手術のあとも、しびれが残るとき

狭窄症の手術のあとに残るしびれ。どのくらい残るのか、いつ変わるのか、残りやすいのはどんなときか、受診したほうがよい変化と、残ったしびれとのつき合い方を解説します。

狭窄症の手術で痛みは楽になったのに、足のしびれが残っている。めずらしいことではありません。手術の前に知っておいていただきたいことと、手術のあとにできることをまとめました。


大切なお願い: 手術のあとに残るしびれの多くは、それ自体が危険なものではありません。ただし、しびれが強くなる・広がる・足に力が入らなくなる・おしっこやお通じの出方が変わるといった「変化」があるときは、次の診察を待たずに、手術を受けた病院に連絡してください。


このページでわかること

  • 手術のあと、しびれが残る方はどのくらいいるのか
  • しびれは、いつ・どのくらい変わるのか
  • しびれが残りやすいのは、どんなときか
  • 「手術を待ちすぎない」ことについて
  • 受診したほうがよい変化
  • 残ったしびれと、上手につき合うために

1. 手術のあとのしびれ

しびれが残る方は、少なくありません

狭窄症の手術(神経の通り道を広げる手術)を受けると、多くの方で、歩くときの足の痛みが楽になり、休まずに歩ける距離が延びます。

一方で、しびれは、痛みよりも残りやすいことがわかっています。

日本で行われた研究をいくつか紹介します。

研究 わかったこと
手術を受けた77人を、手術後6か月まで調べた研究(2021年) しびれがすっかり消えた方は、およそ10人に4人。残りの方には、軽いものも含めて、何らかのしびれが残っていました
手術の前から足の裏にしびれがあった方を、平均5年近くたってから調べた研究(2005年) 足の裏のしびれが残っていた方は、およそ10人に8人
手術を受けた方を1年間、くり返し調べた研究(2017年) 1年たっても、しびれは痛みより強く残っていました。しびれは、痛みより改善の幅が小さかったと報告されています

しびれの程度は、人によってさまざまです。「ほとんど気にならない」という方もいれば、「足の裏に紙が一枚はさまっているよう」「正座のあとのような感じが続く」という方もいます。


しびれが残っても、歩く力は戻ることがあります

ここで、ひとつ安心していただきたいことがあります。

先ほどの、77人を調べた研究では、手術のあと6か月で、6分間に歩ける距離が大きく延びていました。しびれが残った方は、残らなかった方より少し短い傾向がありましたが、年齢や手術の種類などの条件をそろえて比べると、しびれが残っているかどうかは、歩ける距離と関係していませんでした。

歩く力に関係していたのは、年齢、手術の種類、もともとの神経の通り道の狭さ、そして手術前にどれだけ歩けていたかでした。

しびれが残っても、歩く力の回復を妨げるとは限りません。「歩ける」「出かけられる」という手術の大きな目的は、しびれが残っていても果たせることがあります。


しびれは、いつ・どのくらい変わるのか

手術を受けた方を1年間くり返し調べた日本の研究では、しびれの変化の多くは、平均すると、手術のあと最初の2週間ほどにあらわれました。その後は、1年後まで、ほぼ同じ程度で落ち着いていました。

加藤からひとこと 「しびれは、時間がたてば少しずつ消えていきますか?」とよく聞かれます。研究を見るかぎり、手術後しばらくして残っているしびれは、その後も大きくは変わらないことが多いようです。ですから私は、手術の前に「しびれは残るかもしれません」とお伝えしています。知ったうえで手術を受けるかどうかを決めていただきたいからです。


なぜ、しびれは残りやすいのか

狭窄症では、腰の神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が押されています。

  • 痛みは、神経が押されたり、血の流れが悪くなったりして起こる部分が大きく、押されているものが取れると、比較的早く楽になります
  • しびれは、長いあいだ押されていたことで、神経そのものが傷んでいることがあります

手術でできるのは、神経を押しているものを取り除くことです。傷んだ神経を、手術で直接なおすことはできません。そのため、しびれは痛みより残りやすいと考えられています。


首や背中の病気でも、同じです

足のしびれは、腰の神経だけでなく、首(頸椎)や背中(胸椎)で脊髄が押されて起こることもあります。

この場合も、押されていた期間が長いと、手術のあとにしびれが残ることがあります。


2. しびれが残りやすいのは、どんなときか

残りやすいとされているもの

研究や診療ガイドライン(2021年版)では、次のような場合に、手術のあともしびれが残りやすいとされています。

手術の前の状態 わかっていること
じっとしているときにもしびれがある 歩いたときだけでなく、座っている・寝ているときにもしびれがある方は、手術のあとも残りやすいとされています
足の裏のしびれ 足の裏のしびれを調べた研究では、手術の前からあった方の、およそ10人に8人で残っていました
糖尿病がある 糖尿病そのものが、足の神経を傷めることがあります。そのため、手術で腰の神経の圧迫が取れても、しびれが残りやすくなります
しびれや痛みが長く続いていた 症状が長く続いてから手術を受けた方では、しびれが残りやすい傾向が報告されています(次の項目をご覧ください)

