 お腹または臀部の皮下
電極(リード) 電気刺激を脊髄に届ける 脊髄の近く(背骨の中)

刺激装置本体から電線(リード)が伸び、脊髄の近くに留置された電極につながっています。

実際の大きさ

  • 刺激装置本体:名刺を半分に切ったくらいの大きさで、厚さは約1cm(充電のいらないタイプは、ひと回り大きくなります)
  • リード(電線):直径約1〜2mm

機器について

日本では複数の医療機器メーカーのSCS機器が国の承認を受け、保険適用で使用されています。それぞれの機器に特徴がありますが、どれが良いかは患者さんの状態や医師の判断によります。

本サイトでは、特定のメーカーや製品を推奨する立場を避けるため、メーカー名・製品名は記載していません。どの機器を使うか(そしてその理由)は、担当医に直接確認することをお勧めします。


トライアル(試験刺激)とは

植込む前の試験刺激

SCSでは、希望があれば、本格的に埋め込む前に効果を試すことができます。これをトライアル、または試験刺激と呼びます。ただ、短い期間では効果を判断しにくい方が多いことと、感染のリスクを考えて、最近はリードと本体を一度に植え込むことが多くなっています。

トライアルには2つの方法があります

トライアルにはパンクチャトライアル(穿刺法)とサージカルトライアル(切開法)の2種類があり、施設や医師によって使い分けられます。

パンクチャトライアル(穿刺法)

皮膚を切開せず、針で直接皮膚を刺してリード(電極)を挿入する方法です。リードそのものが皮膚から直接出ている状態で試験刺激を行います。

サージカルトライアル(切開法)

皮膚を約4cm切開し、リードを挿入・固定した上で、体内のポケットに収納します。リード本体は体内にあり、延長ケーブルだけが別の場所から皮膚を貫通して出てきます。最初から本植込みまで見据えた手術です。

2つの方法の比較
パンクチャトライアル(穿刺法) サージカルトライアル(切開法)
皮膚切開 なし(針穿刺のみ) 約4cm
手術の負担 軽い やや大きい(約1週間の傷の痛み)
入院 外来で行うことが多い 入院で行うことが多い(約1週間)
本植込みへの移行 リードを抜去し、改めて新しいリードを植込み直す 同じリードをそのまま使用できる
刺激の再現性 全く同じ位置にリードを入れ直すことができず、試験時と同じ刺激感が再現できない可能性がある 同じリードを使うため、試験刺激と同じ刺激感を再現できる

トライアルを行う場合、本サイト監修医師はサージカルトライアルを採用しています。 サージカルトライアルは手術の負担がやや大きくなりますが、トライアルで効果があった場合に同じリードをそのまま使えるので、試験刺激の効果をそのまま本植込みに引き継げます。

どちらの方法で行うかは、施設や医師によって異なります。ご自身の施設でどちらの方法を採用しているか、担当医にお尋ねください。

トライアルの流れ

ステップ 内容
① 麻酔下で細いリードを背中から脊髄の近くに挿入
② リード(または延長ケーブル)を体の外に出し、体外の仮の刺激装置に接続
③ 約1週間、効果を確認(穿刺法では外来、切開法では入院で行うことが多い)。刺激の調整は医療チームと相談しながら行う
④ 結果を評価

④の結果によって、次のように進みます。

  • 効果あり(痛みが50%以上軽減)→ 本植込みへ
  • 効果なし → リードを抜いて終了(体への影響はほとんどありません)

トライアルの利点と注意点

項目 説明
効き方の目安 本植込みの前に、刺激の感じ方や効き方の目安がわかる
日常生活で試せる 実際の生活環境で確かめられる
判断の難しさ 短い期間では、効果を判断しにくい方が多い
感染などのリスク 試験刺激にも感染などのリスクがある。手術の回数も増える

