腰の手術を受けたのに、腰が痛い 腰の手術を受けたのに、腰の痛みが続いている。いったん楽になったのに、また痛くなってきた。「もう一度手術するしかないのか」と迷っている方へ。次に何を確かめ、どんな選択肢があるのかを、順番にお話しします。
腰の手術を受けたのに、腰の痛みが続いている。いったん楽になったのに、また痛くなってきた。「もう一度手術するしかないのか」と迷っている方へ。次に何を確かめ、どんな選択肢があるのかを、順番にお話しします。
大切なお願い:
手術のあとの痛みの多くは、急を要するものではありません。ただし、足に急に力が入らなくなった・おしっこやお通じの出方が変わった・お尻のまわりがしびれてきた・熱が出て傷が赤く腫れてきた ときは、次の診察を待たずに、手術を受けた病院へ連絡してください。
このページでわかること
手術のあとも続く痛みが、どう呼ばれ、なぜ起こるのか
最初に確かめること:直せる原因が残っていないか
腰の痛みに、もう一度の手術はあるのか
腰の痛みにも使われるようになった、脊髄刺激療法(SCS)
診察で伝えてほしいこと
手術のあとも続く痛みには名前があります 「手術は失敗だったのでしょうか」・なぜ手術のあとも痛むのか 最初の一歩:直せる原因が残っていないか もう一度よく調べます・腰の痛みでは、手術で直せる原因は多くありません・診察で伝えてほしいこと 腰の痛みに、もう一度の手術はあるのか 固定術を考えるのは限られた場合です・SCSと長い固定術の違い 腰の痛みにも使われるようになったSCS 以前は足の痛みが中心でした・試験刺激について・期待していただきたいこと まとめとよくあるご質問 次に読むページ・主な参考文献 1. 手術のあとも続く痛みには名前があります 「手術は失敗だったのでしょうか」
背骨の手術のあとも痛みが続く、あるいは新しく痛みが出てくる状態は、「脊椎手術後疼痛症候群」と呼ばれます。以前は「腰椎手術失敗症候群」と呼ばれていましたが、手術そのものの失敗とは限らないため、いまはこの名前が使われるようになりました。
名前があるということは、それだけ多くの方に起こる、ということでもあります。あなただけに起きている、めずらしいことではありません。
なぜ手術のあとも痛むのか
理由はひとつではありません。
手術した場所が、また狭くなった
手術のときは症状を出していなかった、となりの場所が悪くなってきた
固定した骨が、うまくつかなかった
骨を留めたネジがゆるんだ、折れた
長く続いた痛みで、神経そのものが痛みに敏感になっている
腰以外の原因(股関節など)が重なっている
前の四つは、画像で見つかることが多い原因です。後ろの二つは、画像には写りにくい原因です。どちらなのかで、次にすることが大きく変わります。
加藤からひとこと
足の痛みやしびれが中心の方は、手術したのに、また痛い・歩けない に、「残った」「戻ってきた」に分けた見かたをまとめています。このページは、腰の痛みが中心の方に向けて書いています。
2. 最初の一歩:直せる原因が残っていないか もう一度よく調べます
手術のあとの痛みで、私が最初にすることは、直せる原因が残っていないかを確かめることです。SCSは、手術で直せる原因の代わりにはなりません。
画像を撮り直し、手術の前や直後の画像と比べます。手術した場所はどうか。となりの場所はどうか。固定した骨はついているか。ネジはゆるんでいないか。前の手術を受けた病院で、昔の画像と並べて見てもらうのが近道です。
腰の痛みでは、手術で直せる原因は多くありません
足の痛みが戻ってきたときは、神経がもう一度押されていないかを探し、押しているものを取りのぞく手術(除圧)を考えることがあります。
加藤からひとこと
腰の痛みでは、画像は撮りますが、手術で直せる原因が見つかることは多くありません。多くの場合は、お薬を中心に治療を考えていきます。
お薬やリハビリを見直しても痛みが続くときは、脊髄刺激療法(SCS)が選択肢の一つになります。
診察で伝えてほしいこと
痛みは、手術のあとずっと続いているか、いったん楽になってから戻ってきたか
痛むのは腰か、足か、両方か。どちらが強いか
どんなときに痛むか(じっとしていても痛い、動き始めが痛い、長く立つと痛い)
いちばんよかったときと比べて、今どれくらい動けるか(歩ける時間、立っていられる時間)
3. 腰の痛みに、もう一度の手術はあるのか 固定術を考えるのは限られた場合です
加藤からひとこと
ここからは、私の考え方です。すべての専門医が同じ考えではありません。
私は、腰の痛みに対して固定術をすることは、ほとんどありません。痛みを出している場所を一つに決めるのが難しいからです。例外は、背骨の前後のバランスが大きく崩れていて、その並びを直す必要がある場合です(背骨のバランス )。
背骨の並びを直す手術は、固定する範囲が長くなります。手術の時間は長くなり、体への負担も、合併症の危険も増えます。二度目以降の手術は、一度目に比べて効果が出にくくなる傾向もあります。手術が大きくなるほど、SCSを早めに話題にする、というのが私の考え方です。
SCSと長い固定術の違い
SCS
長い範囲の固定術
入れる前に試せるか
試験刺激で試すことができる
試すことはできない
となりの骨への負担
背骨の動きは変わらない
固定した範囲のとなりに負担がかかる
合わなかったとき
機器を取り出すことができる
固定した骨は元に戻せない
ただし、SCSにもリスクがあります。体の中に機器を入れる治療ですから、感染や、電線(リード)がずれるといったトラブルが起こることがあります。また、神経を押しているものを取りのぞく治療ではありません。押されている場所があれば、そのまま残ります。
4. 腰の痛みにも使われるようになったSCS 以前は足の痛みが中心でした
SCSは、背中に細い電線を入れ、弱い電気で痛みの信号を和らげる治療です。以前は、手術のあとに残った足の痛み に使うことが中心で、腰の痛みには効きにくいと考えられていました。
刺激の方式が進歩し、腰の痛みに対しても効果が報告されるようになりました。手術のあとも続く腰の痛みは、いまでは現実的な対象の一つです。一方で、偽の刺激と比べた研究では、はっきりした差が出なかった報告もあり、すべての方に効くわけではありません。
試験刺激について
加藤からひとこと