これは「だから手術をしても意味がない」ということではありません。手術の前に、どのくらいしびれが残りそうか、主治医といっしょに見通しを立てておくためのものです。


手術を「待ちすぎない」ということ

狭窄症の治療は、まず、お薬やリハビリから始めるのが基本です。診療ガイドラインもそう勧めていますし、私もそう考えています。

一方で、同じガイドラインは、症状が重い方や、お薬やリハビリで効果が乏しい方について、漫然と同じ治療を続けることは避けるべきとも書いています。

症状が1年以上続いてから手術を受けた方では、しびれが残りやすかった、という日本の研究があります。足の裏のしびれを調べた研究でも、はっきりした差ではありませんが、しびれが1年未満のうちに手術を受けた方のほうが、残りにくい傾向がありました。

ただし、これらは「早く手術を受ければ、しびれが必ず残らない」ことを確かめた研究ではありません。症状が長く続いてから手術を受けた方でも、多くの方が手術でよくなっています。

加藤からひとこと お薬やリハビリを続けても十分によくならないとき、「もう少し我慢してみよう」と、何年も過ごしてしまう方がいます。我慢することにも、しびれが残りやすくなるという代償があるかもしれません。手術を受けるかどうかはご本人が決めることですが、一度、手術について話を聞いてみることをおすすめします。話を聞いたからといって、手術を受けなければならないわけではありません。

待たずに受診してほしいとき

次のような場合は、しびれの年数にかかわらず、手術を急ぐことがあります。

  • 足に力が入りにくくなってきた(つまずく、スリッパが脱げる)
  • おしっこが出にくい、もれる、お通じの感覚がわからない
  • お尻のまわりや股のあたりがしびれる

くわしくは 急いで受診すべきサイン をご覧ください。


3. こんな変化があれば、受診を

大切なのは「しびれがあるか」より「変わったか」

手術のあと、しばらくして落ち着いたしびれが、そのまま続いている。これは、よくあることです。それだけで心配する必要はありません。次の定期診察で、「しびれは変わらず残っています」と伝えてください。

注意していただきたいのは、しびれの「変化」です。

すぐに連絡(その日のうちに・夜間でも)

  • おしっこが出にくい、もれる、お通じの感覚がわからない
  • お尻のまわりや股のあたりが、新しくしびれてきた
  • 足に、急に力が入らなくなった

手術直後の数日間に起こる場合は、手術した場所に血のかたまりができて、神経を押していることがあります。すぐに手術を受けた病院へ連絡してください。

早めに受診(次の診察を待たずに)

  • しびれが、手術直後より強くなってきた
  • しびれの範囲が広がってきた
  • 傷が赤い、熱をもっている、汁が出る、熱がある

次の診察で相談

  • 手術でいったん楽になったのに、数か月〜数年たってから、また歩くと足がしびれる・痛くなるようになった

手術した場所がまた狭くなったり、となりの場所が狭くなったりすることがあります。我慢せず、次の診察で伝えてください。


4. 残ったしびれと、上手につき合うために

お薬

神経の痛みに使うお薬(プレガバリン(リリカ)、ミロガバリン(タリージェ)など)を試すことがあります。

ただ、正直にお伝えすると、手術のあとに残ったしびれに、これらのお薬がどのくらい役立つかを確かめた研究は、まだ十分に行われていません。もともと痛みのために作られたお薬で、診療ガイドラインでも、狭窄症に使うことについて、はっきりした推奨は出されていません。

また、眠気やふらつきが出やすいお薬です。しびれで足の感覚が鈍っているところにふらつきが重なると、転びやすくなります。使う場合は、少ない量から始めて、効き目と副作用を見ながら調整します。

試してみて、しびれが楽にならないときや、ふらつきが気になるときは、そう伝えてください。自分の判断で急にやめると、体調をくずすことがあります。お薬のくわしい話は リリカとタリージェ をご覧ください。


歩くこと・体を動かすこと

手術のあとのリハビリは、手術後しばらくのあいだの痛みや、日常生活の動作をよくすると報告されています。ただし、リハビリでしびれそのものが減るかを確かめた研究は、まだ十分に行われていません。

それでも、体を動かすことには意味があります。しびれが残っても、歩く力の回復を妨げるとは限らないからです。しびれを理由に家にこもると、足腰が弱り、かえって歩けなくなってしまいます。

これから手術を受ける方は、手術の前から、できる範囲で歩いておくことも大切です。手術前に歩けていた方ほど、手術のあとも歩けていた、という報告があります。

体操は 運動療法 に、歩き方のコツは 歩くこと にまとめています。


足を守る・転ばない工夫

足の裏のしびれがあると、地面の感覚がわかりにくくなります。

  • 転ばない工夫:夜は足元に明かりを。段差には手すりを。かかとのある、足に合った靴をはく
  • 足のけがに気づく:しびれていると、靴ずれや小さな傷に気づきにくくなります。お風呂のあとなどに、足の裏を目で見て確かめてください。糖尿病のある方は、とくに大切です
  • やけどに注意:湯たんぽや電気あんかで、気づかないうちに低温やけどをすることがあります。足に直接当てないでください