本植込み手術の流れ

トライアルで効果があった場合

最近は、トライアルを行わずに、リードと本体を一度の手術で植え込むことが多くなっています。トライアルを行った場合は、効果が確認できたら本植込み手術を行います。

サージカルトライアルの場合は、トライアル時に植込んだリードをそのまま使い、刺激装置本体(ジェネレーター)を追加で埋め込みます。パンクチャトライアルの場合は、トライアルのリードを抜去した後、改めて新しいリードと刺激装置本体を植込みます。

ステップ 内容
① 手術室で麻酔
② 恒久的なリードを背中から挿入(サージカルトライアルの場合は既存リードを使用)
③ 刺激装置本体を腰部、臀部、またはお腹の皮下に埋め込む
④ リードと本体を接続
⑤ 動作確認
⑥ 手術終了(切開法で同じリードを使う場合は約30分。新たにリードから植込む場合は約1〜2時間)

麻酔について

SCSの手術では、以下の麻酔方法が使われます。

麻酔方法 特徴
局所麻酔 意識がある状態で行う。術中に刺激の位置確認ができる
局所麻酔+鎮静 軽い鎮静剤を併用し、リラックスした状態で行う
全身麻酔 完全に眠った状態で行う

どの麻酔方法を使うかは、施設や医師の方針によって異なります。麻酔について気になる方は、担当医にお尋ねください。

入院期間

  • トライアルを行う場合:約1週間(方法による)
  • 本植込み:5〜7日程度(施設により異なる)

手術のリスク

どんな手術にもリスクがあります。SCSでは、以下のような合併症が報告されています。起こる頻度は、施設や機器、患者さんの状態によって異なります。詳しくは主治医にご確認ください。

リスク 説明
リードの位置ズレ 刺激の場所が変わる → 再手術で調整
リードの断線 刺激が消失する → リード交換
感染 抗生物質治療、場合により機器の除去
不快な刺激 設定調整で対応
電池の早期消耗 本体交換(小手術)
機器不良 機器交換
髄液漏 安静で回復することが多い

また、長期的には以下のようなことが起こりえます。

リスク 対処
効果の減弱 刺激設定の調整、刺激モードの変更
電池の寿命 機器の種類や、刺激の流し方・強さなどで変わる。非充電式は刺激の設定などで大きく変わり、数年で本体交換(小手術)になることが多い

これらの合併症が起きないよう十分注意して手術を行いますが、100%の安全を保証できる手術はありません。合併症のリスクと、痛みを和らげるメリットを比べて判断してください。

術後の安静

リードの位置がずれないよう、術後は腰を大きく動かさないよう、できるだけ安静にしていただきます。安静期間は施設により異なりますが、数日〜1週間程度です。


4. 術後の生活・効果・費用

術後の生活

日常生活への影響

SCSを埋め込んだ後も、多くの日常生活は問題なく行えます。

活動 可否 注意点
入浴・シャワー ✅ 可能 傷が治ってから
運動 ✅ 多くは可能 激しい接触スポーツは要相談
仕事 ✅ 多くは可能 重労働は要相談
車の運転 △ 要相談 メーカーや医師は、運転中は刺激を切るよう指導しています。運転への影響と、刺激を切るかどうかは、最終的にはご本人の判断です
飛行機 ✅ 可能 下記参照
MRI検査 △ 条件付き 機種による、要確認

空港のセキュリティ

金属探知機に反応することがあります。

  • 患者カードを携帯してください
  • 係員に埋め込み機器があることを伝えてください
  • 詳細な検査が必要な場合があります

MRI検査について

以前のSCSはMRI検査ができませんでしたが、現在の機器には、条件つきで「MRI対応」のものがあります。

ただし、すべてのMRI検査が可能というわけではなく、条件があります。

機種 MRI対応
旧型 ❌ MRI不可
現在の機種 ✅ 条件付きで全身MRI可能

MRI検査が必要になった場合は、SCSを埋め込んだ病院に相談してください。

刺激の調整

刺激の強さやプログラムは、病院で医療チームが患者さんと相談しながら調整します。病院での調整はとても大切で、そのうえで、日々の痛みの波に合わせて手元のリモコンでご自身でも刺激を調整できます。