足の痛みが中心の方には、最近は、電線と本体を一度に植え込むことが多くなりました。一方、腰の痛みだけの方には、植え込む前に試験刺激をおすすめしています。腰の痛みだけの方では、試しても効かない方がいて、そのときは本当に効かないからです。
期待していただきたいこと
SCSで目指すのは、痛みをゼロにすることではありません。
加藤からひとこと
私は、SCSを始める前に、「痛みを半分にすることを目指しましょう」とお話ししています。全部消えると思っていると、半分よくなってもがっかりされます。半分を目指して半分よくなれば、ご本人にとってそれは成功です。
痛みが続いた期間も大切です。手術のあと間もない時期は、まだ痛みが落ち着いていくことがあります。一方で、強い痛みが何年も続くと、神経が痛みに敏感になり、どんな治療でもよくなりにくくなります。手術のあと半年ほどたっても痛みが続くときは、早めに相談していただくのがよいと考えています。
5. まとめとよくあるご質問 まとめ
手術のあとも続く痛みは「脊椎手術後疼痛症候群」と呼ばれ、手術の失敗とは限りません
最初にすることは、直せる原因が残っていないかを、画像で確かめることです
腰の痛みでは、手術で直せる原因が見つかることは多くなく、多くはお薬を中心に治療します
腰の痛みに固定術を考えるのは、背骨の並びを大きく直す必要がある場合などに限られます。手術が大きくなるほど、SCSを並べて考える意味が大きくなります
SCSは腰の痛みにも使われるようになりましたが、すべての方に効くわけではなく、リスクもあります
目指すのは、痛みをゼロではなく、半分にすることです
よくあるご質問
Q. 手術をしたのに痛いのは、手術が下手だったからですか?
そうとは限りません。手術のあとに痛みが続く理由は、いくつもあります。前の手術を責めるより、今の痛みがどこから来ているのかを確かめることに目を向けてください。
Q. 手術をした病院に、SCSの相談をしてもいいのでしょうか?
もちろんです。手術をした医師は、あなたの背骨をいちばんよく知っています。SCSをしていない病院でも、紹介を受けることができます。相談しにくいときは、どこに相談すればいいの? も参考にしてください。
Q. SCSを入れたら、もう手術はできなくなりますか?
いいえ。SCSは背骨そのものを変えない治療です。合わなければ取り出すことができ、その後に手術を選ぶこともできます。
Q. 固定した金属があっても、SCSはできますか?
多くの場合、できます。電線を入れる場所は、固定した場所とは違うところにすることが多いからです。ただし、以前の手術で神経のまわりの骨を削っている(除圧している)場合は、電線を背骨の中で上へ進められないことがあります。そのときは、骨を少し削ったり、手術のあとにできた癒着をはがしたりしてから、電線を置く必要があります。くわしくは主治医にご確認ください。
※ このページは一般的な情報の提供を目的としています。手術のあとの経過や治療の選び方は、一人ひとり異なります。実際の判断は、主治医にご相談ください。
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主な参考文献
Christelis N, et al. "Persistent Spinal Pain Syndrome: A Proposal for Failed Back Surgery Syndrome and ICD-11." Pain Med. 2021;22(4):807-818. PMID 33779730.
North RB, et al. "Spinal cord stimulation versus repeated lumbosacral spine surgery for chronic pain: a randomized, controlled trial." Neurosurgery. 2005;56(1):98-106. PMID 15617591.
Kumar K, et al. "Spinal cord stimulation versus conventional medical management for neuropathic pain: a multicentre randomised controlled trial in patients with failed back surgery syndrome." Pain. 2007;132(1-2):179-188. PMID 17845835.
Rigoard P, et al. "Multicolumn spinal cord stimulation for predominant back pain in failed back surgery syndrome patients: a multicenter randomized controlled trial." Pain. 2019;160(6):1410-1420. PMID 30720582.
Hara S, et al. "Effect of Spinal Cord Burst Stimulation vs Placebo Stimulation on Disability in Patients With Chronic Radicular Pain After Lumbar Spine Surgery: A Randomized Clinical Trial." JAMA. 2022;328(15):1506-1514. PMID 36255427.
利益相反(COI)について
この記事の監修医は、脊髄刺激療法(SCS)を実施する脊椎外科医です。SCSの機器メーカー(Medtronic社、Boston Scientific社)とアドバイザリー関係があり、SCSの診療を行うことによる経済的な利益があります。また本サイトは、日本メドトロニック株式会社から疾患啓発のスポンサーシップ(バナー広告)を受けています。協賛企業が記事の内容を指示・承認することはなく、特定の製品名・機種名は掲載していません。治療の選択は、SCS以外の方法も含めて、主治医とご相談ください。
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