分離すべり症 — 子どものころの疲労骨折が、大人の脚の痛みになるまで

分離症は、ほとんどが子どものころの疲労骨折です。お子さんは早くMRIで見つけてスポーツを休み、コルセットで守る。大人はL5の神経が出口で挟まって脚が痛む。その仕組みと治療。

腰の五番目の骨の、後ろの細い部分が切れて、前の部分だけが前にずれている様子を、横から見た図

「MRIで、分離すべり症と言われた。若いころの骨折のあとだと言われたけれど、腰をけがした覚えはない」。外来で、とてもよく伺うお話です。分離症は、ほとんどが子どものころに、気づかれないまま始まります。このページでは、分離症と分離すべり症が、どのように起こり、なぜ大人になってから脚の痛みの原因になるのかをお話しします。スポーツをしているお子さんをお持ちの方に、ぜひ知っていただきたいことも、まとめました。

このページでわかること

  • 分離症は、背骨の後ろの細い部分に起こる疲労骨折
  • ほとんどが子どものころに始まり、気づかれないまま大人になる
  • お子さんの場合:早くMRIで見つけて、スポーツを休み、コルセットで守る
  • 大人の場合:骨がつながらないまま前にずれ、L5の神経が出口で挟まる
  • 大人の治療と、手術を考えるときに主治医に聞きたいこと

1. 分離症とは

背骨の後ろの、細い部分が切れる

背骨の後ろには、上と下の骨をつなぐ関節(椎間関節)があります。その関節と関節のあいだに、細くくびれた部分があります。医学的には「関節突起間部」と呼ばれるところです。ここにひびが入り、骨が切れてしまうのが、分離症(腰椎分離症)です。

正常な腰の五番目の骨と仙骨を、横から見た図

腰の五番目の骨の、後ろの細い部分に、赤い細いひびが入っている図

上の図が、ふつうの腰のいちばん下(五番目の骨と、その下の仙骨)です。下の図では、五番目の骨の後ろの細い部分に、ひびが入っています。

ケガではなく、疲労骨折

原因は、一度の強いケガではなく、同じ動きのくり返しで起こる疲労骨折です。とくに、腰を反らす、ひねる、という動きが、この細い部分に負担をかけます。

ほとんどが、腰の五番目の骨

分離症は、ほとんどが腰のいちばん下、五番目の骨(L5)に起こります。日本で大人を調べた研究では、およそ二十人に一人に見つかり、女性より男性に多いと報告されています。

腰の骨を上から見た図。背骨の後ろの関節の少し外側で、左右とも骨が切れている

上から見ると、背骨の後ろの関節の少し外側で、左右とも切れていることが多いのです。片側だけのこともあります。


2. 子どものころに始まり、気づかれない

スポーツをよくする子に多い

分離症は、ほとんどが、骨がまだ育っている子どものころに始まります。体操や野球、サッカー、バレーボールなど、腰を反らしたり、ひねったりするスポーツをよくする子に多いのが特徴です。腰痛のある思春期のスポーツ選手を調べると、その半分近くが分離症だったという報告もあります。

「ただの腰痛」として見過ごされやすい

ところが、痛みは数週間で引いてしまうことも多く、「ただの腰痛」として見過ごされがちです。始まったばかりのひびは、ふつうのレントゲンには写りにくいこともあります。

そのまま大人になり、ほかの理由で撮った検査で、はじめて見つかる方が、とても多いのです。分離症があっても、多くの方は症状なく過ごしています。


3. お子さんの場合:早く見つけて、骨をつなぐ

MRIで、早い段階を見つける

分離症は、早い段階で見つかれば、骨がまたつながる見込みがあります。

早い段階のひびを見つけるのに、いちばん役に立つのはMRIです。骨が切れる前の、骨の中のむくみが、MRIでは見えるからです。スポーツをしている子が、

  • 腰を反らすと痛い
  • 腰の痛みが二週間以上続く

というときは、レントゲンで異常がないと言われても、MRIについて整形外科で相談してみてください。

スポーツを休み、コルセットで守る

早い段階で見つかったら、治療は、スポーツをいったん休むことと、コルセットです。数か月、腰を反らしたりひねったりしないように守ることで、ひびが骨でつながることが期待できます。休むのはつらいことですが、ここがいちばん大切なところです。