  • 手元の小さなリモコンで、刺激のオン・オフや強さの調整ができます
  • 痛みの変化や生活の状況は、外来で医療チームにお伝えください

調整を重ねながら、その方に合った刺激に整えていきます。


期待できる効果と限界

効果の目安

SCSは、痛みを完全になくす治療ではありません。

一般的に、痛みが50%以上軽減すれば「有効」と判断されます。

効果の目安:痛みが「10」だった場合、SCSで「5」以下になれば効果ありです。完全に「0」になることは稀です。

研究データ

多くの研究で、以下のような結果が報告されています。

  • 痛みが和らぐ方が多い一方、十分な効果が得られない方もいる
  • 長期的にも効果が持続することが多い
  • 薬の量を減らせることがある
  • 生活の質(QOL)が改善する

SCSでできること・できないこと

できること できないこと
痛みを和らげる 痛みを完全になくす
日常生活を楽にする 病気の原因を治す
薬を減らせる可能性 狭窄や変形を治す
活動量を増やせる可能性 すべての人に効く保証

心構え

SCSは「治す」治療ではなく、痛みと上手に付き合うための治療です。

痛みがゼロになることを期待するのではなく、痛みがあってもやりたいことができる状態を目指します。


費用と保険

保険適用

SCSは日本の健康保険の適用を受けており、通常の保険診療として受けることができます。

費用の目安

保険適用後の自己負担は、以下のような金額が目安です。

項目 3割負担の場合
トライアル 約10〜15万円
本植込み 約30〜50万円
合計 約40〜65万円

※金額は概算であり、施設や状況により異なります。

高額療養費制度

高額療養費制度を利用すると、ひと月の自己負担額に上限が設けられます。

上限は年齢と所得区分で決まります(例:70歳未満・年収約370〜770万円の方は 85,800円+医療費の1%、70歳以上・一般所得の方は入院を含む月 61,500円。2026年8月からの金額)。トライアルと本植込みが別の月にまたがると上限が2回分になることがある点や、入院前に準備しておく「限度額適用認定証」については、治療費と高額療養費の記事で詳しく説明しています。