くわしくは しびれがあっても転ばない をご覧ください。


それでもつらいとき:脊髄刺激療法(SCS)

しびれや痛みが続いて生活に支障があるときは、脊髄刺激療法(SCS)という治療を検討することがあります。背中に細い電線を入れ、弱い電気で痛みの信号を和らげる治療です。

先にお伝えしておくべきことがあります。

  • SCSの研究の多くは「痛み」を調べたもので、しびれだけを調べた研究はまだ少ないのが現状です
  • 体の中に機器を入れる治療です。機器のトラブルや感染などのリスクがあります
  • 傷んだ神経をなおす治療ではありません。目指すのは、症状を和らげることです

そのうえで、私の経験をお伝えします。しびれへの効果は、痛みにくらべてやや劣ることがありますが、SCS後にしびれが消失した症例も経験しています。

くわしくは 脊髄刺激療法(SCS)としびれ をご覧ください。


5. まとめと、よくあるご質問

まとめ

  • 狭窄症の手術のあと、しびれが残ることはめずらしくありません。しびれは、痛みより残りやすい症状です
  • しびれの変化の多くは、手術後の早い時期にあらわれます。その後は、大きく変わらないことが多いと報告されています
  • しびれが残っても、歩く力の回復を妨げるとは限りません
  • じっとしていてもしびれる・足の裏のしびれ・糖尿病・症状が長く続いていた、といった場合は残りやすい傾向があります。手術の前に、主治医と見通しを話しておきましょう
  • お薬やリハビリでよくならないまま、何年も我慢し続けないでください。一度、手術について話を聞いてみることをおすすめします
  • 大切なのは「変化」です。強くなる・広がる・力が入らない・おしっこやお通じの変化は、早めに連絡を

よくあるご質問

Q. 手術を受けたのに、しびれが残っています。手術は失敗だったのでしょうか? そうとは限りません。手術で神経の圧迫を取り除けても、長いあいだ押されて傷んだ神経のしびれは、残ることがよくあります。痛みが楽になった、歩ける距離が延びた、という変化があれば、手術は目的を果たしています。気になるときは、手術を受けた病院で、手術前と比べてどうかを確かめてもらってください。

Q. しびれは、いつか消えますか? 人によります。研究では、しびれの変化の多くは手術後の早い時期にあらわれ、その後は大きく変わらないことが多いと報告されています。「消える」ことだけを目標にするより、しびれがあっても歩ける・出かけられる生活を目指すほうが、気持ちが楽になる方も多いです。

Q. もっと早く手術を受けていれば、しびれは残らなかったのでしょうか? それは、誰にもわかりません。症状が長く続いた方ほど残りやすい傾向はありますが、早く手術を受けた方でもしびれが残ることはあります。過去を責めるより、今からできること(歩くこと、足を守ること、変化に気づくこと)に目を向けてください。

Q. 手術をもう一度受ければ、しびれは取れますか? 同じ場所がまた狭くなっている、となりの場所が狭くなっている、といった原因が見つかれば、再手術を検討することがあります。ただ、神経そのものが傷んでいる場合は、もう一度手術をしても、しびれがよくなるとは限りません。まずは、手術を受けた病院で相談してください。


診察で伝えてほしいこと

  1. 「しびれは、手術直後と比べて変わらない/強くなった/広がった」
  2. 「しびれの場所は(足の裏・すね・お尻など)で、じっとしていてもしびれる/歩くとしびれる」
  3. 「つまずく、スリッパが脱げる、おしっこやお通じの変化がある/ない」

しびれの伝え方は、脊髄刺激療法(SCS)としびれ のチェックリストも参考になります。


※ このページは一般的な情報の提供を目的としています。手術のあとの経過は一人ひとり異なります。実際の判断は、手術を受けた病院の主治医にご相談ください。


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主な参考文献

  1. 竹中裕人, 神谷光広, 杉浦英志, ほか. 腰部脊柱管狭窄症術後の下肢しびれの残存は歩行能力に影響するか. 臨床整形外科. 2021;56(7):929-936. doi:10.11477/mf.1408202092
  2. 原田大朗, 松本守雄, 中村雅也, 千葉一裕, 戸山芳昭. 腰部脊柱管狭窄症手術例における足底部しびれの遺残. 東日本整形災害外科学会雑誌. 2005;17(1):65-68.
  3. Oba H, et al. "A prospective study of recovery from leg numbness following decompression surgery for lumbar spinal stenosis." J Orthop Sci. 2017;22(4):670-675. PMID 28456353.
  4. Hara N, et al. "Predictors of residual symptoms in lower extremities after decompression surgery on lumbar spinal stenosis." Eur Spine J. 2010;19(11):1849-1854. PMID 20309711.
  5. Ogura Y, et al. Clin Neurol Neurosurg. 2020;196:105952. PMID 32535396.
  6. 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会(監修)『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)』南江堂, 2021.(BQ7・BQ8・CQ1・CQ8・CQ15)