骨がつながったあとに、また同じところを痛めることもあります。復帰の時期と、その後の注意は、主治医とよく相談してください。

時間がたつと、つながりにくくなる

腰の五番目の骨の後ろの細い部分に、はっきりしたすき間ができている図

一方、時間がたって、すき間がはっきりできてしまうと、骨はもうつながりにくくなります。この状態を、偽関節といいます。この段階では、骨をつなぐことよりも、痛みを和らげて、上手に付き合うことが治療の目標になります。

若い方で、骨をつなぐための手術(分離部の修復術)を考えることもあります。ただ、私の経験では、その結果は人によってさまざまです。


4. 大人の場合:ずれと、脚の痛み

骨がつながらないまま、前にずれる

骨がつながらないまま、大人になる方もたくさんいます。左右とも切れていると、背骨の前の部分と後ろの部分が、離ればなれになります。すると、前の部分だけが、少しずつ前にずれてくることがあります。これが、分離すべり症です。このページのいちばん上の図が、その状態です。

このずれは、主に骨が育つ時期に進みます。大人になってからは、大きく進むことは多くありません。年齢とともにクッションや関節がすり減って起こる「変性すべり症」とは、起こり方が違います(変性すべり症については すべり症の手術 のページにまとめています)。

L5の神経が、出口で挟まる

ずれた五番目の骨の下で、L5の神経が、軟骨と骨のかたまりとクッションのあいだに挟まれている図

大人になって症状が出るとき、いちばん多いのは、お尻から脚にかけての痛みやしびれです。すねの外側から足の甲にかけて、しびれる方がよくいらっしゃいます。

これは、五番目の骨の下から出ていく、L5という神経が、背骨の出口(椎間孔)のところで挟まれるためです。

  • 骨が切れたところは、長い年月のあいだに、動くたびにこすれて、そのまわりに軟骨と骨のかたまりができてきます。このかたまりが、神経の出口に後ろから張り出します
  • 骨が前にずれると、骨と骨のあいだの**クッション(椎間板)**も、出口のほうへふくらんできます

こうして、出口が前と後ろから狭くなるのです。もちろん、腰そのものの痛みもよく起こります。脚の痛みと腰の痛み、その両方に悩まれている方が多いのです。しびれの種類については しびれの種類 のページもご覧ください。


5. 大人の治療と、主治医に聞きたいこと

まずは、手術以外の方法から

治療は、まず手術をしない方法から始めます。痛み止めや神経の痛みのお薬(薬物療法)、リハビリ、神経のそばに薬を入れる ブロック注射 などです。これで、日常生活に困らない程度に落ち着く方もたくさんいます。

手術を考えるとき

それでも、脚の痛みで歩けない、生活に困るという場合には、手術を考えます。

手術には、神経を挟んでいるかたまりを取るだけの方法もあります。ただ、骨が切れて、もともと支えが弱いところですので、取ったあとにずれが進むことがあります。

私の考えでは、大人の分離すべり症で、脚の痛みと腰の痛みの両方を確実に取りたいときは、ずれた骨を整えて固定する手術が、いちばん確かな方法です。神経の出口を広げると同時に、ぐらつく元も止められるからです。固定術そのものについては 固定術 と 固定術の種類 のページにまとめています。

ただ、どこまでを手術でするかは、年齢や骨の状態、そして医師の考え方によっても違います。

主治医に聞いておきたいこと

手術をすすめられたら、次のことを主治医に聞いてみてください。

  1. 「私の脚の痛みは、どこで、何が、神経を挟んでいるのですか」
  2. 「かたまりを取るだけにしない理由、あるいは、固定する理由は何ですか」

ほかの質問の例は 医師への質問リスト にあります。

よくある質問

Q. 分離症があると言われました。必ず手術が必要ですか? いいえ。分離症やずれがあっても、症状なく過ごしている方はたくさんいます。手術を考えるのは、脚や腰の痛みで生活に困り、手術以外の方法で十分に良くならないときです。

Q. 大人になってから、ずれがどんどん進むことはありますか? ずれは主に骨が育つ時期に進み、大人になってから大きく進むことは多くありません。ただ、かたまりを取るだけの手術のあとには、ずれが進むことがあります。

Q. 子どもが腰の痛みを訴えています。様子を見てもいいですか? スポーツをしていて、腰を反らすと痛い、痛みが二週間以上続く、というときは、早めに整形外科で相談してください。早い段階なら、骨がつながる見込みがあります。


※ このページは一般的な情報の提供を目的としています。実際の診断と治療は、画像と症状を見たうえで一人ひとり異なりますので、主治医にご相談ください。


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