詳しくは、病院の医療相談室や、お住まいの市区町村にお問い合わせください。


SCSを受けられる施設

SCSは専門的な治療で、どの病院でも受けられるわけではありません。

以下のような施設で行われています。

  • 大学病院の脳神経外科・整形外科・ペインクリニック
  • 脊椎専門病院
  • 疼痛治療専門施設

お近くの施設については、かかりつけ医にご相談ください。施設リストは現在準備中です。


5. よくある質問・まとめ・参考文献

よくある質問

Q. 電気刺激は痛くないですか?

A. 通常は痛くありません。多くの方は「ジーン」「ピリピリ」という軽い感覚として感じます。刺激をほとんど感じない方式もあります。

Q. お風呂に入れますか?

A. はい、傷が治れば普通に入浴できます。

Q. 機械は一生持ちますか?

A. 電池には寿命があります。充電式のもちは、機器の種類や、刺激の流し方・強さなどで変わります。非充電式は、刺激の流し方・強さによって電池のもつ期間が大きく変わり、数年で交換が必要になることが多いです。交換は比較的小さな手術です。

Q. 効果がなくなったらどうなりますか?

A. まず設定の調整を試みます。それでも効果がない場合、リードの交換や、機械の除去を検討することがあります。除去しても体に大きな影響はありません。

Q. 携帯電話やパソコンは使えますか?

A. はい、問題なく使えます。


まとめ

ポイント 内容
SCSとは 脊髄に電気刺激を送り、痛みを和らげる治療
① 手術対象が不明確 保存療法無効・画像と症状の不一致・神経性の痛みが主体
② 大きな固定術が必要 多椎間固定が必要・手術リスクが高い → SCSが有力な選択肢
③ 手術後の痛み 手術後も神経性の痛みが残る方
植込みの進め方 リードと本体を一度に植え込むことが多い。希望があればトライアル(試験刺激)も行える
可逆性 元に戻せる・将来の選択肢を保持できる
効果 効果には個人差がある。痛みを「なくす」のではなく「和らげる」。目標は痛みが半分くらいになること
タイミング 6ヶ月〜2年の慢性痛期が最適
保険 健康保険適用。高額療養費制度も利用可能

医師への質問(基本編)

質問は失礼ではありません。

先生に任せたほうがいい、と思うかもしれません。でも、痛みの場所、強さ、いつつらいかは、あなたが伝えないと医師にはわかりません。質問することで、治療をあなたに合わせやすくなります。

診察の際に、このような質問をしてみましょう。

  1. 「私はSCSの適応対象ですか?」

    • 自分がSCSの候補かどうか確認できます
  2. 「トライアルを行いますか、それとも一度に植え込みますか?」

    • 進め方とその理由、治療のタイムラインを確認できます
  3. 「どのメーカーのデバイスを使用しますか? その理由は?」

    • 使用予定のデバイスと選択理由を確認できます
  4. 「この病院でのSCS成功率はどのくらいですか?」

    • 施設の実績を確認できます
  5. 「トライアルで効果がなかった場合、他の選択肢はありますか?」

    • バックアッププランを確認できます
  6. 「SCS後、MRI検査が必要になった場合はどうなりますか?」

    • MRI対応機種かどうか確認できます
  7. 「トライアルはパンクチャ(穿刺法)ですか、サージカル(切開法)ですか?」

    • 施設によってトライアルの方法が異なります。それぞれのメリット・デメリットを確認できます
  8. 「麻酔はどの方法で行いますか?」

    • 局所麻酔・鎮静・全身麻酔など、施設によって方針が異なります
  9. 「術後のフォローアップはどのようなスケジュールですか?」

    • 継続的なケア体制を理解できます

さらに詳しく:

医師への質問リスト(SCS編・詳細版)に、より詳しい質問例(20問以上)があります。


次のステップ

SCSに興味がある方は:

  1. まずはかかりつけ医に相談
  2. SCSを行っている施設への紹介を依頼
  3. 専門医の診察を受ける
  4. SCSの適応と、進め方(一度に植え込むか、トライアルを行うか)を相談

施設リストは現在準備中です。まずはかかりつけ医にSCSについてご相談ください。


さらに詳しく知りたい方へ


監修医師より

脊髄刺激療法(SCS)は、日本ではまだあまり知られていない治療法ですが、世界では広く行われている確立された治療です。

「手術しても痛みが残った」「年齢的に手術は難しい」と言われた方でも、SCSで痛みが楽になり、生活の質が改善することがあります。

まず正しい情報を知り、自分に合った治療かどうかを専門医と一緒に考えてください。



SCS実施施設一覧:全国のSCS実施施設を地域別に検索できます


ご家族の方へ

このページをお読みいただき、ありがとうございます。 ご家族の痛みは、見ていてつらいものです。

ご家族にできることがあります。

  • 一緒に診察に行く。患者さんが言いにくいことを、代わりに伝えることができます
  • このページの情報を一緒に読む。治療の選択肢を一緒に理解できます
  • 「痛い」と言える環境をつくる。「我慢しなくていいよ」と声をかけてあげてください
  • 医師への質問を一緒に考える。上の質問リストを印刷して持参するのも良いでしょう

このページは医学的に正確な情報を提供していますが、個別の診断・治療については医師にご相談ください。

次に読む

→ SCS詳細ガイド:機器の種類、刺激モード、術後の生活を詳しく解説

→ 治療法の詳細比較:SCSと手術の費用・リスク・長期経過を比較

→ SCSと心の準備:治療前の心理的準備について

→ 日常生活の工夫:痛みとうまく付き合うための生活の知恵


参考文献

本ページの内容は、以下の文献およびガイドラインに基づいています。

SCSの基礎理論

  1. Melzack R, Wall PD. Pain mechanisms: a new theory. Science. 1965;150(3699):971-979. — ゲートコントロール理論の原著論文。SCSの理論的基盤。

有効性に関する主要な臨床研究

  1. Kumar K, Taylor RS, Jacques L, et al. Spinal cord stimulation versus conventional medical management for neuropathic pain: a multicentre randomised controlled trial in patients with failed back surgery syndrome (PROCESS trial). Pain. 2007;132(1-2):179-188. — 手術後の痛みを対象にした多施設ランダム化比較試験(代表的な研究)。SCSを加えた群で痛みが半分以下になった方の割合が、薬などの治療だけの群より多かった。対象は手術後に脚の痛みが残る方に限られ、機器メーカーの資金提供を受けた研究。

  2. Kumar K, Taylor RS, Jacques L, et al. The effects of spinal cord stimulation in neuropathic pain are sustained: a 24-month follow-up of the prospective randomized controlled multicenter trial of the effectiveness of spinal cord stimulation (PROCESS trial). Neurosurgery. 2008;63(4):762-770. — PROCESS試験の24ヶ月追跡データ。長期的な効果持続を確認。

  3. Kapural L, Yu C, Doust MW, et al. Novel 10-kHz high-frequency therapy (HF10 therapy) is superior to traditional low-frequency spinal cord stimulation for the treatment of chronic back and leg pain: the SENZA-RCT randomized controlled trial. Anesthesiology. 2015;123(4):851-860. — 刺激をほとんど感じない方式を検討したランダム化比較試験。機器メーカーの資金提供を受けた研究。

  4. North RB, Kidd DH, Farrokhi F, Piantadosi SA. Spinal cord stimulation versus repeated lumbosacral spine surgery for chronic pain: a randomized, controlled trial. Neurosurgery. 2005;56(1):98-107. — 再手術とSCSを比べた小規模なランダム化比較試験。

合併症・安全性

  1. Cameron T. Safety and efficacy of spinal cord stimulation for the treatment of chronic pain: a 20-year literature review. J Neurosurg (Spine). 2004;100(3 Suppl):254-267. — 2,700例以上の文献レビュー。「手術のリスク」の表に挙げた合併症の種類の参考文献。

タイミングと予後因子

  1. Kumar K, Hunter G, Demeria D. Spinal cord stimulation in treatment of chronic benign pain: challenges in treatment planning and present status, a 22-year experience. Neurosurgery. 2006;58(3):481-496. — 22年間の臨床経験に基づく長期成績。慢性痛の持続期間と効果の関連を報告。

日本における脊髄刺激療法

  1. 日本ペインクリニック学会編. 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版. 真興交易医書出版部; 2016. — 日本における神経障害性疼痛の治療指針。SCSの位置づけを記載。

  2. 平田仁, 牛田享宏ほか. ニューロモデュレーション — 脊髄刺激療法の基礎と臨床. 脊椎脊髄ジャーナル. 2019;32(10). — 日本における脊髄刺激療法の現状と展望。

腰部脊柱管狭窄症とSCS

  1. Zucco F, Ciampichini R, Lavano A, et al. Cost-effectiveness and cost-utility analysis of spinal cord stimulation in patients with failed back surgery syndrome: results from the PRECISE study. Neuromodulation. 2015;18(4):266-276. — SCSの費用対効果分析。医療経済的な妥当性を示した研究。

注意: 上記の文献は、本ページの医学的内容の根拠を示すためのものです。個別の治療判断には、担当医との相談が必要です。